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嵌められて異世界  作者: 池沼鯰
第三章:蹂躙
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025 女子高生と薙刀


ギルドのランクアップの目安を少し変更しました。

その影響で、「007 神の迷宮」の後書きを修正。(魔石10個→100個など)


次いで、「019 メイドと戦争」で若干の修正を行いました。


修正前:46階~49階の魔石を50個ほど

修正後:46階~49階の魔石を60個ほど


それに伴い、「019」~「024」で所持現金が+452万円に。

影響は無いです。




 ベラスティア皇国の攻勢に、間に合わなかったかも知れないことにショックを受け、足が停まってしまった。

 少し悠長にし過ぎたか。だが、対策を怠って死ぬ危険度を上げるのも愚策だ。

 いや、まだ攻めて来たと確定した訳じゃない。逃げて来る人から情報を聞き出すべきだ。再び脚に力を入れ、軽く走り始める。モギュの街から出て来た人へ接触し、情報を聞き出す為だ。

 平野で視界内と言うことは、地平線の関係上遠くても4km―――ミドリから聞いた限りじゃ地球よりこの星は若干小さかったか、まあ誤差だ―――の為、数分で近くに到着。残り50メートルと言ったところで速度を落とし、話し掛ける準備をする。

 20メートル、こちらをいぶかし気に見て来る。10メートル、大分警戒してる。5メートル、歩みが遅くなった。


「スマン。旅の者なんだが。……モギュの街の方で、何があったか知ってるか?」


 先頭の男が、目を細めて街と煙をチラ見し、答えて来る。


「……戦争だ。皇国の奴等が攻めて来やがった」


 嗚呼。最悪だ。オレが着く前に始まってしまった。


「もう、街は……占領されたのか? 火の手が上がっているみたいだが」

「いや、敵のほとんどは壁の外に陣を張り始めてる段階だって聞いた。敵の一部だけが先行して、攻撃を仕掛けて来たらしい。煙は……何か燃えてるんだろうよ」


 見れば、こちら側の街の門は開かれていて、人を吐き出し続けている。


「そうか。有り難う」


 大銀貨を1枚(2万円相当)、弾いて渡す。


「おい、ニイちゃん! どうする気だ!?」

「……める」


 オレの返答は、その男には聞こえない声量だったろう。だがそんなことはどうでも良い。今は一分一秒が惜しい。

 避難民を避ける為に道を少し外れつつ、街へと向かった。




 街の門はごった返している。この流れに逆らって中へ入るのはキツイ。

 壁を見ると、高さ5メートルほどしかない。脚力の200倍強化がまだ残っている今なら、飛び越えられそうだ。

 迷う時間が惜しい。即座に助走を付け、踏み込み、壁を飛び越えた。何人かがこちらを見て、唖然とした表情をしている。オリンピックで見た棒高跳びを、棒無しで実行してしまう感じだ。

 壁の厚さは3メートルも無く、一回足を付いた後、街の中へと落下して行く。怪我をしかねない高さだが、身体強化している為、着地も何ともない。

 周りを見回すと、人の流れの多い通りがあった。あれはさっき見た王都側の門へ続く道だろう。

 ハンターにしろ傭兵にしろ、武器を持って無いのは不自然かと思い、アイテムボックスからそこそこ頑丈な槍を取り出す。それを二・三度振るって具合を確かめ、街の中心へと向かった。




 ガラリとした1階のホール、窓口に職員がまばらながら存在していた。だが、傭兵やハンターは見掛けられない。


「ランクBの者だ。状況を聞きたい」


 ギルドカードを提示しながらの言葉に、職員の一人が手で追い払う仕草をする。


「タイミングが悪いわね。見たところ、旅人? そのままきびすを返して戻った方が良いわ」

「戦争は始まったばかりだろ? 軍で傭兵は雇ってないか?」

「そりゃ、さっき一応、募集は出たわよ? でも、そんなのに参加して、もし皇国の軍と戦ったら……殺されるわよ」


 今、言葉を選んだな。女なら凌辱されて……ってことだろう。


「ギルドはまだマシ。一応中立で、職員一同は『敵対しなければ』身の安全を保障されるわ。戦後の復興を迅速にするための、暗黙のルールね。でも、一般の傭兵やハンターは、市民と同じ。殺されることはほぼ無いものの、命以外は一切保障されない。例えロークト王国の依頼でも、皇国と敵対してしまったら命の保障は無いわ。辞めておきなさい」

