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ん?
来ましたか・・・
さて、クロウの群体がこちらに辿り着く前に準備を終えなければ。
まず、残りの矢80本すべてをインベントリから取り出します。
この時クロウ達までの距離約1500メートル。
ちなみに言っておきますと、インベントリとはレベル×10までの種類のアイテムを1種類につき99個まで収納できるという便利システムです。
そしてメデスは、その矢を最初に弓につがえる1本を残しすべてをメデスは自分の真上に空高くぶん投げる。
この時、近づいてくるクロウ達との距離があと約1300メートル。
ゼロコンマ2秒・・・稲妻のようなスピードで一瞬にて矢をつがえる。
研ぎ澄まされた殺気は空中を伝い遥か遠くに居る獲物を静かに捉える。
「・・・捉えました。捕捉」
狙うは、恐らく群れのボスと思われる群れ1番の巨躯。
風向き良し。
角度良し。
引き分け良し。
弓がギシギシとしなる。
殺気を十分に蓄えた一矢が・・・今、放たれる。
ヒュボッ
おおよそ弓から出る音ではない、攻撃される側だとゾッとしそうな音をたて暗殺者の一撃は放たれた。
この合間にも近づいていたクロウ達との距離、約1200メートルを一瞬でゼロにし、仮定・群れのボスの脳天に突き刺さった。
それはまるで乗用車が壁に激突したかのように、高速で飛行するクロウキング(仮)とそれを上回る速度で飛来した矢が引き起こしたのは物理的な威力を持った衝撃波だった。
矢が刺さると同時に発生した衝撃波は、クロウキング(仮)の周りを飛んでいたクロウ達を叩き落とせはしなかったものの脳が軽く揺さぶられ飛行が不安定にするという結果を生み出した。
その時メデスは第1射を放ったあと、自分の真上に投げていた何故か縦一列に綺麗に80本並び、空中に線を作りあげながら落下してきた矢の1番下を掴み取り、流れるように弓につがえ放つ。
続けて、自分に矢が刺さらないうちに、また落ちてきた矢を掴み、放つ。
まに掴み、放つ。掴み、放つ。掴み、放つ。掴み、放つ。掴み、放つ。掴み、放つ。掴み、放つ。掴み、放つ。掴み、放つ。掴み、放つ。掴み、放つ。掴み、放つ。掴み、放つ。掴み、放つ。掴み、放つ。掴み、放つ。掴み、放つ。掴み、放つ。掴み、放つ。
・・・・
・・・
・・
・
矢を放ち続ける。
そして、30本放つと唐突に射るのを止める。
何故ならボス以外のクロウを全滅させ終わったからだ。
・・・そう。
クロウキング(仮)はあの攻撃を受けても生きていたのだ。
しかも、周りにいた取り巻きは全部で15体しか居なかった。
なら残りの矢はどうなったのか。
それはズバリ、ボスが残りの15本の矢を全て受けることとなる。
・・・だが、受けることとなるとは言ったが、正確に言うと射ったその15本の矢を、避けたり見えない攻撃で粉砕したりと1本残らず迎撃しきったのだ。
普通に化物である。
まぁ、モンスターなのだから間違っていないのだが。
「ほぅ・・・これはなかなか・・・・・・・血が騒ぎますねぇ・・・」
枷がさらに一段階外される。
戦闘モードから戦闘狂へと・・・
「クヒヒヒッ」
≪ワールドアナウンス』≫
≪ビーッビーッビーッ≫
≪全フィールド徘徊型ネームドボス・八咫烏【バラクト】と会敵したプレイヤーが出現≫
≪これより東フィールドにて緊急発生型レイドボス戦闘を開始いたします≫
≪周囲のプレイヤーは東フィールドへと集まってください≫
≪なお、強制参加ではなく自由参加です≫
≪そして、現在東フィールドにてレイドボスと戦闘中のプレイヤーは1名です≫
≪レイドボスの残りHPは9割≫
うるさい声をきれいに聞き流し、そんなことはどうでもいいというかのように、強敵との出会いに狂気を孕む満面の笑みへを浮かべる。
まず落ちてきている矢を、真上に跳躍し次々と50本の矢を掴み取っていき着地。
その合間に、八咫烏に神級鑑定。
***
《名前》バラクト
《種族》八咫烏・Lv148
《称号》・《率いる者》・《空の支配者》
HP:360,000/400,000
MP:20,000
STR:2500
VIT:2000
DEX:1590
AGI:2500
INT:850
MAG:1000
《種族スキル》
〈飛行〉〈招集音波〉〈群の長〉〈長の意地〉〈支配者の傲慢〉
《スキル》
〈突撃進〉〈音爆撃〉〈高速飛行術〉〈暴風魔法〉〈加速〉〈決死の一撃〉
***
「フフフッ!これなら楽しめそうッ!アハハッ」
行クヨ、鳥野郎?
