第四話・勇者単騎にて要塞を撃破し魔物算を乱して逃げ出す
【第四話・勇者単騎にて要塞を撃破し魔物算を乱して逃げ出す】
さて…早くもボロがでてしまったメロス。サロメはそのメロスを疑い始めてしまいます。
しかし、メロスはそれに気づいてもいない。サロメの信用を取り戻すことができましょうか?
それとは裏腹に、一行が向かった先には、あわや道を間違えたのか?
魔王軍の前線であります砦が、うっそうとした森の中に構えられておりました。
【魔王軍A砦】
ここは、城に近い魔王軍の拠点…。
最前線だけあって、大トロルが守備をまかされておりました。
大トロルは、巨人で怪力。魔王直属の将軍。
魔王の信頼も厚くここに就任した際、人間軍の500人の討伐隊と対峙し、数分で全てを追い返したのです。
大木などやすやすと引き抜き振り回し、その拳を振り下ろせば城壁など崩すなどいともたやすいことです。
しかも、配下にはたくさんの力自慢の鬼族が1000匹ほどおり、得物のこん棒や金棒をしごいて、大将の号令がかかるのを今か今かと待っておりました。
「おいおい、参謀!」
「はいはい。私、オークのチビクロ参謀。なんでしょう??」
「人間が入って来れないように、トラップは仕掛けているんだろうな?」
「はい…それはもう…。」
「では、視察に行こう。」
「了解人間ベム。」
闇に隠れて生きる~♪などと指を鳴らし、口ずさみながら、陽気に視察する二人。
「ものものしいな。」
見上げた先には、何本もの杭がつってありました。
「入って来たら、これで、一網打尽ですぜ。」
「どうやって、一網打尽にする?」
「ぬかりはありません。この、リモコンのボタン一つです。」
「ほう。たくさんあるなぁ。」
「まぁ、その辺はこのチビクロ参謀におまかせあれ!」
「ふふ…頼もしい…。」
そんなことは知らない、メロスご一行。砦近くの森に差し掛かった時…。
「あ…サロメ、ちょっとここで待ってて??」
「え?勇者さま…いずこへ…??」
「ちょいと…はばかりさね。」
「あ、トイレですね。わかりました。」
メロス、サロメに恥ずかしい音が聞こえるといかんと、なるたけ奥の方へ。
そうこうしている間に、砦に近づいてしまうメロス。
「ぬむ?」
「どういたしました?大将。」
「くんくん…。人間の匂いがする…。遠目がねを持って参れ!」
急ぎ、望遠鏡のようなものを持ってくる魔物。
覗き見る大トロル。
「ん?あれは…。」
「どうでした?いないでしょ?人間なんて…。こちらを恐れて、城にこもってますよ。怖い怖いと思うから、いるはずのない人間がいるとかと思うんです。疑心暗鬼ですよ。疑う心、暗やみに鬼を見るというやつです。」
「いた!」
「えーー!!?」
「侵入して来たらすかさず、トラップ発動だ!ワシは、「霹靂の杖」を取ってくる。」
「了解です!」
自分の部屋に戻り、「霹靂の杖」というものを取って戻ってくる大トロル。
「どうだ?情勢は。何人だ?」
「はて…おりませんが…。」
「そんなはずはない。」
大トロルが見ると、やはりいるメロス。大胆にも、砦の塀に向かって用を足している。
「ほら、あそこ。」
「え?どこです?」
「ほら、この下。」
「どこどこ?」
「この下だってば!」
ベランダから身を乗り出して、指し示す大トロル。
「あ、そんなに身を乗り出したら…その手すり腐ってるんです。」
「…え…??」
大トロルの巨体に耐えられず、音を立てて手すりが瓦解してゆきます…。
大トロルが落ちてゆく…巨体で砦を壊しながら。
用を足し終わったメロス。
そこに、大トロルが落下!
ドドーーン!!!というともに、大トロルが地面に衝突!
落下による衝撃荷重を計算してみましょう…。
大トロルが1000kgだったとします。
27m上のベランダから落ちたとしましょう。
つまり、…こうなって…こうなって…だから…その…
やっぱり、30mにしましょう。
その方が、計算しやすいし。
だから、1000㎏なわけでしょ?
それに30mをこうして…。うん。
うん。
うーーーん…。
大トロルは絶命しました。
(え?)
高らかに鳴り響くレベルアップのファンファーレ!
メロスのレベルが急上昇に上がったのです!
さすがボス戦!
メロスは「霹靂の杖」を手に入れた!!
音を聞きつけて、サロメがやってきました。
「勇者さま!いかがなされました…え…?この巨大な魔物を…勇者様…お一人で…。」
「お、おう…。」
「すごいじゃないですか!やっぱり、勇者様は勇者だったんですね!」
「そ、そう…。」
砦の中。残った魔物達がその会話を聞いていました。
「なに?勇者だと!?大トロル様が、勇者にやられた!退け!退くのだ!」
蜘蛛の子を散らすように散開する魔物たち。
「すごい!勇者様!この砦をたったお一人で!…まさか…私を危険な目にあわせないために…。」
「…うーーーん…。」
「勇者様…。ありがとうございます!」
といって、抱き着いてくるサロメ。
メロスは思いました。
こりゃ気持ちいい。勘違いさせておくのもありだなぁ…とね。