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中継ぎの勇者は聖女の王女様とは結ばれない  作者: 安藤昌益


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戦狂姫編 14

 少し話は遡る。

 お互いが不倶戴天の敵同士である勇者達が、協同して共通の敵に当たろうとしているのである。勇者だけでなく、彼らのバックとなっている王侯貴族都市の軍も同様である。

 誰がそれをまとめたのかが分からなかった。建前上は、デューク・フリードの婚約者であった、そして彼とともに死んだ3人の王女達の母国であるオセア王国、コンティナ王国、シェロ帝国の3大国が中心になっており、実際に呼びかけも行っている。国王、皇帝にとっては、愛娘の敵討ちを考えてもおかしくはない。しかし、本当はこの3大国も主導したわけではないらしいことが分かってきていた。それが誰なのか、ジャンヌも探らせていた。他の勇者達も、それが可能な人材、組織があるものは同様なことを大なり小なり行っていた。

「カルロス殿。ご苦労だった。お陰で、糸が繋がってきた。」

 シンデーンは、勇者カルロスに慰労の言葉をかけた。簡素な執務室の長椅子に腰をかけている逞しいが、やや人の良さそうな顔の若者は、少し安心したような表情を見せた。彼は勇者の一人である。そして、シンデーンに臣従した勇者の一人である。その中でも、彼を殺そうとして返り討ちになったものの、命は助けられたりことで臣従したのとは異なり、自らの意志で彼に臣従した勇者の一人だった。神々は、シンデーンの行動に怒った。しかし、全てがというわけではなかった。最初からイシスを支持していた神々もおり、次第に彼の行動はやむを得ないと考える神々も増えてきていた。それは、加護を与えた勇者に彼を倒させようとしていた神々にも、その考えに共鳴するものも現れた。勇者の意志もあり、ことは少し面倒だったが、彼のように自分を加護している神と相談して、彼との戦いを止めて、臣従するものが何人かいた。

「それで、どう繋がったの?」

 カルロスが退室すると、メディアは後ろから体を押しつけてきた。彼女が手配した情報網、推理、捜査、偽装情報流出などで、かなりあぶり出されてきた。ラセットを通じて入って来た情報も役にたった。魔族への接触は、どう秘密裏に行っても、魔族が出ない限り目立つ。もちろん、あるところで手がかりが消えるようにしてはあった、見事なほどに。そこから、メディアのそれで捉えることができた。“そこは言う必要はないか。”彼は振り返って、

「役に立っている。あと、もう一歩まで来ているよ。」

 メディアは満足そうに微笑んだ。彼女には珍しい、他意のない、あどけないくらい可愛らしいものだった。“こういうこいつもいいものだな。”と思った。直ぐに、微笑みが変わった。

「初めから、あなたと覇道を目指していたら、どうなっていたのかしらね。あなたとともにね。あなたと私だけで。」

 少し夢見がちではあるが、野心家の顔があった。彼女のいつもの顔だった。本当に美しいな、と思った。しかし、絶対あり得なかったことだ。

「それもよかったかもしれないな、近衛隊長として、後ろに控えるのではなく、並んでというのは。」

「馬鹿!」

 彼女の声は、甘えるような口調になっていた。どちらともなく、唇を重ねた。長い口づけが終わると、

「今。2人だけの時間を。」

 自ら、下を下ろして、彼の下も巧みに下ろした。準備はどちらも十分だった。彼女を少し持ち上げて、それから少し落とした。彼女の口から喘ぎ声が上がった。彼の首の後ろにまわした彼女の腕が、強く巻き付かれた。彼の手は彼女の尻を握るようにして、彼女を支えた。2人は激しく動き、彼女は喘ぎ声を上げまくった。2人の動きが一団と激しくなって、そして止まった後、つま先が、床につくかつかない状態でぐったりしながらも、彼の首にまわした腕は何とか外さなかった。恍惚感を浮かべながら、

「あなたは、絶対、私のそばにいるのよ!」

 弱々しく口にした。

「ああ、お前が離れない限りな。」

 強く抱きしめながら答えた。

 彼女が、下をはいて何とか一人で立てるようになった時、それを待っていたかのように、イシスが入って来た。メディアを軽く睨みながら、彼のところに歩み寄った。

「見つけたぞ。」

「何をだ?」

「鬼神の痕跡だ。」

 鬼神。悪とも善とも言いがたいが、恐れを抱かせる精霊のような存在であるが、精霊より人間的であり、人間に使役されることもある。神ではないが、人間でも魔族でもそれ以外でもない存在ではないことから、鬼神と言われているものである。

「飛んでいった方向も捉えたし、戻った場所も大体把握できたぞ。こちらを探るようにしていたし、前にも感じた奴だし、あちらの場所にも飛び立ったのも感じた奴だ。多分、こいつは使われている。使っている奴が黒幕だ。」

 胸をはるように言った。偉そうな態度は相変わらずだったが、そこもいいな、と彼は思った。

「本当に、あと一歩だな。」

 彼が満足そうに頷くと、睨みつけるメディアを無視して、彼の耳元顔を寄せて、

「全く節操のない奴だ、全く。場所も、時間も、わきまえず、全く。」

 そう言いながら、下半身をもじもじさせていた。

 その後、ほぼ場所が特定できた時、

「昔な、鬼神を使う奴を何人か感じたが、強く感じた奴がいてな…。」

 ディーテが呟いた。全てが繋がった。

 勇者達とその背後の諸国が連合した軍が動き始めたのは、それから数ヶ月後のことだった。流石に、まとまって、これだけの軍をまとめ、調整するには時間がかかったらしい。魔族の軍も攻撃してきた。呼応するタイミングではずれていたが、こちらの力がそがれれば、それでいいのだろう。

「勝つよね。」

 大きく体を動かし、硬直したように両足、両腕を伸ばして、何とか震える体を支えるラセットを後ろから、ゆっくりと優しく抱きしめながら、

「完全ではないが、準備はできた。とにかく、私とともに戦ってくれ。そして勝とう!」

 耳元で囁くと、

「うん。勝つ、一緒に。」

 叫ぶように、恍惚感に支配されながら、ラセットは、答えた。銃砲で半ばが倒れた魔軍の死体の山を見ながら。

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