「忠告有り難う。だが受けたい。軍の募集はどうなってる?」


 今度は深く長い溜息を吐いて、職員は「命を捨てるおバカさんね」と呟く。

 スマンな。生きて帰ったら酒でも奢ろう。


「募集は3種類。一つは前線の盾役。ボーマン隊長が指揮を執ってるわ。

 二つ目は後方支援。物資の運搬や治療、弓や遠距離魔法使いもこのくくりね。

 最後に遊撃。ボーマン隊長に参戦を伝えたら、割と適当にやって良いけど、死亡率が高い割に活躍が評価され難いからお勧めしないわ」

「よし。遊撃で」

「話聞いてたぁ!?」


 良いツッコミだ。


「遊撃で」

「……分かったわよ。はい、これが用紙。ここにサインして。……はい、確認の印を押すわ。……ハイ、これを門の近くに居るだろうボーマン隊長に渡して。失礼の無いようにね? 一応アレで、千人隊長なんだから。用紙は部下が受け取ると思うから、あとは好きにしなさい。……生きて帰って来なさいよ」


 最後の言葉は小さ過ぎて聞こえなかったが、多分問題ないだろう。礼を言って羊皮紙を受け取り、その場を後にした。






「なあ、もっと燃やして良いだろ? なあ? なあ!?」

「ダメだ」


 三浦みうら譲治じょうじの要求に、偵察の部隊長ウッドルスは無表情で却下した。

 魔法使いは、魔力が切れればただの御荷物だ。達人ともなれば下級魔法を数十発撃てる者も居るが、少なくとも今回の遠征に従軍はしていない。

 少し前に、壁の上で様子を窺っていた敵の士官に対し、【火矢】で脅しを掛けろと命令したところ、三浦は【火球】を放ったのだ。

 余波で怪我を負わせられたようだが、勝手な行動の為、三浦への評価は却って低くなっている。

 【火球】の本体は壁を越え、何かを燃やしていたようで煙が昇っていた。しかし煙の量が増える気配はなく、延焼はしていないようだった。

 モギュナクト・オスに駐在するロークト王国軍は2千前後。壁も低く、ベラスティア皇国の先鋒5万が到着すれば、呆気なく落とせそうである。


「ある程度一般市民の避難が済んでからの攻撃になる。夕暮れまでには仮布陣が終わるだろうから、本番は明日以降だ。今日は、壁の上に出て来た間抜けに弓矢で応射するだけだ」


 部隊長の言葉に、つまらなそうな表情をする三浦。弓を持つ七尾ななおじんは、彼に冷ややかな視線を向けていた。




 モギュの街の西門を固く閉ざし、簡易のバリケードを作らせる指示を出すボーマン隊長。

 街の中心からミツルが歩いて門へ近づくと、それを兵士が咎めた。


「貴様、傭兵か! ここは戦場だ。用無くば立ち去れ!」


 キョロキョロと周りを見回し、やや上等な格好をしているボーマン隊長を見てあたりを付けるミツル。


「アンタがボーマン隊長か? 遊撃の募集を受けて来た。これが用紙だ」


 兵士が戸惑う。皇国の兵士の数は多い。勝ち目なんてない。なのに、この傭兵らしき人物は、わざわざ死にに来たのかと驚愕していた。

 勿論、彼ら兵士たちはその勝ち目の無い戦いに駆り出されているのだが、普段よりこの国のろくんでいるので、ある程度覚悟があるのが当然なのだ。

 若い兵士だと、その辺りの考えは熟成されておらず、弱気な性格の者なら逃げ腰だったりもする。だが、過半数の兵士は覚悟が完了しており、それだけ大勢の緊張した空気は軍全体の雰囲気を支配する。結果的に、皆で玉砕すら厭わないムードが出来上がっていた。


