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転生グルマン! 異世界食材を食い尽くせ  作者: 茅野平兵朗
第2章 今度は醤油ラーメンだ! の巻
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第4話 完成!『ワイヴァーンの肝と香味草のアリオ炒め』要するにワイヴァーンのレバニラ炒めだ

お待たせ致しました。

「ハジメさん! 各自、食器の用意も完了してございますれば、後は、その美味が約束された香りを漂わせているお料理の配給を待つばかりでございます」


 慇懃な口調で食器類の用意が整ったことを教えてくれるのは、この世界の大地の女神の教団の独立巡回枢機卿にして、新興の教団生命の女神教団の使徒エフィ・ドゥ・ルグさん。

 切れ長の目を細め、あたりに漂う香ばしい香りに目尻を下げている。


「ハジメさん、ご飯バッチリです。味見にひとつまみだけいただきましたけど美味しく炊けてます。完璧です。私、この旅ですっかりお米の炊き方マスターしました」


 朗らかな声で米が炊けたことを知らせてくれたのは、僕が居た元の世界の幼馴染菫にそっくりな少女、ヴィオレッタ・ゼーゼマンお嬢様だ。


「ありがとう、ヴィオレッタお嬢様。ほんとうにご飯の炊き方が上手になりましたね。もうすっかりおまかせで大丈夫です。僕の方ももう出来上がりですから、みんなに配膳お願いします」

「んもうッ、ハジメ様ったら。敬語! 私、怒りますよ」

「す、すみ……ごめん、おじ……ヴィオレ。まだ、どうしても慣れなくて…たははは……ほんと、ごめん」

「ハジメ様ったらぁ……」


 愛らしく頬を膨らませてヴィオレッタお嬢様が僕に抗議する。

 僕は長い間彼女たちの父親のヨハン・ゼーゼマンの使用人だったわけだから、彼女たちをお嬢様と呼びかけるのが染み付いてしまっている。

 おいそれと変れないって。

 実際問題、心の中で呼びかけるときは今だにヴィオレッタお嬢様とサラお嬢様なわけだし。

 そうしているうちに鉄鍋の中身はすっかりと食べごろに炒め上がった。


「……っと、できあがりましたよ! みんな取りに来て!」


 僕は出来上がった炒めものを特注の半球形の炒めヘラ。元の世界で言う中華お玉ですくい取り、ひとつまみとって口に放り込んだ。

 まず口の中に広がるのが刻んだアリオ(元の世界で言うニンニク)と焦がし醤油の香ばしい香り。

 そして、一噛みすると少しクセのあるレバーの濃厚な味わいと野趣あふれる野草の独特な香りが広がる。

 更に噛みすすめると、それらの味わいが混然一体となって脳髄を揺さぶった。

 猛然と唾液が溢れ、胃の腑がご飯を切望する。


(う、美味い! 美味すぎる! こ、これは危険だ!)


 元の世界のレバニラが1ウマウマだとすれば、これはゆうに15ウマウマを超えている! ひょっとしたら、20ウマウマ行っているかもしれない!

 辺境の街ヴェルモンを発ってからこれまで道中で、リュドミラとルーデルが狩って来た獲物は出発する前に彼女らが言っていた通り、定番のオークに始まり、ヒュージボア、レッドサーペント、ボルテックイール、コカトリスにイビルフォールクラブ、そして今日、ついにワイヴァーンに至ったのだった。


(うーん、美味い、美味すぎる……だが、何かが足りないような……)


 それにしても、ワイヴァーンの住処が王都からわずか1日のところにあるなんて王都の守備隊は何やってんだ?


(……、にしても美味過ぎだよなこれ、禁菜にならなきゃいいけど……) 


 そういえば、女神様方この道中一回も来なかったな……。


「ごしゅじんさま?」

「ハジメ?」

「ハジメさん?」


 し、しまった! 数瞬呆けていたようだ。

 口角から垂れていたヨダレをエプロンで拭い、取り繕う。


「お……、お、おまたせ! ルーとリューダが狩って来たワイヴァーンとみんなが集めたハーブで作った『ワイヴァーンの肝と香味草のアリオ炒め』だよ!」


 大仰に名前をつけてみたけれど要するに『ワイヴァーンのレバニラ炒め』だ。


「はい、どうぞ!」


 先頭の女の子…エルフのウッラが持っている魔法で防錆コーティングした鉄板をプレス加工で間仕切りをつけたお盆……。すなわちメストレーに中華お玉でひとすくいワイヴァーンレバニラ炒めを盛り付ける。

 一番大きな仕切りにはご飯が山盛りになっている。

 僕の右隣でご飯をトレイに盛っているのはヴィオレッタお嬢様だ。

 更に左隣ではエフィさんがスープをメストレイに載せたカップに注いでいる。


「ふわわぁッ! いい匂いッ! 美味しそう。ありがとうハジメさん!」


 ウッラが駆け出す。


「ウッラ! 気をつけて、つまずかないように!」


 エフィさんが、声をかけられた本人が振り向かないくらいのさじ加減で柔らかく注意を促す。


「はぁい! ウィルマ先生!」


 エフィさんの目論見通りウッラはこちらに振り向かずに足元の注意を払いながら自分の席へと駆けて行った。

 もうすっかりエフィさんは『東の森の乙女』たちの担任の先生だ。

 次々と少女たちはご飯とレバニラ、スープを受け取り席に着く。

 そしてみんなに食事が行き渡ると、席についたエフィさんがおもむろに祈りを捧げる。


「大地と生命と冥府の女神。狩人、ハーブを集めたみなさん。いつも美味しい食事を用意してくださる皆さんに感謝を捧げます」


 エフィさんの感謝の祈りは当初、「料理を作ってくださるハジメ様」なんて文言が入っていたもんだから土下座して削除してもらって、みんなでご飯を作ってることにしてもらってる。

 その祈りの奏上が終わって、みんなが黙祷する。そして頃合いを見計らって、僕は大きく息を吸い込む。


「いただきます!」

「「「いただきまぁす!」」」

 

 僕に続いてみんながいただきますを唱和する。

 そうして、僕らの楽しい晩ご飯の時間が始まったのだった。


18/07/17 第4話 完成!『ワイヴァーンの肝と香味草のアリオ炒め』要するにワイヴァーンのレバニラ炒めだ の公開を開始いたしました。

たくさんの御アクセス誠にありがとうございます。

今後とも宜しくご愛読くださいますようお願いいたします。

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