第二話・愛国の憂士哭唱せむが大王激怒し其の亡骸を求む
【第二話・愛国の憂士哭唱せむが大王激怒し其の亡骸を求む】
平然と人を殺傷せしむディオニス王に向かい、激怒したメロス。
またもや王宮に乗り込み、今度こそはと熱い思いのたけをぶつけに参ります…。
「ヘイ!王様!今日という今日は許さないぜ!」
「また、オマエか…。何?」
「さっき、オレの商売のことで町人風情に蔑まれました。」
「そーなんだ。なんの商売やってんの?」
「アレですよ…朝から夕方まで、羊を追い回す仕事?」
「あー…子供でもできそうな…。」
「なんでそーゆーこというのかなー。アレだって大変なんですよ。」
「まーそーだろーね。」
「オレぐらいの羊飼いになると、「どとうのひつじ」を使えるスキルがありますよ!」
「あっそう。使ってみて。」
「…いや、今はMPがないんですけどね…。」
「じゃぁ、今日は宿屋に泊まってもらって、明日披露してもらおうかな??」
「いや、いま、そーゆー話してるんじゃないでしょ?大事な話をしてるのに、チャカさないでください!」
「いや、ワシはなんとも…。」
「王様は人殺しだった!…ちゃんと聞いてきましたよ…。これを曲に乗せて、歌いたいと思います。」
「え?歌うの?」
「はい。」
宮殿に運び込まれてくるドラム。
マイクを持つ、メロス。
ギターのシモン、ベースのエルメス、ドラムはセリヌンティウス。
照明が七色に彼らを照らします。
メロスは王様に向かって言いました。
「今日はね~、このシラクスの市場に来ましたけど…やっぱり、うわさどおり大きいですね。」ダダダダン(ドラム音)
「なに?MCから入んの??」チチン(ハイハット音)
王様の邪知暴虐な質問に答えず、メロスは言葉を続けます。
「品物を見ようと思いましたけど、ついつい見ちゃうのが女性のお顔。みなさんもそうでしょ?」ダダダダン(ドラム音)
絶妙なタイミングのセリヌンティウスのドラムオチ音。
今日のために、彼らはスタジオで2時間たっぷり雑談をしてきたのでした。
(雑談?)
「さて…時間が立つのは早いもので、最後の曲となりました。聞いてください「七歩の詩」」
宮殿のみんなは驚きました!
最後の曲も何も、最初の曲だろうというのもあったが、こいつらのいでたちから、誰しもが激しい曲調だと思っていたのでしたが、なんと、バラード調だったのです!
七歩の詩 作詞:曹植 作曲:MEROTH
♪豆を煮るに、豆がらを燃やす。
♪豆は釜中に在りて、泣く。
♪本は是れ、同根に生ぜしに、
♪相い煮ること、何ぞはなはだ急なる?
解説がいるでしょうか?
三国志の時代に、王である兄、曹丕にとがめられ、死刑になりそうな弟曹植。
彼は、七歩の間に兄弟の詩を吟じろというテーマに答え、この歌を歌い、九死から逃れたのです。
れっきとした兄弟の歌です。
妹殺しのディオニスには、さぞかし効いたであろうと、ドヤ顔のメロスでしたが、王はじめ、宮殿の誰しもがピンと来ていない様子…。
おもむろに大臣が口を開きました。
「宮中に鳴り物を運び込み、わけのわからぬ乱痴気騒ぎ。大王様、彼のものは「騒擾罪」として、磔が妥当かと存じます。」
「なんと…。いたし方あるまい…。悪しき前例があると、後のものに示しがつかん…。羊飼いよ…残念だ。そちは死刑である!」
ドドーーーン と水を打ったような静けさ。メロスは驚いた―通信。(ロイター通信?)
オレが…オレが何をしたって言うんだ?