血肉ヲ喰ライ合ウヨウニ、
本能ニ逆ラウコトナク、
腕ヲ折リ、
足ヲ折リ、
腹ヲ裂キ、
内臓ヲ引キズリ出シ、
血ヲ啜ル・・・
ソンナ戦イヲ・・・・・・・・・ヤロウ?
アハハハハハハハハハハハハッ!
蹂躙シアオウッ!
イキノコルノハ、ドッチカナ?
アハハハハハハハハハハハハハハハハッ!
サァ・・・
殺リ合オウカッ・・・・・
《スキル〈黒亞流戦闘術EX〉特殊技能【狂気】発動》
《運除く全ステータスを2倍にします》
そう言うとメデスは、まるで獣のように腰よりも頭が下に来る超低体勢をとった。
そこから更に体勢をグッと低くする。
グググッという音が聞こえてきそうな、獲物を狙う獣の如く姿勢で、心なしか地面がひび割れていくような錯覚を覚えるほど力を溜め込む。
「ハァッ・・・ハァッ・・・ハァッ!・・・スタイルゥ・・・【狂獣】・・・ッ!」
ビシィッ
ドンッ
という地面がひび割れる音とともに、まるで大砲を発射したかのような音を立てメデスは勢いよく前方へと駆け出した。
メデスは飛ぶように走る・・・いや文字通り一回の前方への跳躍のみで地面に触れぬまま、驚異的なスピードでメデスは駆ける・・・正確には駆けるではなく飛ぶだが。
そして八咫烏までの距離が800メートルを切った時メデスは今まで以上に力強く一歩を踏み込み、無手の状態で何故か投擲の体勢に入った。
槍投げの選手も惚れ惚れするような完璧なフォームで、何故か手は手のひら全体で何かを押し出すような形を作っている。
手のひらが耳の横を通過する時、事は起こった。
そこに光が集まったのだ。
光は細長い形をとり始める。
しかも1つではなく、2つ、3つと増えていき、最後は10つとなった。
そしてその光はだんだんと解けていき、目の横を通過する時には完全に光は解け、そこに矢が現れた。
・・・なんてことはない。
ただ、インベントリから矢を10本取り出しただけなのだ。
そのまま手のひらで矢を押し込む。
あまりのスピードで押された矢は鏃の先端が空気抵抗をなくす役割があるにもかかわらず、圧倒的な空気の圧力と手のひらの圧力によりまるで巨大な砲台に砲弾を装填しているかのように錯覚する。
無論一連の作業が見えていれば、だが。
ミシミシと音を立てながら圧縮された矢は、ついに空気の壁を貫き、まるで圧縮されたバネが解放されるとその圧縮された力を解放するように、矢は手のひらによって発射される。
桁外れな身体能力と矢の速く飛ぶ特性も相まって、矢は音の壁を突破する。
音の速度で飛来する弾丸が矢のショットガン。
八咫烏側としてはたまったものではない。
しかし、だからと言って避けることもできない。
結果、10本中8本が八咫烏に突き刺さることとなった。
片翼に2本、片目に1本、胴に5本。
なかなかの好成績だ。
「グガャァッ!?」
まぁ、そりゃ困惑もするだろう。
なにせ八咫烏からすればなんかメッチャ速く走り出した人間が突然止まったかと思えば何故か自分に矢が8本も突き刺さっているという結果しかわからなかったのだから。
こいつはヤバイとでも感じたのか、ついに攻撃を開始する八咫烏。
口から何かを吐き出しながらもの凄いスピードでメデスへと迫る。
「フフッ目で見えなくても、見えるッ!」
メデスは、強く踏み込んだ際にひび割れた地面に手を突っ込み、そのまま地面を捲めくり上げそのままの勢いで、飛来する透明で形も曖昧な塊に向けて投げ飛ばし、即席の盾とする。
続けざまに今度は、体が隠れる程度に大きめの地面をめくり上げ、その影に隠れる。
そして隠れるのとほぼ同時に即席の盾と透明な塊が激突する。
激突すると同時にその透明な塊は弾ける。
ーーーーーーーー爆音と共に。
爆発した塊は、爆炎は無かったものの強力な爆弾として機能した。
そう、音爆弾として。
しかしながら音しか出ない爆弾でも高めれば強力な攻撃となり、とてつもない驚異となるものだ。
まず、この音の塊と衝突した即席の盾を瞬時に粉のようになるほど破壊。
そのまま物理的な衝撃を兼ね備えた音はメデスの隠れるめくり挙げられた地面へと迫り、そして、粉々に砕いてメデス諸共吹き飛ばした。
一瞬で全身に走った痛みに、少しだけメデスの思考が狂気を保ちながら冷静になる。
・・・・!?
