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転生グルマン! 異世界食材を食い尽くせ  作者: 茅野平兵朗
第1章 ラーメン王に俺はなる! の巻
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第43話 回復薬の名前が『女神の聖水』ってのはどうだろうか?

お待たせいたしました。

「困ったことになったわ」

 偵察から帰ったリュドミラが口重たく言った。

 リュドミラやルーデルみたいなトリプルS級冒険者がそうそう困ることなんかないだろうから、これは相当に困ったことなんだろう。

「正確には面倒と言ったほうかいいと思うのだけれど」

「リューダほどの冒険者が面倒とは、だいぶ面倒なことが起こっているようでございますね」

 よほどのことが起こっているに違いないと頷くエフィさんに、リュドミラが微笑む。

 僕らが受けたクエストの目的達成まで、あと少しというところで、僕ら(リュドミラとルーデルは除く)は所属ランクよりもかなり上の状況に出くわしてしまったようだった。

「どういう状況?」

 まあ、状況を把握したからと言って。僕が有効な作戦を立てられる訳じゃないけどね。

「エルフの女が一人と人間の女が三人、捕まっているわ」

 ゴブリンキャプテンが率いる群の洞窟拠点を偵察して戻ったリュドミラが、顔をしかめて言った。

 確かに、それは困ったことになった。いままでやってきた戦術が使えない。

 出入り口塞ぎいの、火炎放射器ぶっぱなしいので敵を殲滅するだけでよかったのが、人質救出なんていう高難度のオプションがくっついてしまった。

「で、囚われ人の状況は? どうよ」

「衣服に乱れは無かったから、これからってところかしら」

「キャプテン以上のゴブリンは、他種族のメスを相手にする場合、確実に孕ませるために、月相を選ぶといいますから……」

 ちょっと、サラお嬢様には聞かせたくない内容だ。

「サラお嬢様、僕とおやつにしませんか?」

 僕はサラお嬢様の手を引いて、その場を離れようとした。

「こらこら、リーダーが作戦会議をすっぽかしてどうする」

「ハジメ、ルーの言う通りだよ。ちゃんと作戦会議しなきゃだめだよ」

「といっても、見なかったことにして、他の拠点を潰してクエストクリアにするか、無茶を覚悟で救出作戦を決行するかなのだけれど」

 リュドミラの一言で、僕のパーティーのみんなは黙り込んだ。

「いずれにしろ、余り迷っている時間は無いのだけれど? ハジメ」

 ああ、そうなるんだろうな。リーダーってそういう役回りだよね。だから、僕は言う。

「救出作戦をやるか、やらないかを話し合っているんだったんだ。僕は、てっきりどんな方法があるのかを話し合うんだと思い込んでいた。いや、ごめん。勘違いをしていたよ」

 ってね。

「へえ……」

 ルーデルが牙をむいて不敵な笑顔を作り。

「ふふふふふ」

 リュドミラが目を伏せて口角を吊り上げる。

「は、はは…ははははっ」

 エフィさんが引きつった声で笑い。

「ハジメ!」

 サラお嬢様が破顔する。

 そして……。

「ハジメさん……。ええ、ハジメさんならそっちを選択すると確信してました」

 そして、ヴィオレッタお嬢様は、どこか安堵したように微笑んでいた。

 僕は、ヴィオレッタお嬢様に頷いて、リュドミラに向き直る。

「ねえ、リューダ、救出したらギルドとか、領主様とかから褒賞出ないかな?」

「そうね、たぶん、それなりに出ると思うわ」

「人間の方はともかくとして、エルフの方からはたんまりふんだくれそうだな」

「というよりも、国からだと思うのだけれど」

「そうでございますね。エルフの女性をゴブリンの陵辱から未然に救出したなんて、エルフとの外交交渉上、結構有利な手札になりそうでございますからね」

 うん、救出作戦を実行することは、労力に見合った収入を得られそうだ。

「じゃあ、大まかな方針は、隠密裏に拉致監禁されている女性を救出して、その後、殲滅という方向だと思うんだけどどうかな? ルーとリューダ、サラお嬢様頼りで申し訳ないんだけれど……」

「私とルーなら平気なのだけれど、サラは?」

「わたしならぜんぜん平気! ウィルマのおくすりのおかげで、ぜんぜんつかれないの。逆に元気ハツラツって感じ」

 おいおい、エフィさんの回復薬、ほんっとに大丈夫だろうな。その効果って、まるっきり僕のもとの世界のあの危ないクスリっぽいんですけど。

 ぼくは、サラお嬢様の顔を見る。剥きたてのゆで卵みたいにつやつやのぷるぷるって感じの健康そのものの顔色だ。

「どうしたのハジメ?」

「今日は、本当にサラに頼りっきりだなあと思っていたのです。ありがとうサラ」

「えへへへへっ、ハジメにほめられちゃった。うふふふふっ、それに……うふふふふっ」

 仄かに頬を染めて、サラお嬢様が小躍りを始めた。やっぱり、おかしな成分入ってるんじゃないのか? エフィさんの回復薬。

 僕はじっとり成分38%の視線でエフィさんをちら見する。

「しししし、失敬ですよ台下! これでも非才の回復薬はルーティエ教団の財源の一翼を担っているのですから! 伊達に金貨一枚はしませんから!」

「まあっ! ルーティエ教団秘伝の、あの超回復薬『女神の聖水』シリーズの調剤師はウィルマでしたの?」

 ヴィオレッタお嬢様の驚嘆の声に、エフィさんが耳まで赤くなる。

「あ、あ、あ、ああああっ! き、聞かなかったことにしてくださいっ! こ、こ、こっ、これは、ルーティエ教団の、きっ、きっ、きききき、機密事項なのです!」

 どうやら、製法にはかなりの秘密がありそうだ。これ以上の追求は危険な匂いがする。

 ……にしても、聖水ね。

「うーん、それじゃ、僕らでエフィさんの薬を露天かなんかで売るってのもできませんね」

「そうね、『女神の聖水』シリーズはトリプルSランクの冒険者でもめったに手に入れられないくらい貴重品だから、売り出せば儲かること間違いなしなのだけれど」

「いえ、その前に、回復薬等の販売は国の免状が必要ですし、製造するお薬のレシピを国に届けなければいけませんから……。国への届出なしに、お薬を製造販売できるのは教団だけなのです」

 さすが、ヴィオレッタお嬢様『番頭』Lv99は伊達じゃない。

「なるほど、国の許可ですか。手続きに物凄く時間がかかりそうですね。あと、試験なんかもありそうだ。じゃあ、エフィさんの作った薬はルーティエ教団の専売ってことなんですね」

「ええ、ですから、こうして、非才が使う分には、布教行為と見做されますので問題なしなのですけど……」

「わかりました。では、この話はここまで。と、いうことで。じゃあ、みんな! 救出作戦の詳細を決めましょう」

「そうね、まず、これを見て頂戴」

 リュドミラが木の棒で地面を指し示した。

 そこには、いつの間にかゴブリンキャプテンが率いる群の洞窟拠点の詳細な見取り図が色とりどりの砂で描かれていた。

「すげ……」

 見取り図ってか、ちょっとしたジオラマみたいだ。

「ふふふ、これはね、砂盤っていうの」

 リュドミラが悪戯っぽくウィンクをしたのだった。


16/12/13第43話『回復薬の名前が『女神の聖水』ってのはどうだろうか?』の公開を開始しました。

毎度ご愛読ありがとうございます。一昨日のアクセス数が1000を越えました。誠にありがとうございます。

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