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嵌められて異世界  作者: 池沼鯰
第三章:蹂躙
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024 開戦の狼煙


 大金が手に入ったので、念願の草薙さんをゲットしたゾ!

 オレとは違ったタイプの『アイテムボックス』持ちの草薙さんを、ボルボー商会のメントモリ老から大金貨750枚、日本円換算で15億円ほどで譲って貰って、奴隷から解放したのだ。元値の約2倍である。がめつい。遅延箱スロウボックスの利益の大部分が吹っ飛んだ形だ。

 遅延箱が予想よりも大幅に売れていたのだけれど、スエズエ共和国内で使うのは数個だけみたいだ。後は西と東の大陸の各国に転売する目的での確保らしからむ。あのボッタクリ価格に、更に上乗せするのか? しかも毎回発動に結構な魔石が必要になるんだけど。……それでも、10日以上も時を止めたみたい(遅くしてるだけ)に保存出来るのは凄いって、販売経路担当のバルナ氏がべた褒めしていたと、魔道具技師のモルティナさん経由で聞いた。

 ちなみに草薙さんの、地球への帰還や知識の流布を抑制する呪詛については、既に解呪してある。地球の料理知識が解禁されたことに、草薙さんは大層喜んでくれた。


「ベラスティア皇国への妨害は、ロークト王国側での参戦にしようと思う」


 戒と草薙さんの前でオレの考えを言ってみる。


「現状それが一番効果的だと思います」


 戦争に間接的にでも干渉するほどの金銭は、現在無いからな。草薙さんを奪還していなければ、小細工程度は出来そうな額があったけれど。


「え? いや、私に意見を求められても? ただの料理人ですし」

「料理が趣味みたいなので料理の禁止はしませんけど、今の所、地球の知識を制限なく揮える貴重な一人なんですから、出来るだけ助けて貰えると嬉しいです。とりあえず、戒……駒沢こまざわかいの助手と言う形でお願いします」

「え、ええ、まあ。分かりました」


 草薙さんは、放っておくと四六時中料理してそうだ。夕食ディナーはともかく、あとは現在雇っている料理長のケイスに任せて貰おう。他人の仕事を趣味で奪うのは、よろしくない。

 となると、料理に関することを主軸にして貰うのが良さそうかな。加速の魔法で味噌や醤油の醸造なんか、夢が広がる。


「まずは、ファフレーン王国と接する国境からロークト王国へ入国。ベラスティア皇国に近い街へ移動し、傭兵としての参戦を目論む。と言ったところかな。ミドリ先生!」

「ん? なんじゃ?」


 オレのベルトの上で返事をする、鉄で出来たリング状の依り代。草薙さんは慣れてない為か、ビクッと反応していた。


「戦争……この世界の戦争に有効な技能とかあったら、習得しておきたいんだけど」


 ミドリは伸縮して器用に勢いを付けて、備え付けの机へとジャンプした。金属なんだから大きな音がしそうだが、最低限のコツンとした着地音以外はさせず、割と静かにトグロを巻いた。


「あー、主に地上戦と言うことか。銃器は無し、魔法有り、と」

「魔法が銃器や大砲の代わりをしそうですね」


 戒の指摘に、ミドリは頷く。


「間違ってはおらん。弓矢も補助で使われるじゃろう。攻撃魔法は、この世界の平均的な魔力保持量では数発が限度のはずだしの」

「弓矢かぁ。流れ矢とか怖いな」

「ふむ。そう言ったのは結界魔法を身に着けて使っておけば、危険が減るな」


 結界……! なんか、心躍るワードが出て来た。ワクワクして来たゾ! 結界! 結界!


「他には、格下相手や捕虜を捕まえたい時なんぞに、雷魔法、電気魔法のようなのが便利か」

「おおっ、そう言うの欲しかったかも」


 電撃でショックを与え、その間に捕縛したり何なり。色々と捗りそうだ。グヘヘヘ。


「そう言えば、風魔法で雷を扱う作品もありますよねぇ」

「……まあ、雷雲を風魔法での天候操作で作れるようになれば、この世界のも疑似的に真似は出来る。だが、人為的に雷雲を作るんじゃぞ? ミツルの馬鹿魔力ならともかく、他のヤツに出来ると思うか?」

「無理ですね」


 戒の疑問に答えるミドリ、マジ先生。


「それじゃ、結界魔法と雷魔法をある程度習得してから、ロークト王国へ向かうこととする」


 オレの基本方針が決まった。




「一番初歩的な雷魔法は、【感電】じゃな。極めて低い電流を設定、基本消費魔力量内で電圧を高めて発動させてみるが良い」


 教えて貰った情報で、雷魔法を発動してみる。


「『痺れろ。ElectricShock【感電】』!」


 バチッと、静電気のようなのが指の先1cmほどに発生した。


「それを自分に当てれば、ちょっとピリッとするぞ」


 本当に静電気並なんだな。危険は無さそうなのでやってみると、ピリッとビリッとする。これは、癖になるかも。あぁん。


「気持ち悪い声を出すでない。それの10倍ほどの消費魔力で、電流は……もうちょっと下げた方が良いな。で、電圧を上げれば、いわゆるスタンガンを使用したような効果が得られる」


