7・主観と客観
執筆と再検討が徐々に落ち着き、文章を書く作業に集中しだすと、当然、書き方に気を配る必要に迫られます。
自分の作品鑑賞を他人が読むと想定して文章を書くのは、実のところ非常に高度な技術と思います。
読むのが誰だかわかりませんし、どこまで書き添えれば他人が理解できる文章になるのかも、よくわかりません。作者様に向けて書いたとしても、著者の人となりがわかりませんから手がかりもありません。そういった状態で何らかの相手を想定して、その仮想人物が読める文章を書くのですからそもそも骨が折れるでしょう。
加えて、自分に湧き上がった感情は明らかに主観です。作品鑑賞によってその主観に客観性を盛り込みますが、まだ主観の立場です。そこから他人に理解できる文章を書くとき、立場が今度は客観的になります。
たとえて言うなら、自分はピッチャーなのに、それを受け取るキャッチャーの視線に立ち、飛んでくるボールの軌跡を想像しながら投げ、しかもきっちりミットに納めなくてはならないのです。ありていに言って至難の業でしょう。
また、もし完全な客観的立場で己の感情を感想にできたとすると、
1・客観的に自分の感想は伝わった。
2・持っていた気持ちの強さ、情熱などの温度がいまいち伝わらない。
といったこともあり得ると思います。
伝えたい内容と、伝えたい思い。
どちらも読者の中から湧き上がってきたものですが、どちらも文章で伝えたいと考えたなら、「ただ客観的であればよい」わけではないとわかります。
冷静に自己を分析する客観的視点と、いかに感情が高ぶったかという主観的視点。時に第三者の視点、時に自分自身の視点を織り交ぜつつ文章を組み立てると、どこで感情が動いたのか、どのくらい感情が動いたのかが相手に伝わりやすくなり、生き生きとした感想になると思います。
ここは非常に悩ましく難しいと思いますが、ひとまずは客観性を備えて他人に分かりやすい文面にするのが無難かな、と思います。