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転生グルマン! 異世界食材を食い尽くせ  作者: 茅野平兵朗
第2章 今度は醤油ラーメンだ! の巻
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第1話 僕らがテントを張ってる間にワイヴァーンを狩って来たって?

おまたせいたしました。

スタートダッシュ更新第二回目でございます。

 太陽が地平線の向こうに沈みかけた頃、王都まで後一日というところまで迫った街道沿いの野営地で僕たちはや天幕を張り、寝床とお風呂の用意を完了していた。

 野外、それも、露営地での風呂なんてできるわけない?

 いいやできるね。

 組み立て式の塀で囲んだ広場にすのこを敷き詰め、僕たちの根拠地の街の東方辺境伯領の領都ヴェルモンの木工所で特注した大きな浴槽を設置したら、立派な露天風呂の出来上がりだ。

 その全部を普段から僕のマジックバッグに収めてある。

 天幕も野外用の食卓も椅子も僕のマジックバッグに入れてある。

 だから、僕らの馬車は広々と快適な乗車空間が確保できてるってわけだ。

 さて、お風呂に話を戻そう。

 お湯は魔石利用のボイラーで沸かしているから使い放題だ。

 そのボイラーは、土魔法で作成されたものだ。キャンプを引き払い移動するときには土に戻すからとってもエコ。

 排水だって、ろ過装置を通してから近くの川に流すから環境にも優しい……はずだ。

 そうして、誰が一番にお風呂に入ろうかと相談しているところに、夕日を背にした巨大な影がえっちらおっちらと近づいてきたのだった。


「うひゃひゃひゃ! 大漁大漁ぅっッ!」


 影が奇声を発する。

 お上品にすまししてさえいれば戦兎族のお姫様と言っても通るくらいの麗しやかな顔を野盗のようにぶっ壊して、元SSS級冒険者ルーデルがなにか巨大な爬虫類の脚のようなものを担いでこちらへと歩いてくる。


「はあ……少しくたびれたのだわ、エールかミードが欲しいのだけれど」


 その横で喉を潤すものを求め、ぼやいているのはルーデルの相棒で、同じく元SSS級冒険者、愛らしい垂れた犬耳を揺らすリュドミラだ。

 彼女の肩にもルーデルと同じ巨大な爬虫類の脚が載っかっている。

 二人はなにか巨大な爬虫類を二人がかりで担いで帰ってきたのだった。


「うわぁ! ルー、リューダ! おかえりなさい! それ、もしかしてワイヴァーン!?」


 リュドミラとルーデルが担いできたものが何なのかにいち早く気がついたのは、件の僕らのパーティーの最大魔法火力兼造形作家サラお嬢様だった。

 野外入浴セットのボイラーは彼女の作品だ。

 他に野営地の竈類も全てが彼女作だ。


「よお、サラいい子にしてたか? ちゃんと、お姉ちゃんの手伝いしてたかぁ?」

「ただいまサラ。ルー、サラなら大丈夫なのだわ。あんたと違ってとっても聡い子だと思うのだけれど」


 ルーデルとリュドミラは幼い子どもに対するような冗談を言い、サラお嬢様の頭をなでながら帰還を告げる。


「もお、わたし、そこまで子供じゃないと思ってるんだけどなあ」


 サラお嬢様の抗議に人が悪そうな笑顔を作るルーデルとリュドミラだった。


「なぁんと! なんとおぉッ! 流石元SSS級冒険者でございます。非才どもが露営の準備している僅かな時で、しかもたった二人でワイヴァーンヤークトをなさるとは!」


 慇懃な口調で二人の猟果を称えるのは、大地の女神教団の独立巡回枢機卿にして、生命の女神の第二使徒、エフィ・ドゥ・イルティエ・ヘンリエッタ・ヴィルヘルミナ・ルグ、通称ウィルマさんだ。

 僕の心の中での呼び名はエフィさんだけどね。


「ルー、リューダ、私達の中でワイバーンの解体したことある子はいないと思うわ。道具だってないし……」


 そう言ってルーデルたちの獲物の処理の心配しているのは、今はなき僕の主人ヨハン・ゼーゼマンさんの長女でサラお嬢様の姉上であるヴィオレッタお嬢様だ。


「っはー! しまったぜ! ワイバーンの皮裂くのってミスリルじゃねえとムリだったけな」

「ミスリル以上の金属でできた刃物を持ってるのは、わたしとルーだけだとおもうのだけど? 血抜きだけはしてきたから後は解体だけなのだけれど……」


 二人はコメカミに指を当ててあぐねている。


「ふふふ、こういうこともあろうかと……」


 ボクは腰の雑嚢型マジックバッグから人数分のミスリル製汎用ナイフと同じくミスリル製の解体ナイフセットを取り出した。


「な、なんと! 台下。それはミスリルのナイフではございませんか!?」

「うそ!? ハジメ、いつそんな高価なものそんなにたくさん買ったの」 

「ルーとリューダが道中に狩りをするって言ってたからさ、鍛冶屋に注文してたんだ。いやあ、出発に間に合ってよかったよ。さ、みんなこっちのナイフは人数分あるからね」


 僕は地面に敷毛布を敷いて露天商よろしくミスリルナイフを並べる。


「おいおい奢ったなぁ、あたいとリューダは昔から使ってるのがあるからいいけど、ダリルやリゼたちはよかったなぁ。それだけでひと財産だぜ」

「A級以上の冒険者にでもなるのでなければ、ミスリルナイフ一本あれば、もう、一生ナイフを買う必要なんてないのだわ」

「うわあぃ! ありがとうハジメ。わたし、最初に買ってもらったこれも大事に使ってるけど、ひつようにおうじてこれも使うから」


 サラお嬢様がピョンピョンと飛び跳ね嬉しさを体中で表現する。


「ハジメさん! またこんなに! お金どうしたんですか? 私、ケニヒガブラの売却代金も預かったままでしたよね。え? 私のもあるんですか? そんな申し訳なさすぎます」


