第十四話・二人の勇者に獣王は屠るも、手を取らず逆様の道を行く
【第十四話・二人の勇者に獣王は屠るも、手を取らず逆様の道を行く】
ドドンゴを降りて、軽い食事をとるメロスとサロメ。
「ん?」
「どうしました?勇者様。」
「なんか、ちょっと強くなった気がする…。」
「そう言われてみればわたしも…。んふふ…。」
シェイドが倒れ、なぜかレベルアップしてしまう二人…。
「それにしてもドドンゴはたくさん食べますね。この辺の草なくなっちゃいました。」
「しまった…。」
「え?」
「ドドンゴは、一日の半分は食事をするんだ。そして半分は睡眠。」
「ん?じゃぁ、今…走ったのは…。」
「そう…やつの一日のほんの一瞬だけ駆け回るんだ…だから…。」
みると、ドドンゴは山のようなその体を地面につけ、うつらうつらとし始めました。
「だめだ。ドドンゴはここにおいて走るしかない。」
「え?なぜ走るんですか?」
「……ゴメン…今は言えない。」
走り出すメロス。その後をついてサロメも走り出しました。
こちらは獣王グランドの軍。
おそるおそる落とし穴ポイントを潜り抜けてまいります。
「あぁ……。」
頭を抱えたグランドの視線の先には、ぽっかりと空いた落とし穴にシェイドの無残な姿が…。
「これは…魔王様に糾弾されてしまう。よりによってお気に入りのシェイドを…。なんとか…なんとか勇者を倒しそれで罪を一等、減じていただく外、われらの一族に生きる道はない。」
自分で作った罠の地域を乗り越え、ようやく平坦な地にたどり着きます。
兵の半分は後続部隊が来れるように落とし穴を埋めるチームに。
もう半分を引き連れてメロスを追いかけます。
山のような熊です。
部下には獅子の化け物、虎の化け物、狼の化け物とものものしいメンバー。
人は二本の足で走りますが、獣たちは四本の足で走ります。
とうぜん、2倍のスピード。いや、それ以上で走れるわけです。
「ん?あれは?勇者の一行ではあるまいか??」
こちらに向かってくる一団の前にグランドの軍は立ち止まります。
その中にサロメとメロスの姿も。
一行のリーダーらしきものが懐から紙を取り出しそれを見ます。
「ふぅん。これは獣王グランドではないか。早速討ち取って我らの功としよう。」
といって、剣を抜きます。
「はっはっは。小さき人間よ。その細い腕で我らにかなうかな??」
同じく、剣を抜く他の二人、一人は呪文を唱えています。
「勇者どの。名を聞いておこう。」
「勇者キールだ。キール・インペリアル。冥土の土産に覚えておけ。ウォッカ。左から攻めろ。ラムは中央に呪文攻撃。ジンは右。オレはグランドを倒す!」
そういって、筋書き通りに戦闘を開始。
ものすごい攻撃です。
グランドの軍はバタバタと倒れていきます。
サロメも霹靂の杖で加勢します。
グランドと勇者キールの戦いは互いに一進一退。
キールは、剣を振りながら炎の呪文を唱えグランドに二重攻撃をかけます。
メロスがポカンとしている間に、グランドに最後の一撃を振り下ろします。
「ぐあ!」
グランドは肩から袈裟懸けに切られ倒れ込みました。
「はぁはぁ…君たち…大丈夫??」
キールはメロスとサロメの方を向いて聞きます。
「大丈夫。」
周りは獣王グランドの配下の死骸が累々と…。
その中の一体がむくりと起き上がり、キールに向かって
「こなくそ!!」
と叫び、巨大な火の玉を吐き出しました。グランドでした。
「しまった!」
「あぶない!」
メロスが駆け寄り、聖王のマントを広げます。
火の玉はそこではじかれ、虫の息のグランドは火葬されました。
メロスの良いとこ取り。
メロスとサロメにレベルアップの音が響きます!
「な、なんだ…?」
「はは。」
メロスは笑いかけました。
城に向けて走っているところに、この四人組と遭遇したのです。
はげしい地響きが聞こえたので身構えた四人組と共にいたのです。
「キミと…彼女は何者なんだ?」
サロメはメロスのそばまで駆け寄りました。
「僕はキール。キール・インペリアル。勇者だ。ウォッカとジンは戦士。紅一点のラムは魔法使い。」
紹介された一同はぺこりと頭を下げました。
「キミたちは…不思議なものを持っているね。」
サロメは杖を前に突き出し
「これは、世界に一つしかない「霹靂の杖」。いなづまを操ります。こちらの勇者様がまとっておられるのが「聖王のマント」。炎や吹雪を跳ね返します。」
「なんでオレに言わせてくれないんだよ…。」
「すいません勇者様…。またテンション上がっちゃって…。」
キールは驚いた顔で…
「そ、それはすごい…だが…勇者とは…?」
キールの仲間の紅一点。ラムが質問します。
「勇者って…。キールは勇者なのよ?世界に二人も勇者はいないでしょ…。」
続いて、ウォッカとジンが口を開きます。
「キールは…この山の上の神託所で女神アテナより神託を受けた勇者なんだ。」
「見ると…それほど腕が立ちそうでもないけど…。」
サロメも負けじとメロスをかばいます。
「でも…でも…勇者様は、魔王軍の砦を三つも破ったんですよ?大トロル…ヴァンパイア…そしてインクブスとサクブスを倒したんです。この宝は戦利品です。」
「ほ、ホント??」
「それは…すごいな…。だから砦はもぬけの空だったのか…。」
四人の仲間は顔を見合わせます。
「…とにかく…。我々は魔王討伐に向かうんだ。君たちも…ともにどうかな?」
「いえ…私達は…。」
メロスが口を開きます。
「城に戻らなきゃ…。」
キールは残念そうに
「…それは…。しょうがないな。…でも、この山の神託所に行ってみるといい。聖アテナの神託を聞いてみるとどうかな?」
「うん…。」
「勇者様。行かれるんですか?」
「はっきりさせたい。」
キール一行と別れ、メロスとサロメは山の上に進みます…。