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嵌められて異世界  作者: 池沼鯰
第三章:蹂躙
27/114

026 捕獲


 「001~025」を少し修正していますが、大筋は変わりません。

 言い回しや文言(MP→魔力量)に手を入れているだけです。




 ポニーテールの髪型をした若い女性が、薙刀みたいなのを構えてオレの前に立っている。


「そう言えば、売られた人たちが居るって五十嵐いがらしさんが言ってたわね」

「そうか。……五十嵐さんは?」


 周りを見回すが、近くには居なさそうだ。

 射掛けて来た中で話をして来た弓使いと、その近くに重装備の黒髪の男性を確認。って、あれは確か鬼瓦おにがわらさんだったか? 顔が怖いけど、性格はまともで頼りに出来そうな人だった。印象に残っていたので名前も覚えてる。名前も印象的だったから覚えていた可能性は、否定出来ない。

 あと黒髪なのは、若い女性二人だけだ。攻撃して来た火魔法使いは、死んでいそうだから除外。


「五十嵐さんなら、あっちに居るわ」


 彼女、紫苑寺しおんじさんが指す方を見ると、門から50メートルほど離れた所で警戒態勢を取っている歩兵の集団がいる。

 そこからオレに向かって走って来ている奴が一人居た。黒髪だ。と言うか五十嵐さんだ。

 近づくまで数秒待っていると、オレから10メートル程度の距離を取って声を掛けて来た。


花蓮かれん紗良さら! 大丈夫か!?」

「下の名前で呼ばないでっていつも言ってるでしょ! 紫苑寺って呼んで下さい」

「わ、私も小湊こみなとと呼んで下さい!」


 オレよりそっちが気になるのか。

 五十嵐さんはオレと対峙すると、さすがに誰なのかを理解したようで、少し戸惑っていた。


「……芝浦さんは元気か?」

「……ああ、まあな。私が戦争で活躍すれば、無事な期間も伸びるだろう」


 あー、そう言えばヴィオネッタとそんなやり取りもあったね。


「で、そっちの可愛い新顔の子たちは?」

「……新しい犠牲者だ。連れて来られた」


 ヴィオネッタまじ許すまじ。いや、ベラスティア皇国と言うべきか?


「可愛いって……」

「紗良、社交辞令よ」

「そ、そうかも知れないけど! 多分花蓮へのは、嘘じゃないと思うよ」


 紫苑寺さんはスラッとしていて、顔が整っている。美人と言って差し支えない。

 小湊さん……小湊ちゃん?の方は、愛嬌のある顔で、胸が結構大きい。全身柔らかそう。個人的にはこっちの方が……。


「と言う訳で、引いて欲しい。この兵力差だ、一人で頑張ってもどうにもならない」


 まあ、普通ならそうだよね。普通なら。

 大きく息を吸ってー、吐いてー。


「だが断る」


 大きめの声で言ってやった。


「……仕方ないな。骨の2,3本は覚悟して貰う」


 そう言って、五十嵐さんは日本刀みたいな刀を腰から引き抜いた。凄いな、日本刀は地球から調達して来たのか?

 いや、良く見ると刃文が無い。形だけ真似て、この世界で作ったのかね。

 戦闘に掛かりそうな時間分、槍と回避と時間魔法の技能を<臨界突破>しておく。


「手を出すなよ」


 五十嵐さんは、そう周りに言い放ち、刀もどきの刃を裏返す。峰打ちにするつもりらしい。


「一応こっちからも降伏勧告しておきたいんだが。聞き入れてくれそうにないな?」


 返答は気配の薄い突き技で行われた。ってオイオイ、避けられなかったら四肢でも大怪我だぞ。

 回避の練度が底上げされている今、何とか避けられたが。

 そのまま刀が、オレの脇腹目掛けて振られた。槍の柄で力を込めて弾く。今のオレの膂力は常人の10倍以上ある。

 これだけの力があれば、幾ら常日頃鍛えている相手でも、技量の差が大きく無い現状、五十嵐さんでも体勢を崩す。

 驚いた表情の彼に、チートで悪いなと思いつつ、石突きで追撃の鳩尾みぞおち攻撃を行った。

 数メートルほど転がって、咳き込んだ五十嵐さんは、それでも経戦の意志を持ってこちらを睨み付けて来る。


「げほっ…! がはっ……」

「そ、そんな!? 達人と言えるほどの五十嵐さんが、こんな簡単に!」


 勝負は見えたし、面倒になって来たから、魔法遠隔と雷魔法を<臨界突破>させ、確認出来ている日本人5人全員に【感電】の魔法を掛ける。

 突然雷に打たれたかのように、痙攣してその場にうずくまる4人と五十嵐さん。いきなりの出来事に、どう対処して良いか分からない皇国の兵士たちは、オレや日本人全員と距離を取った。