ナンダッ!?
タダノコウゲキジャナイノカ!
リョウミミ、コマクケッソン
ミギロッコツイッポンヒビアリ
アノコウゲキデコノケガハコウウンカ
ダガナゼコマクガ?
・・・ッ
オトカ!
ナラスキルノ、オトバクゲキッ
そしてすぐに冷静になっていた思考は、痛みと、八咫烏への怒りによってまた、狂気に塗り潰される。
再三、もう1段階頭の中の枷が外れる。
もう既にメデスは周りなど見えていない。
何故なら、
今はもう戦闘好きの狂人などではなく、1匹の野獣と化しているから。
それもただの野獣ではなく、動くもの全てに警戒し、またその全てに襲い掛かる手負いの狂獣だ。
こうなったメデスはもう、誰にも止められない。
それは不確定要素などではなく、ただの事実だ。
現に、現実世界で弟達がマフィアに攫われた際にメデス・・・もとい冥は本気でキレて、この状態になったことがある。
■◇■
その時の冥は、少なくとも20人以上のマフィアが持つマシンガンから一斉に放たれる銃弾を自分に当たる弾だけ、刀で切って対処した。
背後にあるそこそこ遠い廃ビルの屋上から放たれた対物ライフルの弾丸は、振り返りざまに刀で受け流し、そのままマフィアの構成員の固まっているところへ意図的に弾き飛ばし、5〜6人を殺した。
そして、側にあった鉄パイプを掴み取り再度振り向きながらスナイパーへと投げ、スナイパーの頭に突き刺し殺した。
無拍子で近づき、一瞬のうちに7人ほどの頭を刀で切り飛ばし殺した。
・・・・・などなど。
冥は三日三晩戦い続け、2つの巨大マフィアを潰した。
その間に殺した数、のべ952人。
冥の負った傷、
・・・ゼロ。
かすり傷すら負うことはなかったのである。
・・・だが、
この状態は例え助けようとした弟達でさえ、冥に呼びかけても冥は返事を返さない。
むしろ襲いかかってくる。
・・・そう。
最早この時の冥は今まで鍛えた技術とマフィアを潰すということしか頭になかったのだ。
弟達は襲われた時は辛うじて退避することが出来たからよかったものの、出来ていなかったとしたら弟達は既にこの世にいなかったであろうと、伺える演技などではない、本気の一撃をメデスは放ったのだ。
・・・もし、IFのことを語るとするならば。
マフィアを潰すことしか考えなかった冥は、恐らく体が壊れなければ日本中・・・いや、世界中の犯罪組織を潰して回ったことだろう。
そしてこの状態は、冥の体に信じられないほどの負担がかかる。
三日三晩戦い続けた後の冥の体は、外見は何事もなかったかのような感じだが、内側はボロボロであった。
筋肉断裂は当たり前。
毛細血管の破裂。
血液の異常配給。
肺は過度に、負荷のかかる呼吸を繰り返したことにより細胞の2割が死滅。
そしてその呼吸法により気管もボロボロ。
ろくに声も出せず、息を吸うのでさえ苦痛。
さらに胃は約1ヶ月ほど固形物を受けてけなかった。
もちろん、その間ずっと呼吸は希薄。
ほぼ植物状態と変わらぬ生活を暫く送ることとなったのだ。
マフィアを潰している冥を見て、人々はこう呼んだ。
ーーーーーー狂戦神、と。
■◇■
ツブスッ、ツブスッ、ツブスッ、ツブスッ、ツブスッ、ツブスッ!
ウデヲヒッコヌイテ、アシヲフミツブシテ、グチャグチャニナルマデツブスッ、ツブスッ、ツブスッ、ツブスッ、ツブスッ!
ズタズタニヒキサイテヤルッ!
「アアアアアァァァァァァ!!!!!」
《スキル〈黒亞流戦闘術EX〉特殊技能【狂神】発動》
《運除く全ステータスを10倍にします》
暗殺者要素はまだ先になりそうです!
タイトル詐欺じゃないですよ!?
出たらいいな〜って思っt (ゲフンゲフン)
出しますので!
ちゃんと!ええ、ちゃんと!