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転生グルマン! 異世界食材を食い尽くせ  作者: 茅野平兵朗
第1章 ラーメン王に俺はなる! の巻
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第58話 あまーい! こっちのコーヒーは咽るくらいあまーい!

大変お待たせいたしました

 翌朝、昨日よりかなりゆっくり目にお屋敷を出て、僕たちは冒険者ギルドに向かった。

 当然、朝食もゆっくり目に作って、みんなでいっしょに食べた。

 ちなみに、朝食の献立は、炒めたソーセージ、夕べのスープの余りにいろいろ付け足したもの、柑橘の果汁とパンだった。

 夕べ、カルボナーラが好評すぎてほとんど食べられずに、かなりの量が余ったドネルケバブは今日のお弁当だ。


 ギルドに向かう馬車の中で僕は誰とはなしに、聞いてみる。

「昨日から不思議に思っていたんだけど、ゴブリンに攫われた女の子を助け出すのって、領主様とかがやらないのかな? そのためにみんな税金納めてるんじゃないの?」

 僕みたいな平均的日本人の考えだと思う。国民の生命財産を護るために、警察や消防、そして軍隊がある。

 そしてその組織を運営するために税金が使われる。

「あなたがいた国ではそうなのね」

「へえ、どんな君主が治めてるんだ? 立派な君主だな」

 うん、僕の国の君主様は確かにいついかなるときでも国民の平和安寧を祈り続けている国民想いの立派な方だと思う。

 いや、だけどそれは、国のシステムの問題であって、君主どうこうじゃないと思うんだが。

「ハジメさん、ヴェルモンの街の領主様は民想いの立派な方です」

「でもでございます。この国で起きた有害モンスターによる誘拐事案で、どこの領主様も出兵されたことはただの一度もありません」

「え?」

「自分の孫娘が攫われたって、救出隊を編成して出兵しなかったって、シムナも言ってたろ」

「それって、どういう……?」

「この国の軍兵は、国王と国を護るものだからなのでございます」

 いや、待て、それは本末が転倒してるだろ。

 国民……すなわち、納税者があっての国だろう? 納税者がいなければ、国を動かすシステムが機能しなくなるじゃないか。

 だから、納税者、すなわち国民を守ることの優先順位が高いんじゃないのか?

「軍隊はこういった事件では動かせません。動かせたとしても個々の事案に対応するには人手が少なすぎます」

「で、ございますから、ここの領主様は周辺村落の警備を強化したのでございます」

「算数の話よハジメ。わたしたちが昨日やった救出作戦は、Bクラスの冒険者で十人からのパーティーでやるようなクエストなのだわ。これを、軍隊がやるとなると歩兵増強二個中隊二百人が必要になるわね」

「その兵力は、このヴェルモンの街の駐屯部隊は一個大隊千人弱でございますから、約二割の兵力でございます」

 僕は驚いた。

 Bクラス冒険者一人の戦力が、とんでもないということにだ。

 よく力持ちを表現する言葉に十人力とか百人力とかあるけれど、冒険者ってほんとにそうなんだ。

 Bクラスだと単純計算で一人頭軍の兵隊二十人分の戦力、いわば二十人力ってことだ。

 僕の前でニコニコしているエフィさんで二十人力……。

 だったら、SSSって何人力なんだ?

「じゃあ、兵隊増やせばいいじゃないか?」

「バカだなハジメは。いいか、国の政は国王の側近の大貴族たちが取り仕切ってるんだぜ。そいつらはいつだって自分の取り分を増やしたがってるんだ。国王の命令以外で勝手に軍備を増強してみろ」

