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嵌められて異世界  作者: 池沼鯰
第六章:平穏までの距離
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068 ここはアインの街です


 フローティス帝国の首都ゴレオスからウェントの屋敷に戻って来たら、ポントール王国から移動して来たドワーフたちの、先触れが来ていた。

 明日にはウェントの街に100人が来るらしい。二ヶ月ほどで到着って、割と早い。

 先触れ役をしてくれた傭兵の人は、十分にねぎらって休ませることとする。草薙さんお手製の御馳走を振る舞えば、喜んでくれることだろう。


「しかし、ドワーフ100人か……」


 冷静に考えると、多いな。


「翌日にはイエイラの街に移って貰うとして、到着する明日はここで休ませないといけませんよね」

「だなぁ。半数の50人くらいはこの屋敷と近くの厩舎の設備で休ませられるか?」

「残りは、適当な宿に散らばって貰うしか無いでしょうね。50人程度なら、何とか確保出来るでしょう」


 もうちょっと気に掛けてあげるべきだったかも。旅を優先していたので、そう言った対応が杜撰だったと反省。


「ドワーフたち用の家や鍛冶場は、この一ヶ月でイエイラの街外れの方に作って貰ったけど、今後も毎月の様に来るんだよなぁ。全部で500人かぁ」

「……いっそのこと、イエイラの街の更に東側に、新たな街を作ってしまいませんか?」

「作れるもんなら、作ってしまった方が良いのかもなぁ」

「えっ」

「ん?」


 どうやら、戒はオレなら割と簡単に出来るだろうと思っている節がある。

 無理だろ。


「傭兵でも雇って境界を警備して貰って、その間に壁を作ってしまえば、実質的に新たな街の外枠の出来上がり、ですよね?」

「理論上はそうだとしても、そう上手く行くはずが……」

「壁の高さは5メートルもあれば、一般的な街としては十分でしょうか。厚みも5メートル、とすれば、ミツル。一度にどれくらいの幅まで壁を作れますか?」

「待て待て。掘りもあった方が効果的だろ? だとすると……」


 なんだかんだで、イエイラの街の更に東側に、おニューな街を建設する計画が進んで行った。




 翌日9月28日。ウェントからイエイラへと移動する。

 ジャ川の幅は海に出る所でも100メートルほどだが、橋は掛かっていない。代わりに大きな客船が運航していて、馬車三台程度、乗客50人ほどが乗れる。

 北の海と南の海を繋ぐ運河もあり、そっちは船の幅10メートル、深さ5メートルほどが通れる基準になっている。地球の運河の規模を考えると、物凄くミニマム。

 人口とかも少ないし、大規模輸送で利益をガッツリ得られないと、発展しないのだろうかね。

 それはともかく、オレは一人なので、とっとと視界内テレポートで対岸へと渡った。

 やることは一つ、イエイラの街で仲良くなった大工のおっさんたちに会いに行く。


「よっ。進捗、どうなってる?」

「シンチョクだぁ? なんだ、それ。ウメーのか?」

「……仕事の進み具合はどうだ?」

「ああ! 順調だぜ! 言われていた家屋30軒と鍛冶場、ほとんど出来てる。あとは細かい所だな」

「実は、そこに住まわせる予定のドワーフが、今日ウェントの街に来る。だから、明日にはこっちに来る予定だ」

「お。はえーな! 話じゃ、二ヶ月から三ヶ月掛かるってことだったが」

「オレが大きな荷物は預かってしまったのが原因かもな。思ってたより早く到着だ。だから心配になって来たんだが……大丈夫そうだな?」

「おうよ! それで、そろそろ次の仕事について、話を詰めなきゃならねーと思ってたんだが……」


 今後の建設についての話になった。

 丁度良かったので、新たなイエイラの街、建設計画を説明することにした。

 ついでに、オレの新しい屋敷も建てようってことで、魔道具技師のモルティナに描いて貰った設計図も渡しておく。


「建設については素人の、いち技術者が描いたものだ。そのまま建てたら不都合が出るだろう。午後にはこっちに来させるから、話し合って現実的な案に仕立て上げてくれ」

「良いけどよ……。予算の上限は?」

「んー、小金貨2,000枚(4億円相当)くらい?」

「……お、おう。頑張る」


 手持ちの金額を言ったら、かなり引かれた。




 スエズエ共和国の上層部に、街を作る許可なんかを貰うのは、戒に全て任せてある。

 オレがやるのは、壁作りだ。


「『大地よ、抉れて穴を成せ。dig【掘削くっさく】』」


 まずは穴を掘って、掘りみたいな感じにする。掘った際の邪魔な土は、壁を作りたい方へと寄せておく。