「コルストイ、受け取ってやれ」


 ボーマン隊長はミツルの言葉を聞き取り、対処をした。戦場で予想外の事態など、日常茶飯事だ。

 補佐官のコルストイがミツルの持つ用紙を受け取ると、「間違いありません。遊撃でとなってます!」と大声で伝え、それを懐へと仕舞った。


「遊撃か。今は壁の上に立つと危険だぞ。下手に様子を見ようとしたりするなよ?」


 一応遊撃である以上、独断である程度動いても構わない。だが上位の指揮官にそう言われて、完全に無視する者はそう居ない。

 ミツルは近くに留まっているコルストイへと尋ねた。


「門の近くに、敵はどれくらいいるんだ?」

「……約2,000。弓兵は50、魔法使いは5と言ったところだ」


 ミツルに情報を渡しても構わないかどうか一瞬悩み、問題ないと判断してあっさりと教える。

 それを聞いて暫く考えていたミツルは、「行けるか」と呟いた。




 ここに来るまでに効果時間が過ぎてしまった【肉体強化】の魔法を、30分限定で掛け直す。脚は200倍、他は13倍程度。

 続いて【結界】の魔法を、やはり30分に延長して最高強度で掛けた。この魔法は効果時間の延長の場合、時間分の乗算ではなく、延長時間の長さに応じた加算になるから、大した負荷にはならない……ってのはオレだから言えるのか。延長分の魔力量で【火矢】が普通に一発撃てる。

 そのまま僅かな助走で跳躍し、壁の上へとのぼる。街の中からなら、少し離れた階段状になっている所を登れば壁の上へ行ける構造になっているが、今のオレには必要ない。

 ベラスティア皇国方面となる西側を見ると、門から30メートルほどのところに弓兵の集団が、50メートル前後に1,000を超える兵士の軍団がいた。そこから大分離れ、1kmくらい先に、数万の兵士が集結中なのが確認出来た。半分くらいは野営の準備をしているようだ。


「撃てェ!」


 声がし、何かが飛んで来る風切り音とともに、結界に矢が当たって少しずつ耐久度を削って行くのが分かる。乾いた音を立てて、足元へと落ちて行く矢が嵩んで行く。耐久度の減り具合から、【火矢】の魔法よりやや弱い程度の攻撃だと判断出来た。結界の耐久度は、気合いを入れて現状の最大で発動したので、矢の直撃を1万回くらい防ぎそうである。


「結界だと!? 怯むな! 限界はある。撃ち続けろォ!」

「あれ……黒髪? もしかして、地球人……いや、日本人か? 『おぉ~~~い! 日本人なら返事してくれー!』」


 ん? 日本語で何やら叫んでいる弓兵が……って、あれってもしかして、オレと同時に攫われて来た人のうちの、一人じゃないか!? 名前は……さすがに忘れた。


「『日本人だ! 何か用か!』」

「『ここは戦場だ! 避難してくれ!』」


 ……何を言ってるんだ? お前も攻めて来てる奴等の一人だろ。


「『ベラスティアの侵略に抵抗するつもりだ! 攻めて来るなら殺す!』」


 殺気を出しながら、叫び返す。言葉のやり取りをしてる間も、矢は飛んで来る。さすがに対話中の彼は、弓を持っていても射掛けて来てないが。


「『……同郷のよしみで、殺さないよう掛け合う。投降してくれ!』」


 首輪を見る限り、まだ奴隷のままだろう。そんな権限があるのか疑問だ。良くて身包み剥いでポイ捨て、悪けりゃ殺処分だろうに。


「『そっちこそ投降してくれ! 今なら殺さないでおく!』」

「『この戦力差だぞ!? 見て分からないのか!?』」


 それっきり、その弓を持っていた日本人は黙ってしまった。


「ええい、まだ結界を抜けんのか! ……ジョージ! ジョージ・ミウラ! アレに魔法を放て! 他の魔法兵も、奴に撃て!」

「へっへっへ、ようやく出番か。良いんだな? ……『我がかいなに宿りしいにしえの獄炎よ、我が前に立ち塞がりし愚か者に、死の抱擁を与えよ。FireBall【火球】』!」


