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転生グルマン! 異世界食材を食い尽くせ  作者: 茅野平兵朗
第2章 今度は醤油ラーメンだ! の巻
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第6話 どうりで画竜点睛を欠いていたわけだ! モヤシが入っていなかったんだから(個人の感想です)

お待たせいたしました。

「うめええええええっッ!」

「なんと、なんとうまいのだこれはあああっ! こんな料理、王都のレストランでも出てこないぞ」

「ほおおぉっ! これは、これはなんと美味なることか! 宮廷詩人が詩に謡ってもおかしくない!」


 騎士さん、商人さん冒険者さんたちはものすごい勢いでレバニラ定食を胃の腑へと送り込んでいた。

 どうやらワイヴァーンレバニラ炒めを気に入っていただけたようだ。


「あいつら、自分らが食ってるのがワイヴァーンの肝と米だって知ったら腰抜かすだろうな」

「そうね、ワイヴァーンの肝なんて一ポンドあたり金貨十枚はするのだもの。それに米を調理したあれ、ご飯だったわね。あれなんてあの一人前で金貨一枚はするのだわ」

「ってことは、ワイヴァーンのレバニラ定食一人前でざっと金貨二枚くらいかな」


 材料費だけで日本円で二万円を超えてくるレバニラ定食って……。


「それ以上でございましょう。世の中には付加価値というものがございますゆえ。例えば米でございますが、米があっても、あれをあのように調理して食べる知識は宮廷にしかございません」


 エフィさんがワインを満たしたカップを揺らす。


「まあ、それに、ふつうはワイヴァーンの肝なんて食おうなんて思わねえからなぁ」


 ジョッキみたいなカップをあおり、ルーデルが犬歯を見せた。


「で、ございますね。ケニヒガブラの毒袋つき牙までとは言いませんが中々に珍重される類の魔物素材でございますからねぇ。主に最上級解毒薬等の薬剤の材料でございますから」

「ええっ!? 良かったの? まるで、街の定食屋で出てくるような料理にしちゃったけど」

「ああ、いいっていいって! あたいらがハジメの料理で食いたいから狩ってきたんだ。アレが食いたかったんだ。最高だったぜえ!」

「そうね。でなきゃ、わざわざシュタインベルガーまでなんて狩に行ってこないのだけれど? んはぁッ! このワインいいわね。本当に上物なのだわ」


 ほんのりを頬を染めたリュドミラが、レバニラ炒めの対価として商人のおじさんから貰ったワインに賛辞を送り、事のついでのように今日の狩場を教えてくれた。


「なんとシュタインベルガーまで行って来たんですか? 流石、ルーとリューダといいますか……」


 呆れたようにエフィさんが酒精混じりのため息を漏らす。


「シュタインベルガーですって? ここからじゃ急行馬車でも三日はかかるわ! ルーとリューダって、本当にSSS級なのね」


 ヴィオレッタお嬢様のツッコミに納得した。

 そんな遠くまで狩りに行ってきたのか。

 なるほど、近場じゃなかったんだな。

 王都警備隊の皆さん職務怠慢を疑ってごめんなさい。

 しかし、二万円以上するレバニラ定食って……。

 ほとんど米とレバーの代金でだよな。ニラはタダだしモヤシは入ってないし……。

 ……モヤシ……あ!


「モヤシだ」

「はい? ハジメさん?」

「もやし? と、おっしゃったのでございますか。それはいったい……?」

「なんだそりゃ?」

「あら? どこかで聞いたことがあるような言葉だとおもうのだけれど」


 モヤシだ。モヤシだったんだ画竜点睛を欠く問題点は!

 ワイヴァーンレバニラ炒めを完璧なものにするためにはモヤシが必要だったんだ!

 ようやく答えにたどり着いた僕は、初冬の夜空をあかあかと焦がす焚き火に頬を熱くしながら大豆の入手方法を思案し始める。



(大豆か……。味噌や醤油作成の上でもぜひ手に入れたいな)

「ハジメさん、楽しそうです」


 僕の横に腰掛け、毛布に包まったサラお嬢様を膝枕したヴィオレッタお嬢様が微笑む。

 少しワインかエールを飲んだのか、ほんのりと頬に紅が差している。

 早鐘を打ち始めようとする胸を抑えながら、彼女の問いに答える。


「え、ええ、新しい食材をどうやって手に入れるかを考えてるときってすごく楽しいです」

「ハジメさん、明日はいよいよ王都ですね」

「ええ、王都にはどんな食材があるんでしょう。ヴェルモンとはまた違った物があるかと思うとワクワクですね」

「そうですね私も楽しみです」


 そう言ってヴィオレッタお嬢様が微笑んだ瞬間。


「あ!」

「まあッ!」

「おお!」

「はははぁ」

「んふふふ」


 僕らの視界を一筋の光が尾を引いて横切っていった。


「み、見ました? みんな」

「ええ、ええ! ハジメさん。流れ星ですッ!」

「はい、はいですとも!」

「こいつは縁起が良いか?」

「どちらでも、大きな変化の兆しなのだわ。悪い変化には力づくでさせないのだけれど」


 運命を力ずくで捻じ曲げるなんてことでもできそうだから怖いよ元SSS冒険者って。


「はあ……」

「まあ、息が白くなっています」

「ははは、すっかり冬だな」

「王都でも雪は降るのだわ」

「では、非才が王都イチの雪の絶景ポイントをご案内させていただくのでございます」


 野営地の夜がしんしんと更けていく。

 僕は初めて訪れる王都に期待を膨らませるのだった。

18/07/20 第6話 どうりで画竜点睛を欠いていたわけだ! モヤシが入っていなかったんだから(個人の感想です) の公開を開始しました。

毎度ご愛読誠にありがとうございます。


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