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更新遅くなりました!
書くのを忘れていたレベル表記を追加しました。
「・・・・おお~!現代の技術の高さを改めて体感するな~!」
アバター設定が遂に終わった。
暗闇の中目を閉じながらログインが完了するのを待っているとすぐ傍から噴水のように水が吹き上がる音が聞こえてきた。
水の音を心地よく聞いていると次に聞こえてきたのは騒がしい人々の話し声。
少しうるさいなと思いながら目を開けると、そこには幾人もの人―――――いや、人だけではない。エルフ、ドワーフ、竜人、人型の昆虫、獣人等々・・・たくさんの人種が入り混じっている―――――がパーティー同士で話していたり、屋台で何の肉かわからないが美味しそうな串焼きを焼いていたり、はたまた何か用事を思い出したのか突然何処かへ向かって走り出したりと、様々なことをしていた。
―――――私は、LPOの世界に降り立った。
■◇■
「まずはステータス確認からかな?」
***
《名前》メデス
《種族》影鬼刻神
《職業》弓士・Lv0
《称号》
HP:150
MP:200
STR:90+1
VIT:45+3
DEX:100
AGI:100
INT:30
MAG:25
LUC:200
SP:0
《種族スキル》
〈神級鑑定〉〈力量鑑定〉〈潜影〉〈影化〉〈神威〉〈???(条件不足により未開放)〉
《スキル》
〈隠蔽Lv0〉〈跳躍Lv0〉〈弓術Lv0〉〈ナイフ術Lv0〉〈投擲Lv0〉〈疾走Lv0〉〈格闘Lv0〉〈身体能力補正Lv0〉〈MP回復速度上昇Lv0〉〈闇魔法Lv0〉
《装備》
武器〈初心者の弓〉STR+1
副武器〈なし〉
頭防具〈なし〉
胸防具〈初心者の防具・上〉VIT+1
腰防具〈初心者の防具・下〉VIT+1
腕防具〈なし〉
足防具〈初心者の靴〉VIT+1
アクセサリー〈空き〉〈空き〉〈空き〉〈空き〉〈空き〉
***
「ん?これなんだろう?」
冥ことメデスが気になったのは視界の端で点滅するメール受信を知らせる青いウィンドウだった。
「え~と?」
『黒椏冥様をご確認いたしましたので《黒椏流戦闘術師範代》の称号と《固有スキル》・黒椏流戦闘術EXをお送りいたします』!?
ス、ステータス!
***
《名前》メデス
《種族》影鬼刻神
《職業》弓士
《称号》・《黒椏流戦闘術師範代》
HP:300
MP:200
STR:180+1
VIT:45+3
DEX:100
AGI:200
INT:30
MAG:25
LUC:200
SP:0
《種族スキル》
〈神級鑑定〉〈力量鑑定〉〈潜影〉〈影化〉〈神威〉〈???(条件不足により未開放)〉
《スキル》
〈隠蔽Lv0〉〈跳躍Lv0〉〈弓術Lv0〉〈ナイフ術Lv0〉〈投擲Lv0〉〈疾走Lv0〉〈格闘Lv0〉〈身体能力補正Lv0〉〈MP回復速度上昇Lv0〉〈闇魔法Lv0〉
《固有スキル》
〈黒椏流戦闘術EX〉
《装備》
武器〈初心者の弓〉STR+1
副武器〈なし〉
頭防具〈なし〉
胸防具〈初心者の防具・上〉VIT+1
腰防具〈初心者の防具・下〉VIT+1
腕防具〈なし〉
足防具〈初心者の靴〉VIT+1
アクセサリー〈空き〉〈空き〉〈空き〉〈空き〉〈空き〉
***
・・・え?・・・え?ええ!?
なんでこんなにステータス値が上昇してるの!?
あ!そういえば。確か大体の称号には効果があったはずだから・・・
・黒椏流戦闘術師範代・・・HP・ATK・AGIが常に100%上昇。
・・・ん?・・・え、ちょっと待って。
見間違いでしょ?
・黒椏流戦闘術師範代・・・HP・STR・AGIが常に100%上昇。
見間違いじゃない・・・
序盤から・・・というか初めてまだ30分も経ってないのにこれはどうなのさ・・・?
・・・あ。取得条件が載ってる。
え~なになに?
《黒椏冥様ご本人と確認いたしましたのでこの称号をスキルとともにお送りいたします。》
はぁッ!?