「あ、そうか、謀反の意ありと看做されて討伐されるってこと?」

「ハジメにしては上出来な答えなのだわ そうよ、このヴェルモンはグリューブルム王国の東方辺境最大の街。そして、王国の中でも豊かな土地なのだわ」

「はい、で、ございますから、王国中枢に巣食う妖怪たちの垂涎の的なのでございます」

「ですから、ニーナ様のお父様……アルブレヒト様は、騎士団の大隊長として、奥様ともども王都に留め置かれているのです。いわば人質ですね」

「え? ヴィオレ?」

 参ったヴィオレッタ様までがそんなことを知っているなんて。

 ああ、でも、元ゼーゼマン商会の番頭さんだから、そう言う情報は入ってくるのか。

「だから、どこの街でも冒険者ギルドが、そこを肩代りしてるのよハジメ」

 うへえ、サラ様までもが冒険者ギルドの存在意義を知っているよ。

 なるほど、冒険者ギルドってのは、国の政府がやらないことを国に代わって有料でやっている組織なワケだ。

 メッセンジャー、雑用屋さんから、警察や軍隊、消防まで冒険者ギルドが網羅しているというわけだ。

 だけど、それは歪だ。

 金の有る無しで命が助かったり助からなかったりなんて不平等で理不尽だ。

 生まれで暮らしぶりが決まるのは致し方ないとしても、生まれで訪れる死に格差ができるなんて僕は許せない。

 人生は不平等であっても、死は平等であるべきだ。

「さあ、ギルドについたぜ。降りた降りた!」

 いつの間にか馬車はヴェルモンの街の冒険者ギルドに着いていた。

「じゃ、あたいは馬車止めてくる。どうせシムナの部屋だろ? 行っててくれ」

 僕たちを降ろしたルーデルが馬に一鞭くれる。

 馬車はゆっくりとギルドの裏手にまわっていった。


「あら、思ってたよりも早く来たわね」

「ウチのリーダーは存外まじめなんだよ」

 マスターシムナの執務室に入ったところでルーデルが追いついていた。

「そうね、クエストの争奪戦に参加しなくていいんだから、もっとゆっくりでもよかったと思うのだけれど」

 ギルドに着くなり、僕らはいきなりマスターの執務室に通される。

 そこで、僕らは不機嫌が服を着ているようなダークエルフのお姉さんに、やぶにらみで迎えられたのだった。

 もはやすっかりおなじみになった執務室の応接セットに、僕らは腰を落ち着ける。

 応接テーブルの上には、未解決のクエストと報酬不足のためにギルドのクエストとして受付できなかったクエスト申し込み用紙が昨日のまま鎮座していた。

「おはようございます。コーヒーをどうぞ、これで、寝ぼけ眼もシャッキリですよ」

 受付嬢カトリーヌさんがいい香りがするコーヒーを運んできて、僕らの前に置いた。

「「「「「「いただきます」」」」」」

「うおっ!」

「んんんっ!」

「まあっ!」

「うわぁ!」

「ほぉう!

「うえっ!」

「「「「「おーいしぃっ!」」」」「あまっ! げはがはごほっ!」

 思わず咽かえるくらい甘かった。僕尺度でのコーヒーというには激甘すぎだった。

 例えるなら、ブラジルの黄色いお菓子キンジン並に甘かった。

「よかったぁ! 南方産の砂糖を贅沢した甲斐がありました。ハジメさんには不評のようですけど……」

 カトリーヌさんのジットリした視線が、絡みつく。いや、たぶんこれって日本以外基準ならおいしいコーヒーだよね。たぶん。

 だが残念なことに僕は元々が日本人だ。この体はこっちの人だけどね。

 だから僕はこれがおいしいとは思えない。

「ごめんなさい、カトリーヌさん。どうやら僕は相当に貧乏性のようです。せっかく贅沢してもらったのに、この五分の一ほどで十分甘くておいしいと思えるみたいです。でも、これはこれでいただきますから」

「はい、次にハジメさんにコーヒーをお出しすることがあったら、砂糖は皆さんの五分の一にしますね。ああ、そうだ、ポットに余っているコーヒーがありますけど、お飲みになります?」

「それは、ありがたいです。是非」

 にっこり微笑んでカトリーヌさんがパタパタとギルドマスター執務室から駆け出して、数分後に戻ってきたとき、(淹れたて?)と思えるくらいに温かいコーヒーポットが僕の目に前に置かれたのだった。


17/01/22 第五十八話 第58話 あまーい! こっちのコーヒーは咽るくらいあまーい! の公開を開始しました。

 毎度ご愛読誠にありがとうございます。

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