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転生グルマン! 異世界食材を食い尽くせ  作者: 茅野平兵朗
第1章 ラーメン王に俺はなる! の巻
111/232

第108話 まさか豚骨ラーメンも禁菜指定?

お待たせいたしました。

「うふふ、うふふふふっ、うはははははぁッ」

「きゃははぁッ! んきゃはははははははぁッ!」

「はわわぁっ、んはあぁッ! んくッ、ふは、ふはぁッ、あははははッ!」

「ぎゃははははぁッ! げらげらげらげら」

「ふふふッ、んふふふふッ! うくくくくくくッ!」

「ほわああッ! はははッ、うはははははははぁッ!」

「はきゃッ、きゃははははははッ!」

「くくくくくくッ、うくくくくくッ!」

「うふふふ、うふふふふふふッ!」

「あーッはッはッはッはッ、あははははははははッ!」

「ふ、うふ、うふ、ふ、ふッふッふッ、ふひゅひゅひゅひゅふふふッ!」

「「「「「「あはははははははははは!」」」」」」


 豚骨ラーメンを食べているうちに、みんなが大笑いを始めた。

 そこまでオーク骨ラーメンの再現をしなくたって……って、また、おかしな薬効が表われたとか?

 さっき鑑定したときにはなんにもなかったぞ。

 単に『地味溢れる栄養価の高い料理』としか出なかったぞ。

 絶望の女神様のウィンクバーゲンセールが大絶賛実施中されているような幻視が現れる。

 これがもしまたおかしな薬効とかがあって、また禁菜にでもなったら、もうお先真っ暗だ。どうしよう。

 この世界にラーメンを普及するという僕の野望のひとつが潰えてしまうじゃないか!


『大丈夫ですよハジメさん、皆は、本当においしいものを食べて幸せになっているだけです』

『ああ、そうだともハジメくん、皆、幸せな気持が溢れて笑っているのだ』

『ふ、ふふ、よきかな。かように料理でヒトが微笑み合うなど千載に一度あるかだのぅ。あいすくりん』


 頭の中に女神様方の声が響く。これはいわゆる念話ってヤツだ。

 どうやら今度のラーメンには、本当に何の問題もなかったようだ。

 ……ってことは、この、みんなの大爆笑は……。


「本当においしいですぅ! ハジメさん、私こんなにおいしいものを食べたの初めてですぅ。この間も、あんなにおいしいもの初めてでしたからハジメさんのお料理のおいしさ記録、更新ですぅ!」

「わたしも! わたしもだよハジメ!『こんなのはじめて!』がもっかいきたよおッ! これ、すごいすごぉいッ、おーいしーいっ!」

「こんなお料理、宮廷の晩餐会でもでてきませんよおッ! 先日の『ろおすとびいふ』が頂点ではなかったのですね」

「これもまたうめえなッ! エールがすすむぜえッ! ハジメぇ、こんなウマイもん作って、お前どこに行く気だ? 宮廷料理人でも目指すのかぁ?」

「はあ、次から次へとよく作るわね。このお屋敷に住んでいる子達の舌が肥えすぎてしまって、他の誰が作ったものもきっと物足りなくなってしまうのだわ。いったいどう責任を取ってくれるのかかしら?」

「わ、わたしの認識ってとことん甘かったのね、こないだの料理の先があるなんて」

「こ、こんなお料理が存在するなんて……口の中が幸せすぎて世界が色あせて見えますぅ!」

「…………ふわあああっ! らめぇッ! わたひぃッ、ごべんだざいッ」 

「「「「「おーいしーいッ!」」」」」


 ぼくは、大食堂を見回す。そこにあるのは、ただただおいしいものを食べた喜びに綻んでいるたくさんの顔だった。

 若干一名だけが盛大にべそをかいている(まあ、僕を殺しかけて、殺されかけたんだかしかたない)けれどそれは、横に置いておこう。

 この場にいるみんなが豚骨ラーメンを気に入ったようだ。

 よかった、ほんとうに、おいしいだけなんだ。おいしくて笑っているだけなんだ。

 僕は胸を撫で下ろし、僕の目の前の丼に箸を入れ、たっぷりとスープが絡んだ太縮れ麺を啜り込む。


「ズルルッ……んむううッ、うはははははぁッ…うまぁいッ!」


 思わず腹の底から笑いが溢れ、エコーがかかりそうな口調で叫んでしまった。

 こないだのオーク骨ラーメンの味や多幸感には到底かなわないが、この豚骨ラーメンは僕が今まで食べたどんな豚骨ラーメンよりも旨い! 

