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第二十一話・魔王の城攻めが開始され、メロスは高らかに口笛を吹く


【第二十一話・魔王まおう城攻しろぜめが開始かいしされ、メロスはたからかに口笛くちぶえく】



その頃、城では、牢からセリヌンティウスが引き出され十字架にかけられておりました。

国王ディオニスは一番いい席で見ようとウキウキしておりました。


「果たしてメロスは来るのかな?セリヌンティウスくん。」


「来るっすよ。絶対。はは!」


といって笑い飛ばしました。


そんな中、近衛兵の一人が声を上げます。


「そんな…まさか…。」


ディオニス王はメロスが来たのかと思い、振り返りざま聞きます。


「どうした?」


その兵の目の先に巨大な魔物が山を下ってくる…。


「ま、魔王だ…魔王が攻めてきた!皆の者!武器を取れ!!」


一気に慌ただしくなる城の中。

ワーキャワーキャと女子供が逃げ惑う姿が少々ウザい。

(え?)


跳ね橋を上げて、侵入できないようにします。

兵士のみならず、町人たちも武器を取り、城壁に上って弓を構えるもの。

城内で剣を、槍を構えるもの。

戦闘ムードが漂います。


城の周りは堀に覆われておりますが、先手の巨人が振り下ろしたこん棒が城壁を崩します。

そこから小さい悪魔が入り込み、跳ね橋を降ろそうとしますが、王軍の精強な兵士がこれを討ちます。


山の上から巨大なドラゴンが跳ね橋に炎を吐き続け、燃やしてしまおうとします。

馬上の魔王ルキフェゴールはフフフと笑います。


どうなってしまう?城?



その頃、山の上では…


メロスは泣きながら


「あぁ…サロメ…サロメェ…。」


「勇者…さ…ま…。」


「オレは勇者じゃない!勇者じゃないんだ!オレは呪文も使えないし、剣も握れない…。」


サロメは何も言わず、ウンウンと頷きます。


「キミとオレの子供が…勇者だったんだよ…。ああ…。」


サロメはまた頷きましたが、その力は小さくなります。


「俺なんかについてきてくれてありがとう…サロメ…ありがとう…。」


メロスが握るサロメの手が力を失っていくことを感じます。


「ああ、ダメだ…!サロメ!死んじゃァダメだ!…そうだ!君の回復呪文を!」


サロメは小さく横に首を振りました。

フォラスに呪文を封じられたままだったからです。


「勇者…さ…ま…。」


「なんだ??」


「わたし…神託所で勇者様と…アテナ様が話しているのを聞いてました…。」


「え?あの鎧女…アテナ様だったの??」


「そうです…。勇者さまはまだ勇気がないだけで勇者になれないと…。」


「うん…そんなことを言っていたけど…。」


「勇気を持ってください…。魔王を倒すと…。」


「そ、そんな…無理だよ…俺には力もないし、魔法も使えない…。ただの羊飼いなんだから…。」


「…そうです…。でも…今までの戦闘でレベルも上がったはずです…。羊飼いでも…羊飼いの技が使えるのでは…」


「羊飼いの…技…??」


「勇者様…。どうか…勇気をもって…。」


サロメはゲプと大きく血を吐き出しました。


「あなたこそ…まことの勇者です…。」


その一言を言うと、サロメは息絶えました。


メロスは何度もサロメの名を呼びましたが、その目は開かれることはありませんでした。


メロスは、サロメの体を聖王のマントで巻き、涙を流しながら抱えました。


そして、城の方を見ました。


城は大量の魔物に囲まれ落城寸前。

メロスは、大きく息を吸い込み口に親指と人差し指を突っ込みました。


ピーーーーーーーーーイ!!!


なんと凄まじい口笛の音でしょう。

まるでこの国中に響き渡るような…


空が透き通るような音…。

高く、細く、長く…。


魔王軍も攻撃を止め、その音の方を見ました。


…が…何が起こるわけでもありません…。


しかし…


「な?なんだ??」


ルキフェゴールはひとりごちました。


ドドドドドドと地響きが聞こえます。



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