 その場の指揮官らしき男の指示を受け、別の日本人らしき輩と魔法使いたちが、オレに魔法を放って来た。

 かなりの熱量を持つ火のような塊。それが速球並の速さで飛んで来る。

 だが、結界に呆気無く弾かれ、オレに何の痛痒も与えはしなかった。他の【火矢】と【石弾】も、言わずもがなである。


「ば、馬鹿な!? あれほどの矢を防いでいたのに、【火球】すら防ぎ切って余裕があるだと!?」

「私の結界魔法より上? 何者なの、あの人……いえ、あの日本人……」


 弓兵と魔法使いで固まっている集団を見ると、二人ほど黒髪の女性が居るのが分かった。


「……芝浦しばうらさん? いや、違うっぽいな」


 とりあえず、攻撃して来た【火球】使いと、その指示を出した奴は始末しておこう。身内? 日本人? 同郷の地球人? はっ、そんな殊勝な博愛精神は、とっくの昔に投げ捨てたね。

 例えば、殺す気でマシンガンを撃って来た相手に、慈悲を掛ける必要があるだろうか。(反語)いや無い。

 よしんば慈悲を掛けたとして、その相手がまた周囲に殺意を向け、殺戮に走らないとも限らない。責任を持てないなら、極悪犯罪者に情けを掛けるな、と言うことだ。

 ぶっちゃけ、悲しいけどこれ、戦争なんだよね。


(『StoneMortar【石弾臼砲(きゅうほう)】』×(かける)5)


 <臨界突破>で技能をブーストし(詳細は長いので省略)、無詠唱で75%の威力で以って、並列発動で5発の魔法を発動させた。

 【巨岩大砲】だと多分、他の日本人も巻き込むからなぁ。

 それでも、ボーリングの玉の2倍ほどの重さの石が、新幹線より速く飛んで行く。直撃しなくとも、地面に当たった石弾が砕けて飛び散るので、余波で骨折くらいはする。

 魔法を放った後、オレは槍を片手に壁から飛び降り、着弾点へ近づいていった。20人ほどの兵士が死んでおり、生き残りは近づくオレから離れるように後退する。

 指揮官らしき人物は、腹に石弾を喰らって真っ二つになっており、即死していた。【火球】使いの日本人らしき人物は、逃げようとしたところに右肩に当たったらしく、余波で顔面とかがグチャグチャだった。肩が吹っ飛んでいて、どう見ても致命傷。今、かろうじて生きていたとしても、数分以内に出血多量あたりで死ぬだろう。

 他にも、怪我を負ったものの生きている奴らは十人以上居るみたいだが、足が無事な奴以外は息を潜めている。瀕死の奴はお構いなく呻いているが。有り体に言って、地獄絵図だ。


「ひ、人殺し!」


 おっと。日本人らしきお嬢ちゃんが、オレを批判して来た。


紗良さら、下がって。危ないわ」


 もう一人の日本人女性が、そのお嬢ちゃんを庇うように動く。百合百合しいのは嫌いじゃないぞぉ! むしろ大好物です。


「あー、見た覚えが無いな。と言うか明らかに芝浦さんじゃないな。誰?」


 接近戦の心得がありそうな、ポニーテールの髪型の女性は、薙刀みたいな武器を構えて警戒している。


「私は紫苑寺しおんじ花蓮かれん。貴方は?」

「おっと失礼、御嬢さん(フロイライン)。オレは高坂こうさかミツル。半年以上前に、皇国に奴隷にされ、売られた人間さ」





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