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第十九話・遂に思いを通じた二人に最強の敵と遭遇す


【第十九話・ついおもいをつうじた二人ふたり最強さいきょうてき遭遇そうぐうす】



メロスは腰から銃を抜きました。


「な、なんだそれは?剣ではないな??」


暗闇の中です。サロメは何のことかわかりません。


メロスはとりあえず声の方向にショットガンの引き金を引きます。


その瞬間、銃口からパァー!っと光が溢れました。


今でいう照明弾のようなものだったのでしょう。


ダメージを与えられるような代物ではありません。

しかし、ディサイドには十分効果があったようです。


光は数秒続きました。


「光…光…。」


闇のマントがパサリと地に落ち、星や月が光を取り戻しました。


ディサイドは二人の前に貧弱な体をさらし、目を押さえて震えています。


「これは…」


「ひぃ!許してくれ!オレは闇のマントを広げて同士討ちさせるしか能がないんだ!」


サロメは無言で霹靂の杖を振るいました。

その雷はディサイドの体を焼き殺しました。


そして、二人に聞こえるレベルアップの音!


「…もう…勇者様とあたしには時間がないのに…。」


サロメはこの城の見える丘の木の下でメロスに抱き着きました。


「オイ…サロメ…。」


そして、メロスに口づけをしました。


「ん…。」


「勇者様…。」


「うん…。」


「最後の夜に…妻にならせてくださいませ…。」


「うん…。」


二人は木の下に倒れ込んでその思いを遂げました…。



そして夜が明けた!



聖王のマントをかけて二人は寝ていましたがメロスが目を覚まします。


「おはよ…サロメ…。」


「おはようございます。勇者様。」


「もしも…オレの子ができていたらゴメン…。」


「いえ…いいんです…これで…。」


サロメの目は涙で溢れています。

この先に待ち受けているメロスの運命にただ落涙するほかはありませんでした。


二人は服を正して立ち上がりました。


「はーあ。この銃では…攻撃はできないな…。」


「でも、役に立ちましたね!」


「はは。そうだね。」


メロスは城を見ました。


「…じゃぁ…行くね。」


「あたしも…最後までお供いたします。」


「そうか…。」


二人は城を向かってゆっくりと歩き出そうとしたその時です。


老いたロバにまたがった長い白髭の老人が二人に近づいてきました。


二人は気にも留めないつもりでしたが、どうも様子がおかしい…。


「じいさん…どこに…。」


「ほっほっほっほ。勇者殿。初にお目にかかる。ワシは大悪魔フォラスじゃ。」


「なに??」


フォラスは二人の傍らに転がっている亡骸を見ました。

そして一筋の涙をこぼします。


「ディサイドは…ワシの一人だけの部下で親友で妻でもありました。」


え?こいつ女だったの?…いや…男だよなぁ…。

ってことは男同士??


「いや、悪魔は両性具有ですから、男女はございませんのじゃ。」


はぁ?なんだ?

なんでオレが考えていたことがわかるの?


「わかりますとも。人間の考えていることなどすべてわかる。例えば…」


サロメのほうに目をやります。


「サロメはあなたをかばおうとあなたの前に立とうとしております。」


「!」


「あなたは、右手を上げる振りをして、左手を上げようとしますが、それもフェイクで後ろに二歩下がろうとしています。」


「!」


ま、マジか?

武器もないし、銃も使い物にならない…どうすれば…。


「ほほう…勇者殿は武器もないのにたくさんの我が軍の将を倒されましたのか!すごい武運ですな。」


だ、ダメだ…。

考えていることが全て読まれてしまう。

どうすれば…サロメの霹靂の杖…。


その時、サロメの手から霹靂の杖が離れ、宙を舞いフォラスの手の中に握られます。


「そうそう。これは返していただきましょう。元々私のものでな。大トロルに貸したものでしたので。」


そういって、霹靂の杖をしげしげと眺めました。


「…うん…。やはり自分の杖が一番しっくりくる。」


万事休す…。

攻撃するものが何もない。そうだ…サロメの真空呪文…。


「ペロペロペロリ」


フォラスはなにやら呪文を唱えました。


「その女の呪文は封じさせていただきましたよ?さぁ、勇者どの絶望しなさい。」


そ、そうだ。まだ銃があった!


「その、光るだけの銃ですか?面白い撃ってごらんなさい。」


メロスは銃の引き金を引きました。


シユウ!シユウ!シユウ!と閃光する弾が出るだけで、フォラスの元へも届かない貧弱なもの。


「さて…。あとの頼みの綱はなんですか?ははぁ…聖王のマント…。」


フォラスはエイ!とばかり念じると、大きな岩が空中に浮きました。

それをグルグルと空中で回転させてみせます。


「どうです?聖王のマントは物理的な攻撃は回避できません。思い切りぶつけて差し上げましょう。これが大悪魔の力ですよ。お二人とも仲良くこの木を墓標として死になさい。」


と言って、岩をはるか上空に浮かせた。


もうダメだ…。サロメを守ることもできないまま…セリヌンティウスを救うこともできないまま…

この地で死ぬのか…。

もう少しだったのに…。


サロメは何も言わず、メロスをギュウと抱いた。


「ほっほっほ。覚悟を決めましたか。地獄にも私は行きますので、死んでもそこでイジメてあげましょう。ではサヨウナラ…。」


巨石を空中に弓のように引いた。


その時、はるか向こうから土煙が見える。

そして激しい地響き。


「ふふ。この音がなんの音かお分かりか?勇者殿。」


…なんの音なんだ??


もはや二人の会話はテレパシーのみ。


「魔王様が進軍なさって来たのじゃ!人の世の終わりじゃ!そうじゃ!魔王様の前で処刑して進ぜよう。」


そう言って、一度、自分の前に巨石をゆっくりと落としました。


「ふふふふ…。」



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