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嵌められて異世界  作者: 池沼鯰
第四章:信賞必罰
34/114

033 金の価値


「018 金と鉄」で数字の間違えがあったので訂正。


修正前:10m×10m×150mくらいを対象に


修正後:5m×5m×15mくらいを対象に


50cm×50cm×15mを100倍並列発動です。

その後の酸化鉄抽出以降は問題なし。

恐らくメモったのを転載した際におかしくなったかと。




かねについて知りたいと?

 ふむ、殊勝な心構えだな。良かろう、特別に話してやる。




 まず、根本的なところから行こうか。

 人間が文明を発展させる前、例えば狩猟採集が主な生計を立てるすべだった時代を想像すべし。


 その頃、価値がある物は一体何か。

 日々の糧? うむ、確かに。

 強い力? まあ、の。

 獲物から得られた何か、もある。牙や骨、毛皮なども、己の力を誇示するのに便利な物差しだったろう。

 綺麗な貝殻や石も、貴重だと言う点では価値があるな。

 ん? 大きく丸いドーナツ型の巨石? 人の顔を模して造形した岩? うーん、一応価値はあるか。作るのが大変と言う意味での。


 そこで出て来るのは、やはりきんじゃ。

 普遍的な貴重さ、持ち運びの利便性は、他の品を圧倒する。

 自然界で、素のままのきんや砂金として産出するのも、大きな利点となる。


 原始的な生活から時代が進み、文明が発展して来ると、冶金技術が発達して来る。

 そうすると金属自体の価値が広まり、それが貨幣・硬貨へと進化して行く。


 銅の合金は扱う難易度がやや低く、産出量も多めで下位の金銭として適している。

 地球でもいまだ、貨幣として銅の合金を使用しているところは多かろう。アルミ? それはちょっと特殊ではないか?


 銀については、きんほど希少では無く、かつ美的価値もあり、貨幣として多用されていた。

 地球では経済規模の大きさに産出量が追い付かない為、きんとともに一般貨幣には用いられなくなったが、一時は銀本位制も成立するほど、金銭の中心的存在だったこともある。


 鉄? 技術が未発達なら価値はそこそこあるが、大量に軍事利用されるからの。貨幣として使ってしまうより、結局は加工品で利用した方が良いと見做される金属じゃろう。




 まあ既に地球でも、紙幣と言うある程度増産可能な、国や巨大な組織が価値を保証する通貨が主流になっているのは、お主らも知っている通りだ。

 人口が増えて活発になった経済活動、それに見合った通貨は、貴金属の貨幣では到底用意出来ない。故に一定の価値を付与した、証書のような物を発行している訳じゃ。


 ちなみに、紙幣は紙とインクさえあれば幾らでも刷れるが、大量に刷り過ぎても意味が無い。経済活動で流通する量に見合った分で無いと、な。

 硬貨の場合、人と経済規模がある程度以上になると、価値はそうそう下がらなくなる。

 だが紙幣では、経済活動の上限を容易く突破出来てしまう。その点、よくよく留意して扱うべき代物じゃ。初期の段階では経済に混乱を招くことも多いしの。

 紙幣の価値が極端に低くなった結果、どのような混乱が起きるかは、歴史から学べる。


 その次の段階として、電子的な通貨があるな。なお、新しいモノが常に優れている訳では無いことは、言うまでもあるまい。

 紙幣以上に簡単な発行が可能な以上、現実の何かを基準とするようなルールでも入れておかんと、簡単に価値が乱高下する。

 導入初期の数十年は、頻繁に混乱が発生するだろう。こればかりはどうしようもあるまい。余程道徳観念のしっかりしたしゅで無ければ、な。

 発行にある程度はコストの掛かる紙幣とは違い、扱いが遙かに難しい。痛い目をたくさん見て、体感して実感して対処を学ばねばならん。

 初期惑星以外での活動が主になった頃、用途の方向性が定まっているだろう。




 結局、かねは道具に過ぎん。それを利用し、経済活動を発展させ、人として出来ることを増やして行くのが肝要じゃ。

 大局的な物の見方をすれば、かねは生物で言う血液みたいな物で、本当に大切なのは何が出来るかと言う経済活動の規模や質になる。

 無人島で一人、きん数百トンを持っていても、何の意味も無いことは分かるじゃろ」


 ミドリの講釈は長かったけど、まあ為になったような、頭が良くなったような気がしたから良し(ベネ)






