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三位目

 水精霊、地精霊、火精霊についてぽつぽつといろんなことを言ってきたが、一般的に僕らが精霊と呼ぶのはあと光精霊と風精霊の二種類がいる。他にも亞精霊とか呼ばれる影霊や雷霊といった存在がいるらしいが、僕のような村人Aがお目にかかる機会は無いと思う。ヨゼウさんだって会ったこと無いって話しだし。

 さて、ところで光精霊なんだけど……結構昔話に登場するキャラクターだ。幼い子供に精霊と言えば? と聞くと、だいたいの子供が光精霊か火精霊と答えるだろう。特に訓話に登場して、貧しくとも心の清い子供が光精霊に見初められ幸福を手にし、それをねたんだ者が光精霊を横取りしようとするがうまくいかず最後は闇の中に置き去りにされる……なんて筋書きが一般的だ。かつて農民の子供と取り違えられた貴族の子供が、光の精霊のおかげで生家に帰ることが出来る、など他にも何パターンかあるが、とにかく大事なのは『心が清い者を気に入り、そうでない者を嫌う』とされている点だろう。


「実際は、別に人間の善悪なんかさほど気にしちゃい無いらしいけどね」

「それ、なんで僕にバラしちゃったんですか」


 そう語られるのにはそれなりに理由がある。彼らの力がとても……その、犯罪に適しているからだ。彼らの作った光は、彼ら自身と彼らが見初めた人間にしか見えない。そして、(程度によるが)物体を透過して光を届けることができるのだ。武器とともに送り出せば武器庫の場所が、宝とともに送り出せば宝物庫の場所が……などと言うのは詩の聞き過ぎかもしれないが、光精霊とはそう言う物なのだ。


「だって未だに一度も見たこと無いんだろう?」

「まあそうですけど」

「まああんたに限った話しじゃないけどね。おかげで光精霊は原型のものしかいないくらいさ」


 若さんは? と聞いてみたかったけど、寸前で思いとどまった。また嫌な顔をされそうだからね。実際のところどうなのかは……結構気になる。てっきりだから・・・彼女が弟子として選ばれたのだと思っていたし。まぁ、単にそれ以外の精霊に好かれやすかったのかもしれないけど。しかしこんなことがいつまでも気になるとは……うーん、未練がましいぞ僕。


「さて、先に上がってくれるかい? 最近扉を開けるのがしんどくてね……」


 しかしそんな光精霊のこともヨゼウさんはちゃんと見えてるんだよな。すごいよな。先月に光精霊のいる屋根裏部屋に上がろうとして梯子踏み外してたけど。その後屋根裏の扉に頭挟まれてたけど。季節によっては火精霊の部屋と同じくらい熱い屋根裏部屋で倒れてたけど。

 弟子とったのにな! 少し落ち着いてほしいと思っても良いかな! 僕いなくなった後大丈夫なんだろうか。本当のところ。


「わかりました」

「頼んだよ」


 ちなみに光精霊の部屋は真っ暗だ。他の部屋のように、精霊が留まるであろう道具とか、環境とか、そう言った物は一見して見当たらない。この部屋に来てやることは、いつもただ箒で履いて雑巾で床を磨くだけだ。あえて言うなら、どうやって運び込んだのかは知らないが床は一面石畳で、その表面がピカピカになるまで磨かされる……まぁ部屋にひかりを一切入れないから、ヨゼウ様がピカピカになったと判断するまで、だけど。


「というか、僕一人で部屋の中覗いて終わりで良いような……」

「いいからとっとと行くんだよ」

「はい……」

「……じつはねぇ」


 はい?


「あの子がお前の風精霊連れてっちゃったんだよ」


 バタン、と扉が閉まった。おい、どういうことだ。

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