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転生グルマン! 異世界食材を食い尽くせ  作者: 茅野平兵朗
第1章 ラーメン王に俺はなる! の巻
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第52話 結構稼いだはずなのに、結局僕の手には金貨百二十九枚と銀貨四枚しか残らなかった件

あけましておめでとうございます!

 結局、僕は未解決クエストとギルドでは報酬不足で受け付けられなかった依頼申し込み書、合計百件余の案件を全部で金貨二千枚で請け負うことにした。一件当たり金貨約二十枚の計算だ。

 その案件には明日から着手することにして、僕たちは、今日のクエストの達成報酬を受け取るべくマスター執務室から受付へと階段を下りた。

 ちなみに、僕らが受けることにした案件の報酬は、ギルドが個別に支払いを受け付けプールしておいて、僕らが全部を達成した時点で全額が支払われる。

 当然だけど、依頼者全員が提示額を全部支払うことができたとしても、たぶん金貨二千枚には到底足りないだろう。

「あんたたちが受けてくれるんなら、足りない分はあたしが払う」

 シムナさんはそう言って請合った。

 冒険者ギルドヴェルモン支部のギルドマスターシムナさんが、身銭を切ってまで有害モンスター駆除と、被害者救済に尽力をしていることに同情はするけれど、働いた分はきっちりともらう。

 と、いう、リュドミラとルーデルのお言葉通りに、僕たちはクエストの報酬を受け取ることにした。

「はい、こちらが、今回の報酬です。ゴブリン討伐五十体を一件とするクエスト十件分の成功報酬金貨百枚と、ゴブリン駆除報酬七百三十二体分、金貨二百九十二枚と銀貨八枚、ゴブリンサージェン駆除報酬七十二体分金貨二十八枚と銀貨八枚、ゴブリンルテナン討伐報酬二十体分金貨金貨二十枚、ゴブリンキャプテン討伐報酬五体分金貨五十枚、そして、ゴブリンメジャー討伐報酬一体分が金貨三十枚の合計金貨四百二十一枚と銀貨六枚になります。そこから、冒険者報酬税十パーセントを引きまして、差し引き金貨三百七十九枚と銀貨四枚になります。尚、制度上、ルテナン以上のゴブリンは駆除ではなく討伐という呼称になります」

 僕たちの前に金貨がぎっしり詰まった麻袋が三つとバラの金貨七十九枚銀貨四枚が置かれる。

「わあああッ! すごいすごい! わたしたち今日一日でこんなに稼いだの?」

「こんな大金、行商で稼ごうと思ったら半年以上かかります」

「な、な、言ったろう? 手っ取り早く稼ぐにゃこれか強盗だって!」

「C級に昇格もしたから、できればダンジョンに潜りたいのだけれど……」

「ええ、お金を稼ぐにはそれが最短でしょうけど……」

 皆口々に、僕たちの冒険者としての初任給に熱い眼差しを送っている。

「じゃあ、こっからあんたたちが昨日壊したログクリスタルの代金、金貨二百五十枚をもらうけどいいわね?」

 マスターシムナがニヤリと笑い、金貨の袋二つとバラの金貨五十枚をカトリーヌさんに渡す。

「ああ……ぁ」

「おおぉう」

「はあぁ……」

 僕たちが稼いだ金貨はあっという間に三分の一に減ってしまい、結局、手元には金貨百二十九枚と銀貨四枚が残ったのだった。

「ルーとリューダの借金は今回はオマケしてあげる」

 と、いう、マスターシムナの温情で、今回はリュドミラとルーデルの借金、金貨百三十三枚と銀貨四枚に銅貨八枚は払わなくて済んだ。

「はああぁ……、今日、痛い目にあった分、ただ働きかと思った……」

「それでも、普通に働いたら、二月分くらいの収入は残りましたから。ハジメさん」

 ヴィオレッタお嬢様が僕の手を取って励ましてくれる。

「そ、そうですね、明日からまたがんばりましょ……あ……」

 僕は思い出した。明日からは明日からで、僕たちは普通の冒険者は絶対にやらない、話を聞きに行くだけで赤字の出血大サービス格安クエストをこなすことになっていたんだった。

