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真の勇者の下で働く編5

 その後、トウドウは勇者デューク・フリーに命じられ、他の地方へ救援に向かった。しばらくして、勇者デュークの軍がやって来た。魔界の奥地に侵入して大きな勝利を得たが、魔王を倒すには到らなかった。彼の歓迎の宴は盛大に執り行われた。そこには、トウドウの姿はなかったが、ジャンヌ王女は初めて対面するデューク・フリードに真の勇者を感じて、トウドウのことなど忘れてしまった。彼は、単なる勇者の部下の一人なのだと。そして、父国王と兄王太子は、国軍の主力を率い、デューク・フリードの要請により、魔王軍の主力との戦いの軍に加わるため、国を出た。ジャンヌ王女は、その留守がまかされた。多分、この方面での魔王軍の大々的な攻勢がないと思われたためである。しかし、魔王軍は、約1万の大軍で現れた。集められるだけの兵力で、城塞に立て篭り、魔王軍を迎え撃った。堅固な城塞のはずだった。が、何故か瞬く間に魔族の兵が城内になだれ込んできた。本丸にも魔族が突入してきた。ジャンヌ王女自ら、必死の白兵戦となった。彼女の近衛兵が彼女を守って次々倒れていく。

「姫様。お逃げ下さい。」

 この言葉に従わず彼女は、皆と戦った。“逃げだすことなど出来るか!”心の中でさけんだ。迫ってきた、牛頭の大柄の魔族に、渾身の火球をぶち込んだ。ふらついた隙に、王家の聖剣に全身の力を注ぎ込んで斬りつけると、その魔族はうめき声を立て、夥しい血を流して倒れた。しかし、今度は力の消耗で彼女に隙ができた。人間型の魔族の兵が二人、切り込んできた。何とか受け止めるので精一杯で、次第に追い詰められ、一人を倒したが、床に倒れてしまった。そこに残った魔族兵がとどめの一撃を加えようとした時、“最早これまでか”と思った時、逃げずにいた、彼女の侍女が、我が身を挺してかばって血を流し倒れた。“馬鹿!”と心の中で叫び、目の前の魔族の兵を一人倒し、倒れるまで戦おうと決意した時、目に見えて、魔族達が動揺し、逃げ腰になっているのがわかった。彼女は、侍女を抱き起こしながら、彼らを睨みつけた。彼らは、じりじりと後ずさりし始め、ついに逃げ出した。なにが起こったのか分からなかった。その時、

「ジャンヌ様!援軍が参りました。魔王軍は、蹴散らされ、撤退を開始しました!」

と伝令がきた。

「勇者か、勇者様の援軍か?父上、兄上が戻られたか?」

「トウドウ・シン・デーン殿とその軍です!」

 彼女には、助かったという実感はすぐにはもてなかった。魔族の兵が城内から逃げ出し、城の前の彼らの本陣も離れていくのを、城の窓から見てから、ようやく実感した。魔族の軍の本陣が見えなくなってから、トウドウ達は、ジャンヌ王女に拝謁した。

「遅くなり申し訳ありません。」

「また、あなたに我が国は救われました。勇者様は何時おいででしょうか?」

 それには、彼は答えられなかった。ジャンヌ王女からの勇者への救援要請の使者とたまたま出会い、急いで駆けつけてきたのである。比較的近くにいたのも、たまたまの偶然だった。しばらく魔族との戦いが続くだろうと思われたので、彼と彼の軍も加わるということとなり、心強いものを感じたが、報酬や経費の相談もすぐに開始することには、ジャンヌ王女は、彼に不快感を持った。もちろん、必要性は理解できたので、あえて反対はしなかったのだが。

 トウドウはラセット一人を連れて城内の廊下を歩いていた。この後、魔族の捕虜の中にラセットを支持する連中がいるかどうかみるためだった。侍女の一人とすれ違った。

「そこの女、待て。魔族の匂いがするぞ。」

 ラセットが振り向いて呼び止めた。侍女は、土下座した。

「申し訳ありません。職を得たいため、魔族の血が流れていることを隠しておりました。私には年老いて、病気の両親と。」

「純粋の魔族の匂いがぷんぷんしているぞ。」

 ラセットが、女の言葉を遮って、傲然と言い放った。女が顔を上げた。その時には、人間型ながら、長い鋭い爪と鋭い牙があった。襲いかかろうとしたのだろうが、ラセットの一撃で壁にめり込んでいた。周囲の兵に連れていかせた。

「全く、こんな所にまで。城内に瞬く間に侵入されたのは、こいつらが手引きしたのだろうな。」

 ラセットは、それに答えず、彼の腕を引っ張り、近くの小部屋に連れ込んだ。トウドウは、それに黙って従った。ドアの鍵を掛けると、直ぐに下半身の鎧と着衣を脱ぎ、壁に手をついて、下半身を彼の方に突きだした。彼は黙って、下を外し、下半身を露出させた。

「あの魔王に従う魔族など、皆殺しになればいいと思ってます、マスター。でも、身を守るために戦うことで、私は居場所が狭くしているように思えるの。」

 彼に下半身だけでなく、鎧の隙間から大ぶりの乳房をも弄られて、喘ぎ声を、だしながら彼女は訴えた。より大きい声を押し殺した後、二人は激しく動いた。二人の動きが止まってから、

「お兄様。私を捨てないで。」

「勿論だ。お前が去って行かない限り、お前と共にいる。」

 そう言って、後ろから強く抱きしめた。ラセットは、満足そうな表情でそのまま体をあずけていた。しばらく、その余韻に浸っていたが、そのうちトウドウから、やんわりと催促され少し不満そうに睨んだが、下半身の着衣と装備をつけた。既に、準備の終わっているトウドウに手を引かれ部屋を出た。直ぐに、メディアとイシスにであったが、二人は睨みつけたが何も言わなかった。ラセットは、優越感を見せながら、悪戯っぽく彼の後ろに隠れる真似をした。

「何時でも出撃出来るわ、準備は終わったけど、あの生真面目王女がごねているのよ。」

「こちらへの報酬の約束を、後回しにしようとしているのだが、そもそも報酬を要求されることに、嫌悪感があって交渉にならんのだ。」

「分かった、目に見えるようだな。私も加わって何とかしよう。」

と言って歩き始めると、二人は両脇に立ち、”後で“という視線を送ってきたので、彼はすかさず二人と口づけをして唾液を流し込んだ。

「今、分けてやったぞ。」

“これ以上も分かっている。”と、彼は視線で知らせた。


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