ただ、王様の態度を正したいだけなのに…(どんだけ上から目線なんだよ)
仕方ない、命乞いをしよう。とメロスは思いました。
なぜなら、現行の作戦が「いのちだいじに」だったからです!
「おお、なんということだ!血も情もなきや!?王よ!天道は…天道はいかにある!?」
「あんなキャラだったっけ…??」
「大王様、私は死を恐れるものではござりませぬが、一名の妹があります。それが、ややもすると祝言!」
「なるほど。」
「私は、決して死を恐れる訳ではございませんが…、兄として…ただ、一人の肉親として、その幸せな一幕を是非、一目見てしかる後、黄泉への土産としとうござります。」
宮殿の誰しもが、メロスの悲痛な懇願に涙するものもいました…が、大半は心中を察してあきれ顔でした。
そういって、逃げるだけだろ…と。
王様は言いました。
「つまり、キミは一度家に帰って、妹の結婚式をあげてから戻って来て、死刑を受けるということだね。はい、大変よくわかりました。」
「分かって頂けましたか。では、ちぃとばかし行って参ります。」
「だが…。」
「なんです…水を差しますね…。だがとはなんですか。だがとは。」
「キミが戻ってくるという確証はないよね?」
「ドキィ!!!!」
「口で言っちゃった。口で言っちゃったよ!」
なんて、賢い王なんだ…これでは、計略がまるつぶれじゃぁないか!
額に汗がわきます。
「こうしようじゃないか。ワシは人を信用出来ない性格…。それで今まで何人も死刑にして来た。けど、キミが戻ってきたら!ワシも心を入れ替えれるかもしれん…。」
王様、自らハードルを下げて、メロスにネタバレぎりぎりの提案してきたもでした。
「おー!ユア グッド ナイス アイディア!」
余談ではあるが、このユアグッドナイスアイディア…「グッドナイス」なのか、「ナイスグッド」なのか分からずに、筆者はヨメに聞いてみたのでした。
すると、「知らん」との回答。オマエはホントに英検2級か?そんなんで世間は納得しますかぁ?なんなの?なんなの?なーんなの?
(ホントに余談だな。)
では、物語の続きを見てみましょう。
王様はこう答えたもでした。
「その代わり、3日!3日間だけ待ってやろう!」
「…え?ちょっと待ってくださいよ…。今日、ここに来るのだって、何日かかったと思ってるんですか…。」
「え?何日欲しいの?」
「一週間…。」
「じゃ、7日ね。」
「あ、やっぱ、10日。」
「10日?…んじゃぁ…10日」
「やっぱ、2週間!これ以上ゆずれません!」
「なんでだよ!こっちがどんどん下げてやってれば!10日だ!10日の日没まで!それで行ってこい!」
「なんですか…。わかりましたよ…。じゃぁ、10日で。」
「ちょっと待て!」
「はい??まだなんかあんですか?やだなぁ…。」
「人質を置いてゆきたまえ。」
無情なるかな、ディオニス王。人を信用出来ず、人質を要求してきたのです。
メロスはたじろぎましたが、こう答えます。
「え?じゃぁ…ドラムスのセリヌンティウス…。」
「あ、いっすよ。」
セリヌンティウスは、後先考えず、ノリのよい男でした。
「セリヌン、待ってろよ?なぁに、一昼夜、オレのランクルを飛ばせはすぐさ!」(え?)
「頼むぜ!兄弟!」
宮殿から出た、メロス。
とりあえず、カフェでコーヒーを飲みながら、一服します。
さぁ~…て。車を取りに行くかなぁ~…。
といって、駐車していた場所に向かうと…、路上にチョークでいろいろなんか書いてありました。
レッカー移動させられていたのでした。
メロスは怒りました!しかし、国家権力には逆らえません…。
(さっきまで、王様とやりあっていたような…)
自分の村まで徒歩で行くしかない!
しかし、外は魔物であふれています…。
(…そーゆー設定な…。)
メロスはふらりと、仲間を求めて歩き出しました。