なんで名前を知ってるのッ・・・あ。ああ~あ~ね。わかった。あの糞ジジイのせいね・・・
というかこれは取得条件じゃなくてただの運営からのメッセージでしょ・・・
まあいいか。
とりあえずは持ち物確認。
確認すると、初心者のナイフ×1、HP回復ポーション(小)×10、MP回復ポーション(小)×10、初心者の矢×30、初心者のナイフ×1、帰還の鈴×1の計6種類のアイテムがアイテムボックスの中に入っていた。
「ふむふむ。まあ、まずはやってみようか。え~とチュートリアルは何処で受けられるんだっけ・・・?」
・・・ああここかな?マップに載ってる訓練場がそうだったよね。
そこへ向かって歩き出す。
「ああ、そうだ。今のうちにナイフを装備しておこう」
ステータスのすぐ下の装備欄にある副武器にナイフをセットする。
するとナイフを腕や腰や脚など、どの部分に装備するか尋ねるウィンドウが出てきた。
現実ではいつもスカートに隠れる感じで脚につけていたからここでも脚を選択する。
衣服の中に装備できるのか不安だったけど、流石は自由度を売りにしたゲーム。
問題なく装備できた。
「・・・さぁてと・・・いや、にしても凄いね・・・本当にゲームの世界に入り込んだみたい・・・」
今私がいて、そしてプレーヤーが初めてログインするときに降り立つ街は【冒険の街】というところ。
街並みはまずすべて石造り。
まるで中世の世界だ。
ログインして最初に見る噴水があるのはこの街の中央にある広場だ。
他の場所にも露店はあるけど、やっぱりそこは一番の賑わいを見せている。
マップを見るとどうやらこの街は大きな円のように広がっている城壁に囲まれているみたいでさっきも言った通り中心は噴水だ。
北街、東街、西街、南街に区別されているみたいで北街は主に城門がある。
東街と西街は職人の為の施設が多くて、そして東街にも城門がある。
南街は城が殆どを占めている。
貴族が住んでいそうな屋敷みたいな家もあるから高級住宅街ってところかな?
ちなみに北街も東街も西街も南街も共通して沢山の住宅が建っている。
今私が向かっている訓練所はマップで見る限り、東街の職人街とでもいうところに建っているらしい。
でも改めてよくマップを見てみるとどうやら東街は工房ではなく店舗が多いみたいだ。
勿論、工房と店舗部分が一緒のところもあるけど、そういう店はどの店も西街に近い位置にある。
そして西街からは完全に工房メインだ。
どっちかというとこっちの方が職人街と言えるかもしれない。
あ・・・
「ついた。ここだね」
そこは訓練所・・・のはずなのだが何故か、木でできた看板には盾の上に剣と槍が交差したマークが描かれておりその下にぶら下がった木の板には冒険者ギルドと書いてあった。
「あれ、ここじゃないの?」
何度もマップを確認するがやはり訓練所はここであっているみたい。
「う~む・・・とりあえず入ってみようかな・・・?・・・ッ!?」
暫く悩んでいたが、とりあえず入ってみることにしたけど、突然私のすぐ後ろに人の気配が生まれた。
いくら警戒していなかったとはいえ、突然真後ろに人の気配が生まれるなんて普通じゃありえない。
でも、これでも黒椏家長女で黒椏家一の暗殺者。
驚きながらも頭を一瞬で冷静にすると、私はスカートを翻してナイフの柄を掴み一気に鞘を払いながら振り向きざまに相手の首元を狙って威力を度外視した速さだけの一撃を牽制する意味も込めて放つ。
「どうし・・・ッ!?うわッ!」
ガキィンッ
「え!?ちょっ!私何かした!?」
「あ・・・す、すいません!突然後ろに現れたのでついナイフを振りぬいてしまいました!」
「は、はぁ・・・そうですか・・・」
「それで・・・何か私に用がおありで・・・?」
「あ、ああ!いやね?ギルドの前でずっと立ち尽くしてたから何か困ってるのかなぁって思ってさ」
「あ~。ここは本当に訓練所なのかな~と思いまして。違ったら恥ずかしいじゃないですか」
「なるほどね。最初は迷うよね~。でもここであってるよ。中に受付があってそこで訓練所に入ることが出きるんだよ」
「ありがとうございました」
お礼を言ってギルドに入ろうとすると
「あっ!ちょっと待って!」
「はい。何ですか?」