 ユスカ鉱山へすぐに飛んで行ってみたが、さすがに廃鉱だけあって、人気ひとけが無かった。

 金山が盛況だった頃にあったらしい村は、既に朽ちて土台が名残を留めるのみだった。

 盗賊とか居るかと思っていたが、魔物が闊歩するこの世界、人の居る村や町が近くに無いと、盗賊たちも活動し辛いのだろうか。

 キュッカの町から東南東に30kmが鉱山の入口だが、山道だから歩くと1日~2日掛かるしな。


 さて。

 前日の戒とミドリの相談の結果、どこの地層に金が多く含まれているかの調査を、オレがやることになっていた。

 まずは鉱山の入口のすぐ傍で、土魔法での抽出を行う。


「『混ざりし物よ、分かたれよ。ComponentExtraction【成分抽出】』」


 対象は、10cm×10cm×深さ7,500m、2.5cm平方の16倍だ。魔力量がさっくり減る。

 何でこんなに深くの指定かと疑問に思うが、なるべく無駄無く抽出する為、地殻の存在するギリギリまでやっておけ、とのことだ。なお、地面に触れていれば、発動時の距離はゼロと言う扱いだ。魔法遠隔の技能の習熟の必要はない。土魔法、凄ェ。

 【成分抽出】の魔法が効果を発揮した結果、600gほどのきんが地表に出て来た。土魔法で成型し、小さなインゴットにする。

 魔法を使用した場所に、木の枝で×印を付け、簡易の地図に場所と生成量を書き込む。

 ふむ、地球だとグラム4,000円~5,000円とすれば、240万円~300万円か。なかなかだな。

 結果に満足したオレは、次の指定された場所へと向かった。


 北や西側では同じ規模の魔法で10g~100g、東や南では300g~1,000gだった。東南東から南南西に掛けてが、金の含有量が多いみたいだ。

 一番多い2,000gを叩き出した、南東の場所。そこに【瞬間移動】での目印になるオレ的魔石を埋め、ウェントの屋敷へと戻った。




「1トンあたり10gですか。思ってたより少ないですね」

「まあ、こんなもんじゃろ。技術が未熟な状態だと、目視でも金の含有が多いと判明出来る、1トンあたり100g前後の含有が採掘の目安になるしの」


 ほーん。技術が高まると、金の採掘効率も上がるのか。

 まあ、魔法だと魔力量を馬鹿みたいに消費するが、オレならお手軽に出来て良いな。今日だけで5.2kgの金をゲットしたから、日本円換算で2,000万円以上の価値になる。


「まだ半分くらい魔力量あるし、もう一度やって来て良いか?」

「午後は鍛錬ですからね、使い切らない程度でしたらどうぞ」


 早速現地へ飛んで、40cm×40cm×7,500mで【成分抽出】を行う。更に31kgものきんが得られた。


「うひょ~~~! これは、やめられませんなぁ!」


 きっとだらしない顔をしていたと思う。オレはホクホク顔で、スエズエ共和国の我が家へと帰って行った。




 訓練が終わり、シャワーを浴びてサッパリした後、自室で寛いでいた。そこへ、戒がノックをして入って来る。


「どうした? 戒」

「実は、以前から探していた、精神魔法の使い手が来訪されてます」


 腰から外されて、少し高い台の上へ貴重品の様に置かれているミドリが、口を挟んで来る。


「良いでは無いか。そろそろ、例のヴィオネッタと言う女魔法使いと、接触する可能性があるんじゃろ? アレは精神魔法を得意とする。対抗するには、同じ精神魔法を使えるのが望ましい」

「手順については、以前の打ち合わせ通りで構いませんかね?」

「問題ないはずじゃ」


 何やらミドリと戒が勝手に進めている。まあ良いけど。


「では、応接室でお待ちです」


 御辞儀をして退室する戒。オレにそんなのは必要無いんだけどな。なんか最近、執事っぽさを更に追求している気がする。ロールプレイって奴だ。




「あら~、どんな御年寄りかと思ってたら、結構若いじゃないの」


 妙齢の、と言うにはいささかとうが立ち過ぎているか。30半ばの女性が、化粧をふんだんにして、そこそこ際どい服を着ていた。


「失礼。魔法の手解てほどきをして貰えると、聞いているが」

「ええ、そうよ。特に精神魔法は人をたぶらかすのに便利だもの。その手の人が習得しているものよ?」


 う……ん? そうなのか?


「オレが知っている精神魔法使いは、宮廷魔術師だったが」

「あら、凄いのね! 精神魔法ってだけで侮蔑の視線で見られるのに、国の中枢で務めてるなんて!」


 差別とかあるんだな。仮に何らかの事情があったとしても、あの悪行は許せないが。


「さて、時間も限られてるし、早速始めて良いかしら?」

「お願いする」




 まず、どんな精神魔法があるのか、体感するところからだった。

 ソファーの隣に座られ、頬を撫でられたり、胸をさすられたり、太ももにタッチされたりした。

 次いで、耳に息を吹きかけられたり、胸部を触らせて貰えたり、スカートの最奥がチラッと見せられたりして……ってコレ一体何?

