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断罪の暗殺者  作者: 流優
政権転覆
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スタンピード《6》

 投稿が遅れたのは、全てファイアーエムブレムの新作が発売してしまったのが悪い。




「あ! あんちゃんとセイハおねえちゃん!」


「主様!」


 ブンブンとこちらに手を振るのは、燐華と玲。

 

「……また何か、おかしなモンに乗ってやがるな」


 その後ろで、俺が作って渡したライフルを肩に担ぎ、ちょっと呆れたような表情をしているネアリア。


「燐華、玲! 怪我はしてないな?」


「へいきー!」


「あまり強い魔物もおらんかったので、大丈夫です!」


「ネアリア、すっかり保護者が板に付いていますね」


「うっせ、お前らがやらせたんだろーが」


 彼女らとそれぞれ言葉を交わしてから、俺は彼女らを背に乗せている(・・・・・・・)夜叉牙へと声を掛ける。


「お前も、ケガはしてないな?」


「グルゥ」


 この程度の敵にはやられません、とでも言いたげな様子で、コクリと頷く我がペット。


 やはりネアリア達は、ウチのペットと合流していたようだ。


 道中飛び掛かってくる魔物どもを返り討ちにしながらバイクを走らせていると、途中でこちらの気配を感じ取ったのか、夜叉牙からシグナルが送られてきた。

 枢機卿の下へと向かうつもりだったのだが、位置が近いようだったので、そのままこうして合流を果たした訳だ。


 気を利かせた夜叉牙が体勢を低くさせ、まずネアリアが我がペットの背から飛び降り、続いて「とー!」「ほっ」と二人の幼女達が滑り台を滑り落ちるように降りてくる。


「色々とツッコみたいところはあるが……とりあえず良い時に来やがったな。ユウ、アタシはこれで弾切れだ。弾よこせ」


 パン、と一発銃声を鳴らし、こちらに迫り来ていた魔物の一体、その額を撃ち抜きながらそう言うネアリア。


 収納の魔法が掛かったポーチを持っているという話だったので、百五十発近くは渡してあったと思うのだが、もう撃ち切ったのか。


 俺が今まで見た中では、百発百中そのものだったコイツに限って、無駄弾を撃ちまくったなんてこともないだろうし、それだけ魔物の数が多かったのだろう。


「……ネアリア、もう少し頼み方があるのでは? 失礼、ですよ」


「おっと、こりゃ失敬。――そこのマスターさん、アタシに弾をおよこしになっていただけますか? お礼に、帰ったら良いことしてやるぜ?」


 と、ネアリアは妖艶な笑みを浮かべ、わざとらしく俺にしな垂れ掛かってくる。


 肌に感じる彼女の体温と、女性らしい身体の感触。


 まあ、ネアリアがこういう表情を浮かべる時は、そのからかいの対象は俺ではなくセイハである。


 俺をこうやって誘惑する素振りを見せることで、この純情な少女の反応を楽しむのだ。


「いいことー?」


「……り、燐、ウチらは聞かん方がええと思う」


 よくわかってなさそうに首を傾げる燐華に、ちょっと顔を赤らめる玲。


 うむ……玲は耳年増さんなんだな。可愛い。


 いつもならば俺も赤毛の同僚と一緒になってふざけるのだが、しかし今日に限っては本当に時間がないため、大人しくインベントリを開き、ライフルの弾を箱で取り出す。


「非常に魅力的な提案だが、それはまた次の機会に頼もう。――聞いてくれ。敵の親玉が確定した。今この戦場に軍と一緒に出て来てやがるから、今すぐそっちに向かって排除するぞ」


 俺の言葉に、ネアリアはピク、と眉を動かし、俺に回していた腕を解く。


「ようやくか。どこのアホがお山の大将だったんだ?」


「枢機卿ヴェーゼル、睨んだ三人の中の一人がやっぱりそうだった。一度戦闘になったんだが、仕留め切れなくてな。こっちの方面にいるって臨時司令本部で言われたんだが……軍が今どこにいるか、わからないか?」


「……ユウとセイハで仕留め切れないとなると、相当だな。位置は、わかるかもしんねぇ。さっきアンタのペットだっつーコイツが、やべぇ気配の魔物を感じ取ったらしくてな。アタシらはその討伐に行こうとしてたんだが……軍も、そのやべぇ気配の魔物を発見してぶっ殺しに向かったんじゃねぇか?」