「はあぁ……」

「だ、だいじょうぶですよ! 全部こなしたら金貨二千枚ですよ! ハジメさん」

「そうだよハジメ! 全部を三週間でやっちゃえば残り七百枚で目標達成だよ!」

「今、百二十九枚でございますから、実質、あと、六百枚くらいで目標達成でございます」

「だな、上手いこといったら目標達成できっぞ!」

「そうね、存外、これはいい案かもしれないわね。で、あなたはいいのシムナ? あなたには何の得もないと思うのだけれど?」

「あたしは別にいいのよ」

 そう言って微笑んだマスターシムナはどこか儚げだった。

「そう、ならいいのだけれど……。ハジメ、覚えておくのよ、腹に一物持ってる女って、こういう顔を自在に作れるものなのよ」

「ちげーねー。ハジメ、こいつは、見た目の三十倍は生きてるからな。気をつけろ」

「ふ、ふんっ、あんたたちがくっついているかぎり、ハジメには手出しできないわよ。あたしだって、まだ、命は惜しいもの」

 シムナさんが腹の中を見透かされた詐欺師のように顔を紅くして取り繕う。

 うん、やっぱり何か一物あるんだなこの人。

 まあ、でも、貧乏な村の依頼をお金が足りないからってつっぱねたままにしないで、機会があれば何とかしようって、いつも考えているんだろうことが窺えるのは事実だから、そこのところは素直に感心したい。


「あのぅハジメさん」

 カウンターの中からカトリーヌさんがおずおずと僕に呼びかけてきた。

「はい?」

「あ、あのですね、現在お持ちの金貨、盗難とか怖いですよね」

 いや、別に、マジックバッグあるし、僕の周りにはここのマスターでさえおっかながる冒険者がそろってるからそんなには怖くないと思うけど……。

「今、お持ちの金貨、ギルドにお預けになりませんか? お預けいただければ、大陸中どこのギルドでもお引き出しが可能ですし、年十五パーセントの利子がつきます。さらに、協賛のお店でのお買い物、お食事ご宿泊は、冒険者証の提示でキャッシュレスでご利用可能です。しかも、宿酒場併設のギルドでは、最大五割引でご利用が可能となっております……いかがでしょうか?」

 なんか、これ、カトリーヌさんのボーナス査定にでも関係してきそうだ。

 リュドミラとルーデルを見る。

 二人ともため息をついているけれど、やめろとは言っていない。

 ヴィオレッタお嬢様もサラお嬢様も反対はしてこない。

「台下、非才も冒険者ギルドに、ある程度は預けておりますですよ。結構便利に使っております。口座を作ることに不利益はございませんですよ」

 なら、いいか。

「じゃあ、カトリーヌさんその袋の金貨をお預けします」

 僕の言葉にカトリーヌさんの顔がぱっと明るくなった。

「ありがとうございます。では、では、ここにお名前とご住所をご記入いただいて……」

 結局、僕らは金貨二十九枚と銀貨四枚を手に冒険者ギルドを後にした。

「ルー! 市場はまだやってるよね」

「ああ、農家から野菜売に来てた連中は午後には帰ってるから、野菜は少し割高な八百屋になるけどな」

「オーケー! じゃ、まず古着屋に行きたいんだけど」

「あ」

「きゃははっ」

「あははぁ」

「はぁっはははは」

「ふふふふ」

 ああ、また……。

「みんな、僕が裸なことに、またしても違和感を持っていなかったね」

 僕のジットリと湿った視線にみんなが苦笑いを浮かべる。

「はあっ!」

 ルーデルの掛け声が響く。

 僕たちの馬車は、すっかりと夜の帳が下りたヴェルモンの街を市場へと走り始めた。


2017/01/01第52話『結構稼いだはずなのに、結局僕の手には金貨百二十九枚と銀貨四枚しか残らなかった件』の公開を開始しました。

毎度ご愛読ありがとうございます。皆様のご愛顧のおかげで、創作のモチベーションが保てておりますことを幾重にも感謝申し上げます。

本年も何卒引き続きのご愛顧を賜りますよう何卒お願い申し上げます。

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