「私、ティアって言うんだけど、よかったらフレンドにならない?」
そう言いながらティアは私にフレンド申請を送ってきた。
フレンドというのは、どっちか一方が相手にフレンド申請をして、その相手に了承されたときになり、このゲームでは他人と友人になる唯一の方法だ。
勿論、現実では家族でもここでは他人として扱われる。だから、家族だからと言ってログインしたとたんフレンドになっているとかは無くて、新たにフレンド申請をしなくちゃいけない。
それに唯一とは言ったけど、フレンドにならなくても会って楽しく会話もできるしアイテムを交換することにも全く影響はない。
でも、フレンド同士はマップとフレンドリストで今フレンドがどの街に居るかがわかり、そしてそのフレンドと離れた場所に居てもチャットという形で連絡が出来るという機能があるため大抵の人は仲良くなった人や面白そうな人にはフレンド申請を持ちかける。
フレンド申請を了承しながら返事を返した。
「はい、いいですよ」
「というかフレンドになったんだしいい加減その口調やめない?なんか背中がムズムズするんだよね」
「ん?そう?じゃあ遠慮なく。宜しくね」
「なんか口調全然違うね・・・」
「そう?まぁ敬語は小さい頃から習ってたしね」
「敬語を習うって初めて聞いたんですけど。もしかしてメデスってどっかのお嬢様?」
「いやいや違うよ。ただうちの家が特殊なだけだから」
特殊なのは当たり前だろう。
一体どこに一家で代々暗殺者をやっている所があるだろうか。
なお、敬語を習わされたのは情報収集のために潜入するときのためだ。
何処かの王族を殺せなんて言われた日には、とんでもない時間をかけて情報収集を繰り返し入念に計画を練ることだろう。
そのためには王族の開く立食会などにも潜入する必要が出てくる。
そのための完璧な敬語なのだ。
因みに言うと、黒椏家の人間は全員アメリカやロシア、ブラジル、中国などの大国は勿論、他にも何十か国もの言葉をを覚えており、ほぼ全ての国の言葉を使い分けることが出来る。
そして、その地域独特のなまりの再現まで完璧だ。
「へぇ~。そんな家があるんだね~」
「うん。あ、そういえば」
「なに?」
「さっきティアは突然私の後ろに現れた気がしたんだけどどうやったの?これでも気配察知は昔から得意だったのに」
「昔から得意って何さ・・・ま、いいや。それはどうでもいいか。私が突然現れたように感じたのはね、私が普段からよく気配を隠す隠密ってスキルを使っているからさ。だから、突然現れたように感じたのは私がメデスに話しかけようとして隠密を解いたからだよ」
「・・・ティアは現実で武術とかやってたの?
「いや?武術のぶの字もわからないよ」
「はぁ・・・ゲームっていうのは凄いですね・・・」
現実でのあの努力は何だったのだろうか・・・と、なんとなく理不尽を感じるメデスであった。
「・・・?どうかした?」
「あ、いやなんでもないよ!ただ、隠密ってあんなに気配消せるものなのかなって思ってさ」
「いや、正直最初はそこまで消せるわけじゃないよ。でも、これでもβテスターだからね」
「え!ティアってβテスターだったの!?というかβテスターが隠密にどう関係するの?」
「βテスターはね。βテストで育ったスキルの中から全部で5つだけこの製品版に引き継ぐことが出来て、さらには一部装備も受け継げるんだよ!」
「それって凄い特典じゃない?」
「βテスターだからこそだよ!」
「なるほど!」
「「・・・・・」」
「「あはははははッ!!」」
どうやらこの二人、出会って1、2分・・・しかも初見でたとえ一合とはいえ切り結んだ相手とここまで打ち解けるとは・・・
どうやら二人ともかなりのアホの子?のようだ。
「いまなにか馬鹿にされたような・・・」
「うん。私もそんな気がしたよ」
タラリ・・・(汗)
「「・・・まぁ、いっか!」」
やはりアホの子である。
「それじゃあ私もうギルドに行くね」
「はーい。じゃあね~」
「じゃあね~。・・・何か私忘れてる気がするんだよなぁ~。ま、いっか!」
そう言って私は冒険者ギルドの扉を開けた。
・・・・・なお、種族のことについて一切触れることのなかったメデスであった。
やはりアホの子である。