表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生グルマン! 異世界食材を食い尽くせ  作者: 茅野平兵朗
第2章 今度は醤油ラーメンだ! の巻
117/232

第2話 そうだ、今晩のおかずはアレにしよう

お待たせいたしました。

スタートダッシュ更新第三回でございます。

「じゃあ、始めちゃいます!」


 そう宣言したのは、狼人の少女ダリルだった。

 まるで手術に挑む外科医のような獲物解体用の頭巾と割烹着に着替えている。

 薄い革製の手袋で防護した手にはさっきあげたミスリルのナイフ。その刃が夕日のオレンジに染まっていた。


「うそ! ダリルちゃんワイヴァーンの解体できるの?」


 サラお嬢様が聞き返す。


「大きなトカゲってだけだから、いいどうぐがあればできるわ」


 そう言いながら、ダリルの傍に長い耳を揺らして兎人族の少女リゼが並んだ。


「え? リゼちゃんもできるの?」

「ワイヴァーンくらいまでならできないことないかな?」

「「「できるできる」」」


 次々に狼人族と兎人族の少女たちが、ミスリルナイフを手に巨大なワイヴァーンに取り付いた。


「かかかッ! 獲物に対して物おじしないのは血のなせる業なのでございましょうね」


 確かに彼女たちは、これまでの道中、通常のナイフで解体できるオークやヒュージボア、コカトリスなどの解体は見事にこなしていたが、亜竜の中でも最大種のワイヴァーンの解体となると、また別なんじゃないだろうか?


「じゃあ、あたしたち、分けたお肉の整頓とかお片付けとか手伝う」


 人族の少女たちとエルフの少女たちがサポート役を買って出て、僕らの心配を他所に、獣人少女たちは器用にサクサクとワイヴァーンを解体し始める。


「ごしゅじんさま、その解体用の包丁お借りできますか?」

「ああ、もちろん。そのための包丁だからね。こっちもミスリル製だから、よく切れるはずだよ」

「ありがとうごしゅじんさま」


 ダリルとリゼたちはナイフから解体用のミスリル包丁に持ち替えて、役割を分担して皮剥ぎから腸出し、精肉、骨スキ、後片付けと解体を進めていく。

 ……にしても、僕は彼女らを召使いにした憶えも奴隷にした憶えもないんだけれど、そのご主人様呼びいつになったら改めてくれるんだろう。


「ははぁ、流石は狩猟を生業とする獣人たちでございますね。では、非才もちょっと、勉強させていただきましょう。ダリル、リゼ。教えて欲しいのでございます」

「はいッ、ウィルマ先生!」


 エフィさんが自身のミスリルナイフを抜いてワイヴァーンに向かう。

 それを、ダリルたちが元気のいい敬礼で迎える。

 教え子に教えを請うなんて普通の大人じゃできないよなあ。


「わたしもやる! リゼちゃんダリルちゃん教えて!」

「リゼ、ダリル。私にも教えて!」


 サラお嬢様とヴィオレッタお嬢様もワイヴァーンに立ち向かっていく。

 そうして、この場所で何もしていないのは狩って来たルーデルとリュドミラ、そしてこの隊の唯一の男の僕だけだった。


「僕にも……」


 そう言いかけた僕の手をリュドミラが掴んで止めた。


「あなたにはお肉になった後に大仕事があると思うのだけれど」

「そりゃあ、おめぇにしかできねえことなんだぜ、ハジメ」


 ああ、そうだった。

 僕にはこのお肉を美味しく料理するっていう仕事があったんだった。


「うん、わかった」


 そうつぶやいて僕はどんな料理にするかを思案し始める。

 とれたて新鮮なお肉だからな……。

 その時、腸を出して洗浄していた兎人の娘が叫んだ。


「うわあ! 大っきいよこれ、あたしくらいある」


 兎人の女の子が三人がかりで運んでいたのはきれいな血の色につやつやと輝いている臓物だった。

 以前ゴブリンプリンセスに食われた右脇腹の臓物がツキンと痛んだ。


「あ!」


 僕の頭上に明るい電球が灯った。


「ウッラ! ファンニ! あと、草の見分けができる子ちょっと来て!」


 野草の見分けが得意なエルフの二人と人間の女の子たち何人かが僕の方に駆けて来る。

 僕は少女たちにある草の採取を依頼する。


「ルー、リューダ、お疲れのところ悪いんだけど……」

「了解なのだわ、ここまで来てこの子達のうち誰一人として、人攫いになんて渡さないのだわ」

「ああ、任せろ、寄って来た野盗や人攫いに強姦男は殲滅かチョンパでいいよな」


 リューダが腰の後ろで交差した長脇差のような剣をカチンと鳴らし、ルーデルが平手で空を薙いだ。


「ああ、全部お任せだ」


 僕は街道周辺をうろつく野盗が野草採取の子たちに近づかないことを心の底から祈った。

 ようし、今晩のメニューはアレでいこう!

 牛乳はあったな、バター屋で何ガロンか買っておいたんだっけ。

 マジックバックから牛乳が入った樽を取り出す。


「あとは、あ、小麦粉と、醤油。今回はアリオのすり下ろしを使ってみよう」


 元の世界のニンニクによく似た植物の球根を取り出す。

 

「あの草がまだ生えてるといいんだけどな。もう冬だから無理かもしれないかも……」


 僕は少女たちの野草採取が成功することを強く祈った。

18/07/15 第2話 そうだ、今晩のおかずはアレにしよう の公開を開始しました。

さて、今晩のおかずのアレとは何でしょうか?

答は次回更新で!

次回更新は18/07/16 00:00の予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