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普通に明るい部屋に一人の女がいた。
その容姿はパッチリと開いた若干蒼と紫が混じった黒の瞳に小ぶりな鼻、ぷっくりと膨らんだ可愛らしい唇で、それらのパーツががこれこそが人の完璧な顔のパーツの配置だと言わんばかりに整っている超絶美少女だ。
髪は黒髪で、あまり長くなく所謂ボブと呼ばれる髪形をしている。
そんな彼女は顎を陶器のような白い肌をした手の親指と人差し指で挟むようにして検索サイトを眺めていた。
(はあ、どこか思いっきりこの力を使える場所は無いかな・・・)
私、黒椏冥は立体ディスプレイを見ながら考えていた。いや、正確には悩んでいた。
(この暗殺技術、いったいどこで使えばいいのやら・・・はぁ)
そう、私は家が暗殺一家な為幼少期から暗殺に関することを習ってきた。
そのためそこら辺のチンピラやヤクザやマフィアとかと殺り合っても余裕で勝利をおさめ、後日その雑魚が行方不明になっているがそんなことは正直どうでもいい。
今一番重要なのは就職先がないことだ。無論、家は政治家とかいろんなところと繋がっているけど親は頼らない。
…いやほんとは頼りたいけど、父親から「お前はもう18歳だ。だから家を出て自分で暗殺の仕事を探せ」とか言われて頼ることが出来ないんだよね。
今は、この前絡んできたマフィアを潰して、そこの金庫から奪ったお金があと3000万くらいあるから、しばらくは何もしなくてもいいんだけど、いつまでも何もしないっていうのもねえ…
と言いながら冥はホログラムキーボードを触り、気になるニュースをチェックしていく。
トンットトンットトンットトトッ
(んっ?これは・・・ゲーム?)
見つけたのは、明日発売のVRMMORPG【Infinite possibility online】
説明を見ていくと、これは、カーミリオンという世界でプレイしていくゲームのようだ。
ただ、気になったのは、遊び方は無限大という謳い文句。
なんとこのゲーム、戦闘スタイルはもちろん、生産方法も完成品までも無限の可能性が秘められているらしいのだ。
最近でこそVRMMORPGも物珍しいことはなくなってきたが、どのゲームも似たり寄ったりな自由度だったらしい。
だから、こんなに自由度の高いゲームなど恐らく世界初だろう。
その為か、初期に作られた10000本は即座に完売。
それを予想していた、ゲーム会社は、続けざまにその次の月、追加で20000本の予約受付を開始。
これもまた、
さらに翌月、追加で20000本の予約を受け付け始めるらしい。
そして今日が、ちょうどその受付開始日だ。
内容によっては予約するかもしれない…
……にしても、面白そうじゃん・・・ん?
下へスクロールしていくと、最後の方に『このゲームはゲーム内貨幣変換システムが導入されています』と書いてあった。
へえーこれが導入されてるんだー。
ゲーム内貨幣変換システムとはゲームで稼いだお金を、現実で使えるデータマネーへと換金できるシステムのことだ。
ただし、このゲームでは、1000Gでデータマネーでの1円になるのだ。
このゲームでの1000Gは、随分と昔に存在したRPGというゲームで、ド定番だったらしい粗悪な鉄の剣が、10本は買うことが出来てしまうので、1000Gとはすぐに稼げるように思えて、地味にそれだけの金額なのだ。
まぁ、変換率が悪いのはきっと廃人抑制のためなんだろうな~
まあそれはさておき・・・これ、使えないかな?
現実だと騒がれて色々面倒だけど、ゲームで暗殺業をしても騒がれることもないし、そういうゲームだと相手側も納得してくれるだろうしね。
このゲームは、PKでさえも街中以外は禁止されてないみたいなので暗殺し放題だ。
よし、次はどうやって依頼を受けるかだね。
堂々と街中で叫ぶわけにはいかないし・・・
路地裏にでも紙を貼っておこうか?
依頼したい方は赤い花を手に持って中央広場に立っていてください・・・とか?
んでもって、それを自分で確認して後で個別に会いに行くとか?
・・・結構いい案かもしれない
よし、採用!
あとで、修正するかもしれないけど、まぁ、これでいいよね。
純粋にゲームが面白そうなのもあるけど、これで稼ぐことは出来そう!
よし!
そうと決まれば早速予約して、明日の朝一に届くようにしてっと・・・完了!
あ~~早く明日になんないかな~