 と思っていた時に、急に頭の芯が蕩ける感覚がした。


「あっ……」

「そう、これが【魅了】の魔法。事前に心理的な壁を薄くしておくと、効きが良くなるの」


 パンッと彼女が軽く手を叩くと、オレの意識が急に覚醒して、夢から醒めたみたいになった。


「これは……なかなか強力だな」

「ええ、まあね。だって人は精神に依存している生き物だもの。皆が恐れるのも無理はないわ」


 少し寂しそうな表情をしていたが、隣人が人間の精神を操れるとなったら、そりゃ怖がるのも仕方ないな。

 続いて、【睡眠】や【覚醒】、【気逸らし】などを見せて貰った。【気逸らし】は初心者用の魔法らしく、オレも使ってみることになった。


「呪文の文言が使い手や状況で変わる、珍しい魔法ね。試しにどうぞ」


 そう言われて、そうホイホイと……。


「『あ、金貨が落ちてる。distraction【気逸らし】』」

「えっ? どこどこ?」


 引っ掛かってるし……。いや、これ素か? 反応が微妙過ぎて、判別が付かない。


「……ま、まあ、意外と筋が良いかも知れないわね」


 コホンと小さく咳をして、威厳を保とうとする。意外と可愛い性格してるかも。


「注文だと、あとは【平穏】の魔法を教えれば良いみたいだけど。これって少し難しいわよ? 教えてすぐに出来るとは到底思えないわ」


 そう言っていたが、<臨界突破>を使用したオレに掛かれば、何とかなってしまった。

 この魔法は防御型で、事前に使っておけば精神魔法全般に対する抵抗力がかなり上がる。確かにこれがあれば、ヴィオネッタとて恐るるに足らず、だな。


 精神魔法の講習が終わったので、報酬の小金貨30枚を渡す。


「また御贔屓に~」

「……連絡取れるのか?」

「そうね、『一夜の恋』か『あふれる華』って店に、『紫の花へ』と言伝ことづてして貰えれば、私に伝わるわ」


 面倒だな、そりゃ。


「世話になったな」

「こちらこそ、随分気前良く報酬くれて助かるわ。あ、でも、この魔法使って、悪いことしちゃダメよ?」

「へいへい」

「絶対よ~?」


 ぷくーっと膨れる彼女の頬。行動は可愛いんだが、年齢がちょっとな。後10歳若ければ……。

 そんな考えが伝わったのだろう、睨んで来た。


「精神魔法の使い手なんて、良い事をし続けて、ようやく世間の評判がまともになるのよ。悪事を働いたりしたら、人の住む場所に居られなくなるんだからねっ!」


 そう忠告を残して、夜闇の中去って行った。






 翌日、そろそろベラスティア皇国の様子を見て来るのが無難だと戒に言われ、首都スティアへと【瞬間移動】した。

 いつものように、視界内への【瞬間移動】で城内へ侵入、モナハ皇帝の部屋へ到達する。


「よう」

「……! お主は……吃驚させおって。年寄りにはキツイ。殺す気か」


 本当に心臓に悪かったらしく、左胸を押さえていた。城壁の上から皇帝の仮私室が見えたから、視界内【瞬間移動】しただけなんだ。スマナイ。


「その件については遺憾に思う」

「……謝罪は?」

「……許して?」


 ハァ、と皇帝が溜息を吐く。


「さて。何か変なことが起きてないか、進捗がどうなのか、聞きに来ただけなんだが」

「例の件については、次男のイルセスに任せ、フーケンバケットへ向かわせた。そろそろ『異世界交流 国内経済活発化計画』も凍結、責任者がこの首都へ向かって来る頃だろう」


 へー、そんな計画名だったんだ。ダサいな。

 つーか、交流じゃなくて拉致ってんじゃねーか! 実態と表題が剥離し過ぎてんぞ。


「これからも、進捗確認にそこそこ来るけど、その度に衛兵倒すのも何だよなぁ」

「……入城許可証発行するから、それ持って来訪してくれないか? 制限なし、フリーパスで夜中だろうと不問にしておくから」


 モナハ皇帝がコメカミの辺りを押さえながら、オレに提案して来た。


「うむ、良きに計らえ」


 この返答に、皇帝は微妙な顔をしていた。

 そこへ、コンコンと部屋の扉をノックする音がする。


「皇帝陛下、本日の御予定をお伝えしに参りました」


 お、文官っぽい奴が入って来た。仮面を付けたオレを見て、一瞬身体がビクッとしてた。

 その後は滞りなく、誰それの面会予定とかが細かく読み上げられる。そろそろ御暇おいとまするかねぇと思ってたその矢先、


「……イルセス・ベラスティア殿下、並びに宮廷魔術師二位のヴィオネッタ・エネ・インダルシス殿、面会予定」


 聞き捨てならない名前が出て来た。






高坂こうさかミツル 年齢:25

精神11 魔力992 魔力量108,247

土魔法5(1UP!)、魔法拡大5(1UP!)、魔法並列5(1UP!)、精神魔法1(New!)


所持現金:4億4181万円相当+Gold36kg



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