勇者乱立編10
勇者クロウが、勇者フリードのところにまっ先に向かい、不意打ち、奇襲を期待して襲撃しなかったのかシンデーン達は訝った。
“上手く誘導された、騙されたか?あの王女様達の、彼女らの本国の手の者がクロウのところに入り込んでいたか。”怒りがひしひしと感じる彼に向かって、シンデーンは立ち上がって、
「勇者クロウ殿。お目にかかれて、光栄です。トウドウ・シンデーンと申します。」
頭を軽く下げた。この態度からか、いきなり斬りかかってくるような勢いを止めた。シンデーンは、クロウを見た。フリードと同い年くらいに見えた。大柄で逞しい若者だった。顔立ちも整った、なかなかの美青年には見えた。しかし、フリードほど筋肉が引き締まっていないし、悪くはないが品性も劣っているように見えた。一番重要な、力がはっきり劣っているように感じられた。彼を前にして、シンデーンがさほどの力の脅威を感じなかったからだ。彼のチームも値踏みしたが、“魔道士、騎士、エルフ、ドワーフ、獣人…、かなりの実力がある者がいるが、あとは…、中には愛人だけという女もいる。…かなり劣っているな、チームも。”
「勇者様の名前を騙り、どういうつもりだ!」
クロウの脇に、立った大柄の騎士が大音声で怒鳴りつけた。メディア達に落ち着くように手で制して、クロウの方を目を向け、
「私は戦いの先頭に、たったまでのこと。勇者デューク・フリード様の命じられるままに。」
静かに答えたが、
「奴らはまがい物の偽物だ。奴に加担すれば、貴様も同罪だ。」
凄む彼に、
「私は中継ぎを命じられて、戦ってきました。私を召喚した女神が導いたのが、フリードでしたから、彼に従い、彼に義理をはたしたのです。もし、正々堂々、互いに戦い破れたならばともかく、そうでは無ければ、手を貸さなければならないでしょ」
答をかえし、すかさず進めた。
「今ここで私を倒すことは可能でしょうが、貴方の、チームの全てを失うこととなりますよ、私の脇にいる4人の女達、戦姫の女達だけで戦っていに紙。更に、貴方も私と戦っていては、彼に勝てる力を完全に失うしかないと思いますよ。」
彼は挑発するように言った。クロウは、シンデーンを味方にしようとは考えていないことが分かった?“勇者のプライドか?”奴のために、更に時間を与えてやるか。”
「先ほども申し上げたように、正々堂々とした勝負で、あの方に肩入れするつもりはありません。正々堂々とした勝負を、不肖私が取り揃えましょうか?」
“逃げるのが最善だと思うが。”別れた直営のデューク・フリードと比較してもクロウに分がないな。”だからこそ、策を弄して彼の力を奪う策をとったのだ。時間が経てば、実力の差は広がるばかりだ。それはよく分かっているはずなのに、それでもクロウは、シンデーンを味方にしようともせず、彼の提案提案を受け入れた。“勇者の誇りか。それに逃げるに逃げられまいな。こいつを支援した王侯貴族その他…。”
2人の対決は翌々日だった。彼のチームから逃げ出した者が続出した。しかし、思ったより、その数は少なかった。チーム戦としたので、あくまでも数は同人数とした。フリード側に人数の調整を要請したが、フリードは快く応じた。その選抜に、多少とも時間がかかる、そのことがフリードにとって優位となることが分かっていたからである。
城から離れた草原で、双方30名が相対した。クロウの側は総力戦だった。ほとんど戦力にならない娘までいた。覚悟を決めたのか、クロウの戦いぶりは立派だった。彼の部下達も、彼のために死を恐れず戦った。単なる愛人でしかない娘も、彼の盾に、自ら飛び出して死んだ。二十数合目に彼の聖剣が折れ、デューク・フリードの聖剣がクロウの胸を貫いた。彼が絶命した時、彼の仲間は全て息絶えていた。
トウドウは、立会人として一部始終を見た。その後、見せしめに町の中央広場でさらしものにされた死体を、その二日後に回収して、郊外の林に丁重に埋葬したのは彼だった。
「甘いわね、全く。」
「メディアに、今日は同感です、お兄様。」
手伝わされて女達は不満だった。
「我が見るところ、何とか勝てるかもしれないというところだ。」
イシスの言葉に、ディーテが
「我もそう見た。」
それでも、
「勝てそう、勝てる可能性もあるという程度なんだな。」
“同感だ。”と彼も思った。報奨金を受け取り、今後の身の保証の確約を取り、フリードの元を離れた。この時、メディアの旧家臣達とラセット父の代の家臣達が、彼らの前に現れた。彼らを連れていくこととなった。また、一人、拾い上げて連れてゆくこととなった者もいた。