 ポンポンと夜叉牙の身体を叩きながら、そう説明するネアリア。


「やべぇ気配か……どれくらい強そうなんだ?」


 夜叉牙自身に問い掛けると、我がペットから隷属スキルを通して、若干悔しそうな念が伝わってくる。


 ――恐らく自分と同等か、それ以上の相手だと。


 コイツにそう言わしめる相手とは……なるほど、スタンピードの締めにその魔物を使うつもりか。


 夜叉牙でも勝てない程の強さを持つ魔物を放ち、圧倒的な力を見せつけさせて甚大な被害を生み出し、最後にそれを討伐する。


 国王になるための実績としちゃあ、十分なものがあるだろう。


「よし、なら夜叉牙、その魔物とこまで案内を頼む」


「グルゥ」


「お、いいのか? このベヒーモスの姿、晒すことになっちまうぞ」


「やべぇ魔物がいるってわかってるのに、わざわざ戦力を減らす真似はしないさ。問題が起こったら、第三王子にどうにかしてもらおう」


 もう、細かいことを気にしている余裕はない。

 後ほど王族権限でも発動してもらって、ウチのペットを認めてもらうしかないだろう。


「急ぐぞ、道中の魔物は邪魔な奴だけ排除して、それ以外は基本無視だ」


「りょーかい。いいねぇ、ようやくクソッタレの顔が見られるな」


「任せてー! 悪い人は、えいっ! ってやっちゃうから!」


「主様の敵は、ギッタギタにしてやります!」


「あぁ、頼りにしてるぞ!」


 そうして、俺とセイハは再度バイクに跨り、ネアリアと幼女達もまた夜叉牙の背に乗り、移動を再開する。


 先頭を夜叉牙が走り、その後ろに俺達だ。


 ……夜叉牙とあの三人がいると、楽だな。


 道中の魔物は、強そうな奴を燐華と玲が魔法を放って先んじて仕留め、撃ち漏らしはネアリアが的確な射撃で射殺す。


 雑魚は夜叉牙がそのまま轢き殺すので、その後ろにいる俺達は何もせずただ突っ走るだけである。


「それにしてもユウ! アンタのそれ、今度操作の仕方教えてくれよ! すげー楽しそうじゃねぇか!」


 ライフルのスコープを覗きながら、夜叉牙の上からこちらに声を掛けてくるネアリア。


「……マスター、私にも教えていただけますか!」


「オーケー! バイクは楽しいからな、きっと気に入ると思うぜ!」


「あんちゃーん! 燐華にも教えてー!」


「燐華はまだ小さいからダメ!」


「えー!」


「その代わり、後ろに乗せてやるからさ!」


 そもそも燐華の幼女の身体じゃ、足がリアブレーキにもチェンジペダルにも届かないだろうしな。


 物理的に操作不可能である。


「むむ! それならいいや! あんちゃーん、今度乗せてね!」

 

「あ、主様、ウチもいいですか!」


「あぁ、勿論いいぞ!」


「……やっぱり、操作を教えていただかない方がいいかもしれません。それでしたら、移動の際マスターに乗せていただけますし……」


「ハハ、まあ、バイクの乗り方覚えても、いつでも乗せてやるさ!」


 そんな会話を交わしながら、進んでいると――やがて遠くに、ソレが見えてくる。


「あれは……」


 視界に映ったのは、とてつもなく巨大な生物。


 未だ距離はあるが……それでもその生物がとにかく巨大で、怒り狂ったように暴れている様子が確認出来る。


 ――それは、ドラゴンだった。


 翼はなく、四足歩行。

 三階建てビルくらいの体高があり、頭の先から尻尾まで含めれば百メートルは優に越すであろうサイズである。


 頭部からは厳めしい角が生え、まるで岩のようなゴツい鱗で全身が覆われており、ちょっとやそっとの攻撃では、とてもダメージを与えられないであろうことがわかる。


「なっ……龍族だと!?」


「……あんな種まで用意しているとは」


 ネアリアの驚愕の声に、セイハの険しい声音。


 確か、こっちの世界だとドラゴンは『龍族』と呼ばれ、世界最強(・・・・)と呼ばれる種族だったはずだ。


 おいおい……あんなサイズの敵、いったいどうやって倒せっつーんだ。

 俺の状態異常攻撃とか、利くのか? アイツに。


 そもそも銃弾も短剣も、奴にとっては爪楊枝で(つつ)かれるのと同じようなものだろう。


 ――それからすぐに、ドラゴンの周囲の様子が見えてくる。


 第一王子の軍は、予想通りあのデカブツと戦っているようだった。


 魔法兵が一斉に魔法を放ち、迫撃砲らしきもので順々に砲撃し、その手足に群がって斬撃を浴びせ、といった様子で激しい攻撃を行っているが……ドラゴンにダメージが入っている様子は、(いささ)かも見られない。


 象と蟻が戦っているようなものなので、ドラゴンの尻尾の一振り、前脚の払いだけで人が空を舞い、踏み潰され、ゴミのようにどんどんと死んでいくが……それでも彼らは一歩も引くことなく、具現化された死に対して果敢に立ち向かっている。


 俺達にとっては敵の一派の者達だが……彼らにも、命を賭して守ろうとするものがある、ということか。


 ……きっと、やるせないだろう。

 このスタンピードも、あのドラゴンも、全て味方だと思っている者が仕掛けたのだと知ったら。


「いたッ、奴だッ!!」


 怒号をあげ、部下達の指揮をしているらしい第一王子らしき人影の後ろに、見覚えのある法衣を着込んだ、クソッタレ野郎はいた。


 ……というか、枢機卿はともかくあの王子、本当にこんなところまで出て来てやがったのか。

 

 ……現在のこの国の実質的なトップであるというのに、こんな最前線で戦っているということからしても、愚かであることは間違いないだろう。


 だが、泥と血に塗れながらも、兵達と共に戦場にあるその姿からは、王族としての確かなカリスマを感じさせた。


「……もっと違う出会い方をしていれば、仲良くなれたかもな」


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