 元いた世界の豚骨ラーメンを1ウマウマだとすれば、この豚骨ラーメンはゆうに6ウマウマくらいあるんじゃなかろうか!


「はぁッ、これもまた、じつに素晴らしい仕上がりです。流石です、ハジメさん。これは味だけで、食べる者の心を天上に導く一鉢です。わたくしも天に昇ってしまいそうです。は、わたくし……」


『天上に住んでるんでした』という後半の言葉は僕と自称使徒イェフ様の正体を知っている者だけにしか聞こえなかったようだ。


「うむ、まさにだね。このまま君の料理を食べるたびに天に昇り続けたら創世神の領域にまであっという間に達してしまいそうだ」

「ふ、ふ、ふ、旨さのあまりのたうちまわって地揺れでも起こしてしまいそうじゃ。これを食した後のあいすくりんはまた格別であろうのう」


 はいはい、アイスクリンもちゃんと作ってありますから。

 ぼくは、自称使徒ヘミリュ様のアイスクリン催促に心の中で応える。

 って、ミリュヘ様って地震起こせるんですか!?

 そんな僕のささやかなツッコミをよそに、ゼーゼマン邸の大食堂は次々に咲き乱れては光の粒子になって消えてゆく見たこともない美しい花と笑顔に溢れ返っていた。

 この世界でラーメンが受け入れられたことを僕はしみじみと実感していたのだった。



 ラーメンリベンジが成功してから少しして、僕たちはダリルやリゼたち救出した女の子たちも含めた全員が、ヴェルモン辺境伯閣下のお城に呼び出された。

 いずれ、ゆっくりと伺うと言ったことをすっかり忘れていた僕は、その前日、大慌てでローストビーフを作り、翌朝にそれをサンドウィッチに仕立てマジックバッグに詰め込んで持参した。

 僕らが通されたのは、舞踏会でも開催されそうな広間だった。

 その真ん中に長いテーブルが置かれ、僕ら総勢24人は案内してくれたメイドさん風の人の指示でそれぞれテーブルについて領主閣下を待つ。

 やがて、勢いよくドアが開き、やたらと声がでかくて元気が有り余ってるといった風の壮年男性が入ってきた。


「いやあ、ハジメ殿! お呼びだてして申し訳ない!」


 壮年男性…ヴェルモン辺境伯閣下はズカズカと僕に向かって突進しながら手を伸ばしてくる。

 僕は急いで椅子から立ち上がり手を差し出す。


「貴君がいつまでたっても来てくれないのでな、つい気が急いて使いを出してしまった。いや、申し訳ない」


 がっき! と擬音が入りそうなくらいの勢いで、領主様が僕の手を握る。負けじと握り返すが領主閣下を圧倒するには膂力が足りなさ過ぎた。


「いえいえ、こちらこそ些事にかまけてご領主様にの元に参上いたしますのを伸ばし伸ばしにしておりました。申し訳ありませんでした」


 がっちりと手を握りこまれた痛みに、口角がフルフルと震える。

 そんな僕の引きつった笑顔を知ってか知らずか、ヴェルモン辺境伯侯爵マンフリート・ハインツ・フォン・ホーフェン閣下は白い歯をむき出して呵呵と笑うのだった。


17/09/01 第108話 まさか豚骨ラーメンも禁菜指定? の公開を開始しました。

毎度ご愛読、誠にありがとうございます。

『ハーメルン』様にても本作の掲載をさせていただき始めました。

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