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転生グルマン! 異世界食材を食い尽くせ  作者: 茅野平兵朗
第2章 今度は醤油ラーメンだ! の巻
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第11話 僕は生まれて初めて自分の顔を見てみたいと思った

すみません! 投稿が遅れました。

 ゴゴゴゴンッ!


 大質量の金属の塊同士が擦れ合う音が鼓膜をかきむしる。

 僕の目の前で、にわかには信じがたい現象が発生していたのだった。

 ワイヴァーンの首を一撃で落とし、完全武装の数十人の兵士を数分で異物混入ハンバーグにしてしまうSSS級冒険者ルーデルの剣を人間が受け止めているのだ。


「へえ、これを受けるとはねぇ」


 僕の首を落とそうと襲ってきたジョージの一撃は、確かにルーデルが叩き落とした。

 が、その後返す刀でジョージの首を狙ったルーデルの一撃を、カイゼル髭のジョージは見事に受けきってみせたのだった。


「むっふ~ん! 推参である。分際をわきまえよ獣人ッ!」

「……なんてやつだ」

 

 僕は思わずつぶやいた。

 この腐れ髭野郎が元とはいえSSS級冒険者の斬撃を受け、火花を散らして鍔迫り合いをしてのけていやがる。

 いや、その、元って言っても冒険者資格の更新を忘れてただけで、その実力は現役バリバリだから!

 って、ことは、このカイゼル髭ジョージはSSS級の力があるってことなのか?


「むっふ~ん、不意打ちでなければ何ということはないのである。獣人ごときの生兵法など、神の御業の代行者たる我の前では塵がそよ風に舞うがごとくなのであ~る!」

「ははぁッ!」


 一瞬僕にはルーデルの体から重さが消失したように見えた。

 それは、カイゼル髭ジョージも同じだったのだろう、ヨロリとたたらを踏んだ。

 次の瞬間、ルーデルの大剣が横薙ぎにジョージを襲う。

 耳を劈く大質量の金属同士の激突音。


「っははははぁッ! いいぞ、いいぞ、お前!」

「ぬふうッ!」


 再びジョージの剣がルーデルの斬撃を弾く。

 弾かれた勢いを使って体を回転させ、さらに加速した一撃が再びジョージを襲う。

 剣と剣がぶつかりあう大音響が再び鼓膜を劈く。

 破鐘を繰り返し打ち鳴らすような撃剣の大音響が、この場に存在する音の全てとなった。


「はははははッ! あーっはははははははッ!」


 犬歯をむき出しにルーデルの口角が釣り上がってゆく。


(ああ、これ、スイッチ入っちまったな)


 前から薄々感じてはいたことだが、どうやらルーデルには戦闘嗜好者バトルジャンキーの素養があるみたいだ。


「ぬぐぐぐぅ! ふんぬぬぬぬぅ~!」


 ルーデルの斬撃に押されて、カイゼル髭ジョージの足が地面にめり込んでゆく。


「そらそらそらッ! 獣人の生兵法なんぞ、そよ風に舞う塵も同然じゃなかったのかぁ!?」


 ジョージを襲うルーデルの斬撃の回転数が次第に上がってゆく。

 あたかもそれは彼女が鋼鉄の暴風を巻き起こしているかのようだ。

 これ以上はないっていう、メッチャいい笑顔をルーデルが浮かべている。


「むふッ! っくうぅッ! うがあああっ!」


 カイゼル髭ジョージが雄叫び、ルーデルの剣を弾き飛ばした。

 再び、ジョージに剣を叩きつけようと身を翻したルーデルだったが、


「っはははははぁ! いいぜ、待ってやる。出せよ、とっておき!」


 破顔して剣を地面に突き立てた。

 それは、あたかも勇者の必殺技を余裕を持って受ける魔王の佇まいだ。


「ふうッ! ふうッ! ふうッ! ふううううッ! 獣人が分際をわきまえろと言ったのが聞こえなかったか?」


 あれ? ちょっと待て、僕に対する態度にあった余裕が消えてるぞジョージ。 

 カイゼル髭の背中がブルブルと震え、盛り上がってゆく。

 ジョージの周りに黒紫色の靄……多分瘴気だこれ……が、立ち上りジョージを包むようにしてその密度を高めてゆく。


(な、くッ! ヤバイ! ヤバイ、ヤバイッ!)


 ひと目で分かる。これはやばい奴だ!


「待て待て、まてぇい! そこな騎士、剣を引け! 我はグリューヴルム王国近衛騎士第四聯隊副長、近衛中佐アルベルト・ジークムント・フォン・オーフェンである。我が王都近傍においてかかる暴虐の仔細を問う」


 そこへ、王国騎士のアルベルトさんが四人の部下とともに騎馬で到着した。

 ん? オーフェン? どっかで聞いた家名だな。


「フン、早かったなアル坊。おい、外道、アル坊に免じてテメーを駆除するのはまた今度にしてやる」

「むっふ~ん、チミには分際というものをきっちりと躾けてやる必要があるようだ。飼い主が成さないのであれば、それは隣人の役目なのである」


 僕にちらりと視線を送るカイゼル髭ジョージから瘴気が失せている。

 いったいなんだったんだ? カイゼル髭は何をしようとしていたんだ?

 それから、ルーデルをペット扱いすんじゃねぇ!


「そこな騎士、まずは、名乗られよ。そして、この有様の仔細を語られよ」

「むっふ~ん、我輩はロムルス教国聖堂騎士団特命異端審問官万人長大司教聖ジョージ・アルビオーネ・マクシミリアン・オルコットである」


 なんだって? 大司教だ? このカイゼル髭、高位聖職者なのかよ!

 恐ろしく生臭な聖職者だな。しかも、自分で聖を名乗ってるし。

 生きてるのに列聖されてるぞ。この世界では、生者を列聖するのか?

 名乗りひとつで二十個くらいのツッコミどころが発生したぞ。


「ふむ、して、オルコット殿、この惨状はいかなる由縁なのかお聞かせ願えるか」

「むっふ~ん、この惨劇をもたらしたるは、そこな獣人と墓掘り人夫である。我輩らは地上における神の御業の代行者として、異端を誅滅すべく神聖なる任務を遂行中であったのである。それをこの獣人共が邪魔をし、我が手勢を虐殺し、あまつさえ我が弟である聖ヴァシリーをも惨殺したのである。その者等を捕縛し正当なる処罰をされることを要求するのである」

「んなッ!」


 カイゼル髭のあまりにもな厚顔無恥さに僕は大口を開けて呆けてしまった。

 しかも、自分の弟にまで聖つけてるし。

 まあ、そっちはくたばってるから億万歩譲って列聖も良しとしてやろう。


「むふぅーん、さあ、早くこの不埒者らを捕縛せよ。近衛騎士殿」


 僕は生まれて初めて自分の顔を鏡に映してみたい衝動にかられていた。

 きっと、空前絶後に間抜けた顔に違いない。

 ところで、オーフェンってどっかで聞いた名前だな。


18/07/25 第11話 僕は生まれて初めて自分の顔を見てみたいと思った の公開を開始しました。

いつもは前日のうちに予約投稿しているのですが、忘れておりました。

申し訳ありません。

毎度ご愛読いただき、誠にありがとうございます。

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