 ほー。さすがにそれは、自分に試す気はない。


「服装や体質、鍛え方で実効果は左右されるが、基本今言った10倍の奴で倒れなかったら、20倍、30倍と段階的に上げて行くのが、生け捕りの際のコツじゃ。持続時間は5倍設定くらいがお勧めになる」


 ふむふむ。


「あれ? 他の魔法だと、基本持続時間1分ってのが多いけど」

「電気系は特別じゃ。他の魔法は原子や分子に働き掛けるが、電気は電子に働き掛ける魔法で、基本がかなり違う。それと注意すべきは、電撃は避け辛い点じゃ。事前に避雷針でも用意しておかないと、防ぎ難い面がある」


 うへー。避雷針か。構造は単純でも良いだろうから、幾つか作ってアイテムボックスに入れておくか。これから戦う相手が使わないって決まってる訳じゃないし。

 練習を兼ねて、自分に弱い電気を流す。しばらくして飽きて、戒や草薙さんに試してみたら、草薙さんが肩こりに良いって嬉しがってた。うん、30歳過ぎるとそう言うの出て来るんだね。心の中で涙を流しながら、満足するまでビリビリしてあげた。




「結界! 結界魔法はどうすんべ! あれか、エーティーなフィールドをイメージすれば良いのか!?」


 有名過ぎるあれは、最早常識に近い。


「初級のは盾みたいな形状じゃな。少し練度が上がると、全方位型の結界が作れる」


 ほーほほー。

 文言は簡潔に。盾ならこんな感じかな?


「『我を守れ。shield【盾】』」


 ヴィン!

 おおっ、格好良い(かっちょえー)

 効果範囲は1メートル四方ってところか。半透明のバリアみたいなのが出て来た。

 もうこれは、嬉し過ぎて多重発動で練習しまくりだ!


「何!? 3枚も抜いただと!? だがまだ5枚ある! クックック」


 そんな風にごっこ遊びをして悦に浸っていたら、戒が急に声を掛けて来た。


「何やってるんですか、ミツル。14歳くらいに見えますよ」


 うわぁああああ! ちゅ、中二病ちゃうし! オレ、ただ結界魔法の練習してただけやし……!

 急に斜め後ろから声を掛けて来るのは反則やでぇ。心臓に悪い。


「はぁ。ミドリとの話し声が聞こえたので、ノックをせずに入ってしまったのは悪かったですから、機嫌を直して下さい」

「戒。この件はどうか内密に……」

「分かってますって」


 並列発動しまくったのが効いたのか、割とすぐに結界魔法の練度が上がったのが分かった。

 <臨界突破>を結界魔法に使ってから、【盾】とほぼ同じ文言で【結界】を発動させてみると、対象を覆うような丸いバリアが発生した。人一人を覆うには、少し余計に魔力量が必要そうだ。

 時間を作って街の壁の外で実験した結果、【火矢】なら低消費でも弾けるが、【石槍】や【火球】だとある程度魔力量を込めて発動したもので無いと防げなかった。

 驚いたのは、かなりの魔力量を【結界】に込めると、ドラゴンにも有効打を与える【巨岩大砲】すら防げることだった。ただ、2,3回当てると壊れるので、攻撃魔法を並列発動して多重に負荷を掛ければ破れるだろう。


「……って結果になったけど、こんなものなの?」

「【火矢】は質量が小さい魔法じゃから、【結界】で防ぎ易いのは確かじゃ。

 同じくらいの熟練度の魔法使い同士が戦った場合、結界魔法の使い手の方が防げて有利と言うのはある。結界魔法の方が魔力量の消耗も若干少ないから、総じて結界魔法は防御に向いている。しかし攻撃側が数人集まれば覆せる程度でもある。

 ま、ミツルの場合はその馬鹿魔力量を以って手数で押せば、大抵勝てるじゃろ」

「オレが全力で結界魔法を使ったら?」

「……魔法拡大があるじゃろ? それも<臨界突破>して最大まで使ったら……うん、かなーり強いぞ。ただ、効果時間があるのは注意せよ。気を抜きたい時に薄めに中程度の時間張るか、集中攻撃が来ると分かっている時に厚めに短時間張る使い方が良い」


