戦狂姫編 13
「ジャンヌ王女様。勇者フリードリヒ様です。」
家臣の声を聞いて、ジャンヌ王女はフリードリヒの方を見た。逞しい、凛々しいといえる金髪の若者だった。20半ばといったところか、と彼女はみた。好男子で、なかなか品があり、知的な感じもし、実力があることも感じられた。そして、男らしい野心がひしひしと感じられる男だった。フリードリヒも、彼女を値踏みするように見てから、隣に連れたエルフの女とともに、礼儀正しく頭を下げ、
「お初にお目にかかります。勇者、フリードリヒと申します。今日は、ともに戦う同士として、挨拶に参りました。」
ジャンヌも、礼儀正しく頭を下げ、
「わざわざ、ご訪問いただき感謝いたします。あなたのような戦士と、戦友として戦えることを嬉しく思っています。」
「美しく、高潔な、聖女にして、聖騎士として名高いジャンヌ王女に、そのようなお言葉をいただけるとは、身に余る光栄です。」
その後、二言三言、儀礼的な言葉を交換して、彼らは来た道を帰っていった。背を向けた時、彼が連れていた、エルフとしては長身の女が、彼に、
「辺境の田舎王女!」
と聞こえよがしに言った声が耳に入った。耳に入ったのは、彼女だけではなく、家臣の何人かが剣の柄に手をかけていた。彼女は手を上げて制した。フリードリヒの仲間が、他にもいるのが分かっていたからでもあり、彼女の家臣からも彼への野次のような声もあったからだ。
元々、彼女としては、他の勇者と共闘を組むことは、あまり気が進まなかった。
今まで、2人の勇者を殺してきた。彼女にとっては偽勇者であるが。一人はチームを率いて、秘かに王宮に侵入して、彼女を襲撃しようとした。直前、何かを感じて目が覚め、喧騒を聴き、手元に置いた剣を取り、直ぐに寝着を脱ぎ、聖鎧を念じて呼んだ。乱入者達が、ドアを叩きわったら時、ギリギリで彼女は準備が間に合った。
「何者ですか?ここを、この方をどなただと」
別室に控えていた侍女が飛び出しても来て、ジャンヌを守るように彼らの前に両腕を広げて立ちはだかった。
「危ない!」
声を出す間もなく、彼女は血を噴き出して倒れた。
「あなた方は!」
怒りに我を忘れた。
「この偽物が。」
「醜女の王女が。」
女も何人かいた。相手の勇者も女だった。それは後でわかったことだが。男達もいた。剣を抜いた一人が、上段に構えて斬り込んできた。かなりの腕だった。が、剣ごと胴体を真っ二つにされて、絶命した。直ぐに、相手の勇者が斬り込んできた。その彼女を魔法と剣や槍の使い手達が援護した。部屋の中で、ベッドや椅子やテーブルなどを使って彼女は応戦した。そのままだったら、次第に押されていたはずだが、衛兵達が次々に駆け付けて来て、相手の勇者を援護する者がいなくなった。衛兵達の相手をするために。何合も斬り結んだ、地力の差が次第に出て、ジャンヌが圧倒し始めた。魔法で、挽回しようと焦ったが、返って隙ができては、ジャンヌの剣と魔法の餌食になった。傷つき、はっきり劣勢になった彼女を救おうと、自分の身も省みずに、彼女の仲間たちは助けに入ろうとしたが、衛兵達に後ろから槍で突き刺されたり、剣で切り倒され、ジャンヌに切り裂かれた。
「勇者様!何故!」
最後の仲間を助けようとして、ジャンヌに胸の装甲ごと、深く切り裂かれて、倒れた。その瀕死の女にすがりつき、自分が盾にという、聖修道女出身らしい女の子たちごとジャンヌは、聖剣を突き刺し、とどめを刺した。彼らの死などはどうでもよかったが、自分のために死んだ侍女のための涙が止まらなかった。そして、彼女を無慈悲に殺した偽勇者達がどうしても許せなかった。その時まで、あまり考えていなかったりライバル達のことに関心を持つようになった。既に家臣達は、他の勇者の動向に関する情報を集めていた。彼女も、積極的に彼らと話し合うことにした、その件で。比較的近隣の国をバックにした勇者を、機先を制して、精兵を率いて、彼と彼のグループを、精鋭多数を率いて、待ち伏せ、包囲した。勇者の男とは激しい戦いを制して、彼のグループが全滅する前に倒した。彼の仲間達は、逃げようとはせず、最後のひとりごとまで戦い死んだ。彼の死体に手を伸ばして回復魔法をかけようとする瀕死の聖女を無慈悲に止めをさした。バックアップになっていた国も、他国も動員して攻め滅ぼした。彼らも同様なことをするつもりだったのだ、憐れみなどかけてやる必要はない、後悔なぞ必要ないのだと思った。
それ以降、他の勇者達が彼女の範囲に入ってことはなかった。しかし、それは単にかれらかが様子を窺っているだけのことだと思った。用心を怠ることなく、他の勇者達の同行を探った。そして、かつて中継ぎの勇者と名乗った偽勇者の動向を調べさせた。彼が、4人の女を連れて、公国を乗っ取って専制的支配を行っていることが分かった。更に、その時までに数人の勇者達を殺していることも分かった。正々堂々と真っ正面から挑もう等考えたが、家臣達が反対し、更にその勇者達を簡単に倒していることもあって慎重に構えていた。何度も家臣達と会議を行った。そういう時、勇者同士、手を組んで共に当たろうという話しが持ち上がった。