 その場に居るのは、弓兵と魔法使いと日本人。そして、少し離れた場所にいた兵士らが指揮官に率いられて、いつの間にかオレを1,000人以上で半包囲していた。


「タケシ殿が倒されている!? 総員、あの黒髪の槍使いを包囲しつつ追い詰めよ!」


 このまま距離を詰められると面倒になる。主に、日本人が魔法の余波で、怪我したり死んだりしかねない。だから、その前に―――


「『爆炎よ、彼の敵を討て。FireBall【火球】』」


 魔法並列と火魔法を<臨界突破>し、100個の【火球】を包囲網に向かって放った。かなりの魔力量を消費する。


「「は?」」


 その場に居るオレ以外の全員が、異常な事態を理解出来ていないようだ。多数の【火球】が着弾し、燃え盛る人の臭いで、ようやく彼らは被害を認識していた。

 勿論、最優先で敵の指揮官を狙ってある。既に馬と共に丸焼けになっていた。絶叫も数秒で途絶える。

 【火球】1個あたり2,3人は焼けているか。コルストイと言う補佐官の情報通りなら、様子見の部隊の1割前後が削れた計算になる。

 更に【火球】を20個ほど生み出して攻撃しながら、風魔法の【拡声】でオレの声を響かせる。


「ハーッハッハ! 逃げないと、オレの魔法で、焼かれるぞォ!」


 内心は、人の焼ける臭いに吐きそうになってたが、強気に出ないと逃げてくれないだろう。

 兵士たちが散らばって行くのを眺めながら、『アイテムボックス』からロープを取り出し、いまだ電撃の硬直から解けない五十嵐さんたちの手を結んでいく。

 女の子を結ぶときは、ちょっと柔らかくて罪悪感が高まった。さすがにスカートではなくズボンだった為、チラリなどの特典は無かった。チッ。

 地面に落ちていた刀もどきも回収しつつ、日本人を5人とも門の近くに連れて行く。


「どうする……つもり?」


 【感電】の効果が抜けて来て、喋れるようになった紫苑寺さんが聞いて来る。


「そうだな。女の子二人はお楽しみの後……」

「最っ低!」


 紫苑寺さんが睨み付けて来る。美人だから結構怖い。あと、変な性癖に目覚めそう。


「ほ、本当ですか?」


 小湊ちゃんは小動物みたいに怯えてしまっている。可愛い。


「冗談だよ。性欲を持て余した時には、娼館にでも行くし」

「……不潔」


 酷い言われようである。しょうがないじゃん、男なんだし。


「とりあえずは、捕虜待遇かな」




 その後、門越しにモギュの街のロークト王国軍に呼び掛けたが、バリケードが設置してあるので開門は直ぐには無理とのこと。反対側の東門を利用するように言われてしまった。

 仕方ないので、一人ずつ抱えて壁の上に跳ぶこととする。軽い女の子の時は良かったけど、男どもの場合は助走が必要になった。

 壁の上から5人を引き連れて、階段状になってるところから降りて行くと、指揮官のボーマン隊長が待ち構えていた。


「……その5人は?」

「捕虜だ。魔法で倒して捕まえたが、オレと同郷で知り合いの為、殺すのは勘弁して欲しい」

「……門の前に居た偵察部隊らしき奴等は、どうした?」

「攻撃したところ、逃げて散って行った。敵の指揮官は二人くらいったと思うが……」

「何!? 報告では2,000人近く居たはずだが?」

「ああ。オレ一人で200人くらいは殺したと思う」

「嘘を吐け! おい、壁の上から一応確認しろ! 敵がまだ居たら、射掛けられる前に戻って来て良い」


 そう言って、壁の上へ部下を二人行かせた。

 暫くして戻ってきた後の報告では、門の近くに敵影はほぼ無いこと、焼けた死体が多数放置されていること、かなり離れたところの大規模な野営場所は変わらず健在で、今も数万の大軍が集結中であること、などが述べられた。


「……とにかく、近くの部隊は居なくなったようだな」

「捕虜はどうします?」

「適当に空き家になったところを使わせろ。人手が欲しいなら、3人まで使って良い」


 その命令を補佐官が了解し、二人の兵士を選んでオレに付けてくれた。


「食事は軍の食堂で出します。空き家については、事後報告していただければ結構です」


 補佐官のコルストイさんが丁寧に対応してくれた。




 魔力量も少なくなって来たので、今日はもう活動を自粛することにする。危ない橋を渡って死にました、じゃ格好が付かない。

 空き家になっていた屋敷を勝手に借りて、庭にテント君7号店を張った。

 それから、納屋のような逃げ場の無い部屋に捕虜たる日本人5人を集め、拘束を外した。御茶と茶菓子を用意し、寛ぎながら話を聞くことにする。


「良いのか? 縄を外して」


 手首を擦りながら、五十嵐さんが言ってくる。


「食事とかトイレとかあるでしょ。垂れ流しや食事抜きならともかく、面倒なだけだから」


 美女の捕虜とかなら、お世話するのもやぶさかでは無いのだが。捕虜がおにゃのこ二人だけなら、お世話することに心惹かれるものがある。だが、男女平等を謳う最近の若者としては、対応に差別があってはいかんのだ。いかんのだ。


「あっ、交代で休憩とか取って構わないのでー!」


 部屋の入り口で見張っていてくれている、二人の兵士に向かって叫んだ。


あらかじめ言っておくけど、三浦のことは気にしなくて良い。最近、ちょっとタガが外れてたし」


 弓使いの七尾ななおさんが、そう言ってフォローしてくれる。って、三浦って誰?