 あいあいさー。




 バイコーンの肉の熟成が良い具合になって来たので、ロークト王国へお出掛けする前に処分することにした。

 だってぶっちゃけ、普通の食肉用のお肉の方が料理し慣れてるのもあって、美味しい料理になって出て来るんだもん。

 草薙さんも最初は興味があったみたいでチャレンジしてたけど、「鹿肉の方が面白い」「熊肉よりマシかな……?」との評価で700kgほど残ってる。美味しいは正義とは、つまり美味しくないは悪なのだ。(暴論)

 まずは600kgをホーリーベルの孤児院へ持って行くことにした。温度魔法で氷点下ギリギリにしておく。そのうち半分は、箱に入れて【遅延】を使って22日の猶予を持たせた。箱の上面にその旨を記載っと。

 以前も遭遇した、神父さんっぽい孤児院の経営関係者らしき人と少し話をして、頃合いを見て肉を押し付ける。


「実は、うちだけでは食べ切れないほどのバイコーンの肉が手に入ってしまいまして……」

「ほぉ! 肉、ですかぁ。羨ましい。子どもたちの数も多い為、なかなか満足するまで肉を食べさせたりは出来ないのですよ」

「では、処分をお願いしても? 不味くは無いけれど美味しくも無くて、困っているんですよ」

「ほーほっほ。幾らでもお任せ下さい! どれほど大量であっても、必ずや……」


 食糧庫に入って、アイテムボックスから箱に入った状態の肉300kgを、ドスンと取り出す。


「いやぁ、助かります」

「……多いですね」


 もう一個オマケにドン! 時間魔法を掛けた方の肉300kgも取り出す。


「こっちは【遅延】を掛けてあるので、開けなければ22日ほど持ちます。それまでに開封して、処分に取り掛かって下さい。宜しいですね?」

「アッ、ハイ」


 料理を担当しているらしい女性が様子を見に来て、嬉しい悲鳴をあげていたのを横目に、オレは失礼させてもらった。

 後から聞いた話では、孤児院の子どもたちは心行くまで肉を貪ったらしい。後日、オレのことを『肉大ミニスターオブミート』と呼んで崇めていると、噂で聞くことになる。




 薬で有名なストレンジア家にも戒と共に訪問したが、応接室のテーブルに乗せられた100kgの肉塊に、「多過ぎる」と苦言をいただいた。


「御近所の方々に、御裾分けされたらいかがですか?」


 との戒の助言に、「それなら……」と受け取って貰えた。まともに消費しようとすると、三食ステーキとかになるからな。中学生男子でも三日続いたらギブアップするだろう。

 戒は孫のローニちゃんと暫く遊んで行くらしいので、一言断ってオレは先に帰った。

 ……大丈夫だよな? ロリコンは不治の病と聞くけど、症状進行してないだろうな?




 5月14日、ファフレーン王国のほぼ真ん中に位置するレーンから、北北西へと逆行。ロークト王国との国境沿いに近い宿場町まで、風になって走った。一応このラオの町にもテント4号店を設置しておく。

 国境の関所は、友好国同士なのもあり、チェックはほとんど無かった。肝心の荷物はほとんど『アイテムボックス』内だしね。

 ロークト王国内に入り、国境から数km離れた所にある町に立ち寄る。ここにも5号店となるテントを張った。あくまで念の為だ。

 身体強化でかなりの魔力を使っていたので、その日はそこまでとした。無論、ウェントの屋敷に戻ってしっかりと休む。寝るまでの2時間の鍛錬は、大分習慣付いてきた。日々の積み重ねが大事だ。


 翌15日、海に近い王都ゴア・ロクトまで走り抜き、6号店を立てて情報収集に尽力する。

 ベラスティア皇国からロークト王国への宣戦布告は、まだ行われていないようだ。だが、皇国が国境線近くで軍事演習を行っていて、若干の緊張状態になっているとの情報も聞けた。

 怪し過ぎる。隠す気無いだろ?

 情報の伝達速度を考えると、既に国境を侵されていても不思議では無い。


 更に翌日16日、国境にほど近いモギュナクト・オスと言う街へ向かうことにする。北方が海に面しており、その街から南に行くに連れて標高が高くなり、大軍が通るのには適していない地形となる。噂の軍事演習も、このモギュ(略)の街の近くで行われていると聞く。

 王都からの距離は200km無いっぽいので、身体強化を2時間に留めておく。有事に備え、最大値の半分以上の魔力量を確保。

 分厚い雲が空に浮かんでいる中、西へと駆ける。もうすぐ街が見えて来るだろうと言うところで、行く先に煙が出ているのを確認。目を凝らすと、普通の人々がかなりの人数、こちらへ向かって歩いて来ていた。


「間に合わなかったか!?」


 強い潮風にあおられ、僅かに足を止めてしまった。






高坂こうさかミツル 年齢:25

精神11 魔力810 魔力量72,171

雷魔法2(New!)、結界魔法2(New!)


所持現金:5億4717万円相当



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