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中継ぎの勇者は聖女の王女様とは結ばれない  作者: 安藤昌益


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勇者乱立編16

「もうすぐ、偽勇者達がやってきます。数は、300人以上ですが、半分近くは多かれ少なかれ負傷しています。偽勇者二人は、まだ傷が癒えておらず、力は1/10程度ではないかと思われます。」

 シャルル公爵は、床几に聖鎧を着込んで座っている金髪の美しい女性にむかって、“十中八、九勝てると思います。”という表情で報告した。

「しかし、もう一人の偽勇者が無傷なのではありませんか?」

 報告を聞いたジャンヌ王女は、出来るだけ味方の損害が少ない方が好ましいが、という意味を込めて尋ねた。

「しょせん中継ぎを名乗る弱小な偽勇者、何ほどのこともないでしょう。」

「油断はせず、全力で戦います。」

“やらねばやられる。”彼女は思った。

 勇者となってから、魔族との戦いの日々を過ごしていた。今までのように、守るだけでなく積極的に攻撃も試みた。危うい時もあったが、連戦連勝。危うかった時のことを忘れず、教訓とするため、皆にも意見を自由に言ってもらった。そうこうするうちに、彼女の旗の元、彼女の国に、集まる国も増えてきたし、魔族の侵攻がなくなった。そんなある日、遠方の小国の使節が訪れたので、彼女も歓迎の宴に出席した。歓迎の宴は、そのまま戦場となった。その使節は、他の勇者のチームからなっていたのである。武器を持ち込める場所ではなかったが、短剣等を隠し持っていた。武装した警備の兵士がいたが、勇者から見れば彼らなぞ、ものの数ではなかった。しかし、彼女も同様だった。彼らは、卑怯にもいきなり襲ってきた。使節の騎士見習いと思われた、ジャンヌより一歳ばかり年少に思われたが、金髪の逞しい若者だった。彼は初めは、隠し持ってきた短剣で襲いかかり、ジャンヌを守ろうとして殺された近衛兵の剣を奪って挑んできた。ジャンヌは、兵士から剣を受け取って戦った。激しい戦いの末、かなりの損害はあったが、他の勇者のチームを全滅させた。

“こいつらが、神が言っていた邪神の加護を受けた偽勇者か。”と怒りでいっぱいとなった。それまで、国の、周辺地域を魔族の脅威から解放することで頭が一杯で、他の勇者を何とかしようとは思ってはいなかった。彼を使節に紛れ込ませた国は、各国の軍をも、集められる限り集めた大軍で滅ばした。ジャンヌを殺して、覇権を握ろうという魂胆があったから当然なことだった。この時から彼女は、おのが命のために、国と民のため、偽勇者を殺さなければならないと考えた。その矢先、負傷した勇者二人が中継ぎの勇者という偽者に連れられて、近くに来ているという情報が伝わってきた。そして、精鋭300名を率いて、彼らを待ち受けた。そして、彼らはやって来た。情報では、金目当ての仕事をしている汚い連中らしい。

「しょせんは、偽勇者達に過ぎない。」

 彼女は罵るように呟いた。彼らの1/3は負傷者らしい。中継ぎなどという偽勇者は問題にならない、問題は勇者二人は回復しだいだが、1/10程度の回復らしい。

 不可視の魔法で身を隠して待ち構えた。勿論、木々、岩の影に隠れ、見つかりにくい陣形をとっていた。気ずかれるはずはないのと思っていた。彼女の家臣の経験豊富な魔道士も聖騎士達も同様に回答していた。

 しかし、偽勇者の一団は、もう直ぐと言うところで陣形をとり、立ち止まった。一人の戦士が前に出てきた。

「あれが、中継ぎなどと名乗る偽勇者ですか。」

 吐き捨てるように、ジャンヌは、左右に聞こえるように言った。

 彼は、真ん中辺りまで来て立ち止まった。そして、おもむろに口を開いた。

「勇者様のご一行とお見受けします。私はトウドウ・シン・デーン、勇者カルロス殿とカミーラ殿は、私の庇護下にあります。このお二人が傷ついていることを利用して、殺そうとなされているのでしょうが、そのような愚かなことはやめてはどうでしょうか?魔王を倒すことが、勇者様の使命、まずは協力しても、魔王を倒すべきでしょう。その後にでも、武闘大会でも開いて、真の勇者様を決めればよいではありませんか?」

 彼の声は、魔法で増幅して、よく聞こえた。偽善者の臭いが、プンプンと感じられた。

「偽勇者の言葉を待つ必要はありません。」

 彼女は攻撃を命じた。彼女達が動いたのを見ると、相手も事前に十分打ち合わせていたのであろう。整然として、突撃してきた。彼女は、聖剣を抜き放ち、真一文字に斬り込んだ。狙うは、二人の偽勇者のみ。その彼女の前に、シン・デーンが立ちはだかった。

「お退きなさい。」

 彼女は怒鳴って斬りきった。激しい戦いが始まった。

“強い!”彼女は、はっきりと感じた。

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