「『土よ我が意のままに、石の壁となって守れ。StoneWall【石壁】』」


 その除けた分と周りの土を集めて壁とし、石に変化させてしまう。

 一度の魔法行使で出来るのは、<臨界突破>した土魔法と魔法拡大を使用しても、高さ5メートル、奥行き5メートル、幅7メートルほどだ。掘りも大体同じ。

 これを魔法並列及び魔法遠隔で10個ほど同時に発動すれば、幅70メートルほど。

 そして、1日に使えるのは、魔力量の関係もあってこれが30回ほど。2,100メートルほどになる。


「ふぅ。今日のノルマはこんな所かな」


 戒の要望では、南側に20km、東側に20kmの計40kmもの石壁が欲しいとか。壁に上る階段とかは後付けで作るらしいので、壁の上を歩ける構造にする程度で良い。

 これにより魔力量をかなり使い込んだオレは、大したことが出来ないのでウェントの屋敷へと戻って鍛錬に励むこととした。

 午後には例のドワーフ達がやってきて、ちょっとした宴会みたいになったけどな。

 イエイラの街で作って貰っている豆を、枝豆の段階で大量に収穫しておいて保存してあり、その【遅延】魔法を解除して茹でて塩振り。

 最近研究を兼ねて作っているエールを解禁。こちらは【加速】の魔法を駆使している。

 この二つが出会ったら……後はもう、止まらない辞められない。

 後で勘定した所、この一晩でせっかくの試作品エールが、20樽以上消えてしまったとか。一つで100リットルはあったはずだが……一人10リットル以上飲んだのか。化け物め!

 冷やしてないし、ホップも厳選してないからまだ不完全だって、草薙さんとその部下が語っていた件については、割とどうでも良い。

 上面発酵? 何ソレ? 美味けりゃ良いんだよ!

 特別に作って貰ったローストビーフと唐揚げが、温度魔法で冷したエールにとても良く合った点だけは記憶に残っている。




 翌日以降、ドワーフ100人はイエイラの街へ移動して貰った。それに引っ付いて来た戒が、何やら作って貰いたいものを熱弁していた。

 ネジ・歯車・ベアリングは工業の発展には必要不可欠とか言ってる。

 真新しい鍛冶場で、あるだけ鉄を出してくれと言われたので、鉄20kgの延べ棒を2,500本、出してやった。


「うっひょおおおおおおお!!」


 ドワーフのまとめ役であるグルズさんが、早速理性を失って頬擦りをしている。


「これだけあれば、しばらく製作に問題ありませんね。まずはポンプから始め、加圧器、減圧器を目指しましょう」


 戒が怪しい笑みをたたえている。

 加圧器とか作れると、何か出来るの?


「知らないんですか?」


 知らんがな。


「クーラーとか暖房とか出来ますし、色々応用が利きますよ! いずれは液体窒素なんかも作りたいですねぇ」


 クーラー、だとぉ!?

 この暑い気候を快適に過ごせるなら、オレは助力を惜しまんぞッ!

 やはり、クーラーは文明の利器。はっきり分かんだね。




 それから10日近く、南側の壁が出来上がるまでオレの外壁作りは孤独に続いた。

 10月1日にはファフレーン王国に小金貨を取りに行ったけどね。【瞬間移動】で行ったり来たりなので、余計に2時間ほど掛かっただけだ。

 ついでに、追加で金塊を置いて来た。きんを採取して来ても、換金出来ないと意味が無いからなぁ。長期的な小金貨の造幣に力を入れてくれるらしく、小間使い二人を新たに雇うとか。どうやら来年には、王位を禅譲するとかしないとか。金貨のデザインも、新たな王で発行する予定と話してくれた。

 それが小金貨になって世間に流通し、オレの下にも入って来るのはしばらく先だけどな。


 新しい街の壁が半分出来た所で、ウェントの街で傭兵を雇って、警備兼敷地内にいる魔物・動物の追い出しをすることになった。

 実際には戒の配下が手配しており、オレの懐から6,000万円相当の金銭が流れ出した。

 さすがに400人を5日、200人を5日も雇うとなると、結構な金額が動く。

 その10日間で東側の外壁も魔法で作り終え、オレの仕事は完了となった。海に掛かる部分は、海底から石壁を生やしている。人力じゃなかなか無理っぽい建設だ。

 沖合50メートルほどにまで伸びた石壁は、結構見応えがある景色となった。写真とか撮りたい。


「しっかし、ミツルの若旦那はスッゲーな! 短期間にあんな石の壁を作っちまうんだもんな!」


 短期間? いや、結構掛かったが。


「ばっか、おめー、普通何年、十何年と掛けて、何百人、何千人もの人足にんそくを使って、壁ってのは作るもんだぜ? それを、一ヶ月未満で一人でやっちまうなんて……端的に言って、化け物だぜ! ゲハハハハ!」


 まあ、オレってスゲーし?