「誰?って顔してるぞ。【火球】を使った奴だ」


 鬼瓦さんがオレの考えを読んでくれた。感謝。


「あ、この焼き菓子美味しい!」

「む、本当」


 小湊ちゃんと紫苑寺さんも、例の焼き菓子を気に入ってくれたようだ。相変わらず御値段分の良い仕事をしてくれてる。


「さて。これまでのことを聞かせてくれ」




 ベラスティア皇国で過ごした日々のことを、少しずつ持ち回りで話してもらった。

 戦闘に使える技能の加護持ちは、血を吐くような訓練漬けだったらしい。最近ようやく一定の戦力に達したと見做みなされ、まずはザルミナ王国との戦争に4月から従軍。戦闘経験を積まされたのだろう。ザルミナは攻略の目途が付いたので、占領を急ぎたいロークト王国側に、5月から戦力として回されたとのこと。

 また、去年の11月に高校生33名が、12月には中学生24名が新たに拉致され、訓練を施されたそうだ。既に数人亡くなっていることを口にした際に、紫苑寺さんの目が剣呑になっていた。紫苑寺さんと小湊ちゃんは加護が強く中級で、戦力としても他の学生たちより高い為、特別にロークト王国側へ回されたそうな。


「それで、高坂はどうやってそこまで高い戦闘力を得たんだ?」


 五十嵐さんが、ちょっと馴れ馴れしくオレを呼び捨てにする。まあ良いけどさ。


「スエズエ共和国で奴隷として売られて、荷物持ちとして買われて、『神の迷宮』で罠に掛かって遭難した挙句、色々あって、強くなった」

「『色々あった』ってところが重要じゃないのか!?」


 ツッコミ御苦労、七尾さん。


「まあ、それについては話しにくい事情もあってね。オレと一蓮托生の仲間になってくれたら、そのうち話す機会もある、かも知れない」

「仲間……?」

「ああ。今は戒……駒沢こまざわかい草薙くさなぎ健太郎けんたろうさんが同志になってくれている」

「同時期に売られた二人もか! 無事なんだな?」

「まあね。ま、仲間になる件については追々(おいおい)考えてくれれば良い。まずは戦争をどうにかしなければならないし、攻めて来た側の人間である5人は、今は捕虜だし」

「そ、そうだ。あれだけの兵士の数、このロークト王国に勝ち目は無い。捕虜交換とか、そもそも助け出される可能性も―――」


 パンパン、と手を叩いて席を立つ。


「希望を語るのを咎めるつもりはない。けど、一応捕虜として分別の付いた行動をお勧めする。下手に逃げようとしたら、見張りの兵士に殺されるだろうし」


 ゴクリと、誰かの唾を飲み込む音がした。


「じゃ、オレは用事があるから失礼する」


 見張りの兵士に労いの言葉を掛け、捕虜について任せる旨と、明日の朝にまた寄ることを伝えた。

 オレと入れ替わりに、指揮官のボーマン隊長が来て、「捕虜たちと話をしても構わんか?」と聞いて来たので、「極力乱暴をしなければ、どうぞ」と返しておいた。

 皇国側の情報が欲しいんだろうな。絶望的な戦力差でも、淡々と業務をこなす姿勢に尊敬の念を覚える。

 オレの方も今日一日で色々あり、整理したいのでテントの中へと入って行く。


「『我が心ここに在らず。ならば我が身もここに在らず。teleport【瞬間移動】』」


 いつものように、7号店からウェントの屋敷へと瞬間移動した。




 遅めの昼食を平らげながら、戒・草薙さんの二人と情報共有をする。


「おっ、マヨネーズ作ったんだ! やっぱりサンドウィッチにはマヨが無いとねっ」

「酢を多めにしてるので、大丈夫だとは思うんですが……」

「何が?」

「……いえ、何でも。知らないなら、どうかそのままで」


 戒が、「あれ? 卵、生? 大丈夫?」とか言ってるけど気にしない。美味い。


「三浦さん?は仕方が無かったですね。ミツルを殺そうとしたのでしたら」

「新たに拉致された人たちですか。酷いですねぇ」


 そう言えば、没収した刀もどき、良く見てなかったな。『アイテムボックス』から取り出して観察してみる。


「やっぱり刃文が無いな」

「それ以外にも、先っちょが何か違和感ありますね」

「鍔も大き過ぎるような」


 しばらく観察した結果、結論を下す。


似非えせ日本刀」

「紛い物」

「異世界の鍛冶屋が刀を再現しようとしたけど微妙に失敗してる件」


 オレたちの中で共通見解が出来た。






時間魔法「使う必要が無かったので出番が無かった。謝罪と賠償を要求する!」


サルモネラ菌「自家製のマヨネーズを作る際、酢の配合を少なくしたり、1日以上の時間をおいてしまうと、ワイの危険度アップやで」



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