第二十三話・夢か?幻か?勇者が勇者となり緋の外套を纏いて大団円!
【第二十三話・夢か?幻か?勇者が勇者となり緋の外套を纏いて大団円!】
メロスはサロメを抱えたまま、セリヌンティウスの前にたどり着きました。
「セリヌンティウス。オレを力いっぱい殴れ。オレは何度か…挫け…城にたどり着けないところだった。城も危険にさらした。オレはお前と抱擁する資格がない。殴れ。」
「イっすよ!」
セリヌンティウスはメロスの頬をグーで殴りました。
そして…
「メロス。オレも殴ってくれ。オレもほんのちょこっとだけお前を疑っちまった。殴ってくれなきゃオレも抱擁できねっス!」
「ドMか!」
そう言って、メロスもセリヌンティウスを殴りました。
二人は笑い合いながら抱きしめあって、そして泣きました。
ディオニス王が近づきます。
「メロスよ…。勇者よ…。どうして城を…人々を救った勇者を死刑になどできるか!余の負けだ。今まで心を悪魔に奪われていた。どうか、余も君たちの仲間に入れてくれ。」
メロスとセリヌンティウスはディオニスに手を伸ばし、三人は抱き合ったのです。
「王様万歳!国王陛下万歳!」
群衆から歓声が聞こえます。
ディオニスは、サロメの遺骸を指し
「この者は…。」
「オレの…仲間でした。魔王の唯一の被害者です…。」
「そうか…。」
ディオニスは深くため息をつきました。
「誰かある!もう一人の勇者のために国葬を開くのだ!」
ディオニスはポンとメロスの肩を叩きました。
「余の…せめてもの気持ちだ…。」
「…ありがとうございます…。」
メロスはサロメの遺骸を抱き上げました。
「メロスよ!」
メロスや他の人々もその声の方を見ました。
見ると、鎧をまとった女性と、下半身羊の男性が立っていました。
「女神アテナ様…。そして牧神パーン様…。」
ディオニスを筆頭に人々はその神々しい二人に跪きました。
「よくやりました。メロス。もう分ったでしょう。私は、女神アテナです。」
「羊たちに勇気とパワーを与えたのは、オイラ、牧神パーンだよ!」
「もはや、魔王が目を覚ますことはないでしょう。あなたは一振りの剣ももたず魔王を倒したものとして後世まで称えられましょう。」
「ホントによくやった。オイラも守護神として鼻が高いよ。」
しかし、メロスの言葉は深く沈んだままです。
「そんな栄光なんて…どうでもいいです…。」
「…なんですって?」
「サロメは…サロメを生き返られませんか?神であるお二人ならできるでしょう?勇者の仲間なら…生き返らせられるでしょう??」
メロスは懇願しました。
牧神パーンが口を開きます。
「…なにを夢みたいなこと言ってんだよ…人が生き返るわけないだろう?」
いや、現にアンタたち神様が俺たちの目の前に立ってるのが夢みたいなんだけど…。
人々はノドまで出掛かった言葉を空気を読んで飲み込みました。
「そうですね…。大魔王が死んでしまった今…生き返らせることは…。」
「できないんですか??」
アテナはコクリと頷きました。
「使命があればこそ生き返りは可能ですが…。もはや使命もなくなったので…。」
「そ、そんな…。」
その時、サロメの手がマントの外にこぼれました。
それを見た聖アテナは
「それは、赤い指輪ではありませんか?」
ディオニスも声を上げます。
「おお!赤い指輪!」
「なんですか?それは…これはただの装飾の指輪ですよ?」
ディオニスが言います。
「それは…我が王家に伝わる指輪なんだ。片方は魔物に奪われておったのだが…。これは対になっておってね…。」
ディオニスが自分の指にはめているものを外します。
「この指輪を合わせると赤い宝石がハートの形になるんだ。」
「はい…。」
ディオニスはメロスに指輪をはめてやります。
「愛し合う二人が指輪を合わせたとき、もう一人の思われ人は生き返りもう一度人生をやり直せる…。と言い伝えられている。」
「え??」
「やってごらんなさい。私も見るのは初めてです。」
メロスは、サロメの手を取り指輪を合わせてみました…。
二人の指輪の赤い宝石がハートの形になり、キラキラと赤い光を放ちます。
すると…
「………。」
「……う…。」
たちまちおこる民衆の大歓声!
抱き合う人々…。
「勇者様…ここは…?」
「城の中だよ。オレは魔王を倒して、罪を許されたんだ!」
「え?本当?勇者様!キャ!やだぁ!」
サロメは緋のマントを脱いでメロスに掛けました。
セリヌンティウスが
「メロス…。まっぱじゃん…。早くそのマントを着なよ。このカワイイ彼女は君の裸体をみんなに見られるのが恥ずかしーんだろ…。」
メロスは自分の体を見るとなるほど一糸も纏っておりません。
「そ、そっか…。」
勇者はひどく赤面しました。
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