「おう! 若旦那に付いて行けば、間違い無ぇって! 頼んだぜ!」


 この大工の棟梁は、調子が良い奴だ。だがまあ、悪くない。

 お互い有意に利用し合う関係で居よう。


「早速、新しい屋敷は作ってるけど、結構掛かりそうだ。勘弁な!」


 モルティナとの相談の結果、大雑把な設計図は出来上がったみたいだ。それに沿った建設をし、例の魔素を集める魔道具を設置すれば、相乗的な効果を得られ、通常時の20倍以上の魔力量回復効果が得られる、想定らしい。


「下手な物を作るよりかは、じっくり良い物を作ってくれ。その結果次第で、オレが揮える力の総量も変わって来るっぽいしな」

「そう言って貰えると、こっちとしても作り甲斐があるってなもんよ! 若い奴も新たに入れて人手増やしてるし、次のドワーフ受け入れの時は、完成が間に合わないなんてこと、無いはずだぜ!」


 あ、そっちもあったか。でも遅れはないなら問題無いな。

 しかし、こっちの新しい街と屋敷が出来たら、ウェントの屋敷は別宅的な物になるのかねぇ。少し思い入れが出て来たのに、ちょっと寂しいと感じる。

 兎にも角にも、この20km四方もの敷地内は、実質オレたちの街になる。今から、シ○シティ的な感覚で胸が高鳴るな。

 税とかはしばらく無いけど、名義上の街のトップは戒と言うことにしてある。オレは影の支配者だ。フハハハハッ!

 あー、でも。東西を横断するように石畳を作れとか、オーダー受けてるんだよなぁ。影の支配者が表の支配者に顎で使われてる感。ううむ。

 【石壁】の魔法を応用すれば、そんなに大変じゃ無いのは確かなんだけどね。納得行かん! お給金を請求する!

 ……その給料は、オレが支払うんだろうな。虚しい。やめやめ、この話はここまで!

 まあ、今は地固め。出て行くばかりが多いけど、色々な稼ぎで何とか賄えてるからオールオッケー。いずれ返って来ることを期待しよう。






 イエイラの街の東側に作った、新しい街の名前は『アイン』となった。安直? 街の名前の文句は戒に言え!

 いや、オレも言ったんだよ? 幾ら何でも、『一』はないべ、って。返って来たのは、「分かり易い方が便利」と言う言葉。

 戒、子どもが出来たとしたら、『一郎』『二郎』に『花子』『桃子』とか名前付けそうだ。キラキラネームとどっちがマシか、それが問題だ。


 ちなみに、スエズエ共和国の東側の国はフォードリー王国と言うけれど、イエイラの街から100kmほどはスエズエ共和国側の領地で、中程に宿場町があるだけ。

 色々輸出・輸入する為に物流はそこそこあり、今も行商人の駆る荷馬車が近づいて来て、新たに出来た街に吃驚びっくりしている表情が伺える。


<ウェルカム! 新しい街『アイン』! 今はまだ外側だけですが、今後どんどん発展していく予定です!>


 と、大きな看板に書いてある。

 そんな街の出入り口となる門の所まで、オレは【石壁】の魔法で石畳の道を作って繋げた。総延長距離20km強、製作時間約4時間。いやー、働いた、働いた。魔力量、半分近く使ってしまったぞ。


「なっ!? こんな立派な石の道路が……。一体、どうやって!?」


 行商人は混乱している!

 そんな様子を横目に、オレはウェントの屋敷へと【瞬間移動】で戻る……前に、残った魔力量できんの採取へと向かった。

 やはりきんの輝きは人を魅了し、安らぎをもたらす。今なら、ドワーフたちが金属の塊相手にペロペロしたりする心境の一端が、ほんのりと分かってしまうかも知れない。

 その後ウェントの屋敷に戻って鍛錬をし、その日は活動を終えた。






高坂こうさかミツル 年齢:25

精神11 魔力1,403 (最大)魔力量216,524


所持現金:8億2,951万円相当+Gold 10,846kg+(28億円+80億円)相当のファフレーン小金貨(予定)



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