 ヴィオレお嬢様は悲しそうな笑顔で僕の目を真っ直ぐに見つめる。この視線は若干苦手だ。

 心の中まで見通されそうだ。

 いや、もちろんやましいことなんてないけどさ。


「うん、実はね、王都までの旅の支度金を領主様からこっそり渡されてたんだ。それから、なんでか知らないけど、冒険者ギルドのマスターシムナさんが、お金くれて……あと、鍛冶屋の親父さんが代金棒引きにしてくれたりもして……。だから、ほとんどタダ同然です!」


 僕らが辺境最大の街ヴェルモンを王都に向けて出発した頃、辺境伯領内でフォークが密かに流行り始めていたのだった。

 この大陸の一般的な常識として、食事は未だ基本的に手づかみだ。

 だから、公衆衛生があまり発達していないことも相まって食事による細菌の体内侵攻による食中毒が頻発して命を落とす人も少なくなく存在していた。

 食後の腹痛なんてない方が珍しいぐらいだ。

 当初、ごくごく私的に僕が鍛冶屋さんにフォークの制作をお願いしていたのだった。

 だけど、その中から一本、鍛冶屋の親方に進呈して、試しに使ってもらったら、腹痛の回数が劇的に減少したそうだ。

 早速、鍛冶屋の親父さんは胡乱がる家族の分を作って、一家でフォークを使い始めたのだそうだ。

 当然、その当日から腹痛が激減して。鍛冶屋一家は腹痛知らずになった。

 それが隣近所の評判になって、じわじわと草の根的に広まり、ヴェルモンの街ではフォークが腹痛防止の食器としてシェアを拡大しつつあったのだった。

 そんな状況になってるとはつゆ知らず、旅支度の買い物のついでに獲物の解体に使うハンティングナイフの調達をしようと鍛冶工房を訪れた僕だった。

 その時「お前さんのフォークのおかげでめっきり腹痛を起こさなくなったぜ。今じゃ家族全員がフォークで飯を食ってるんだ。だから、な、ミスリルナイフの代金は棒引きさせてくれ」と、鍛冶屋の親方がミスリルナイフの代金を受け取ろうとしなかったのだった。

 それから、親父さんが言うには、一年という期間限定だけれど、ヴェルモンの街でのフォークの専売権をご領主様に貰ったそうで、その間に得られる利益がかなりの額を見込めるということで、アイディア料の先渡しとして、ミスリルナイフをほとんどタダ同然に打ってもらえたのだった。

 しかも、材料もこのとき偶然に冒険者がギルドに大量に在庫を抱え込んで、ミスリル鉱石の価格がヴェルモン辺境伯領で暴落してしまい、野鍛冶の親父さんのところにも在庫が大量に回ってきたんだそうだ。

 後、こっそりとだけれど僕専用にミスリルフォークとミスリルスプーン。なんてのも作ってもらっている。「この匙なら、クリムゾンドラゴンの目玉だってキッシュ並に掬い取れるぜ」と、鍛冶屋の親方は豪語していた。


「たっ、タダなんですか? な、ならいいんです。私、心配なんです。ハジメさんって、私達のためにいつの間にか丸裸になっちゃうじゃないですか。だから、このナイフたちもなにかの財産を……ケニヒガブラの牙の代金の残りで揃えたんじゃないかって……」


 うんたしかに色んな意味で丸裸になってるな。

 お金がなくなってしまう意味でのは当然として、服が全部焼け落ちたり、ゴブリンどもにサビサビの剣で針山みたいになるくらい刺されまくって、服がボロ布になっちまったりとか。


「あれは、ハジメさんがアインから受け継いだ財産なんだから、自分のため以外に使っちゃだめなんです! だよね、お姉ちゃん」

「んもうッ! サラ! 冷やかさないで」


 うん、こんな方々だから、お嬢様方を守って欲しいというヨハン・ゼーゼマンさんの遺言だけじゃなくて、僕はこのお嬢様方に幸せな一生を送っていただきたいと思ってる。


「だから、何回スッポンポンになったって平気ですよ」


 僕は誰にも聞こえないようにつぶやいた。


「ああ、そうだなハジメ」

「ええ、そうなのだわハジメ」


 ルーデルとリュドミラが僕に微笑みを向け頷いた。

 ルー、リューダ。僕は、君らの幸せも願っているんだけどね。

 その言葉を僕は飲み込んで胃の中に落とし込む。

 口に出したらものすごくよく聞こえる耳を持った二人に聞かれるからね。

 何でも消化できる僕の胃は、その言葉を消化して腸に送り、吸収させ体の隅々に行き渡らせる。

 僕は僕の両の手が届く限りの人たちに幸せでいてもらいたいんだ。

 生命の女神イフェ様に貰った、毒も金剛石でさえも消化吸収し、どんな怪我も病も状態異常もたちどころに回復させる絶対健康なこの体をフルに駆使してね。


18/07/15 第一話 僕らがテントを張ってる間にワイヴァーンを狩って来たって?

の公開を開始いたしました。

早速のごアクセス誠にありがとうございます。

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