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「めでたし、めでたし。」じゃ終れないっ!  作者: 律子
第2章:物語が終わったら
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7.王太子殿下との新婚生活

殿下と結婚してからというもの、日が高く昇るまでベッドに横たわっていることが多い。ご想像通り、夫婦のゴニョゴニョのせいだ。一つ言わせて。あんなに大変な事をするなら前もって具体的に教えてほしいっ!心構えって大事だと思うんだ。ま、予備知識はほとんど無かったけれど、万事滞りないのでよしとする。

「お嬢様そろそろ起きられませんと昼になりますよ。」

軽いノックと共にカナンの声がする。彼女は殿下と結婚してから私付きの侍女になったうちの1人だ。他の侍女が御方様と私を呼ぶのに、彼女はなぜかお嬢様と呼ぶ。私は人妻になったのに。まぁ、「御方様」と言うのもよく分からない呼び名なので、どちらかというと聞き慣れている「お嬢様」の方がしっくりくるのだけれど。

カナンの声に返事をすると音を立てずにドアが開いてカナンが寝室に入ってきた。カーテンと窓を開けてから、背中にクッションを当てて座らせてくれる。一度座ってからよたよたとベッドの端のより、サイドテーブルに置いてある水を飲もうとすると、カナンがコップを手渡してくれる。少しさびしそうな困った笑顔が添えられている。

「おっしゃって下さい。」

これが、彼女の口癖だ。おっしゃって下さい、ご命令下さい、お使い下さい。1日に何度となく聞く。城に住みはじめてけっこう経つが、未だに人を使う事に慣れない。何でもさせられた実家での暮らしのお陰で、自分でやる癖がついてしまった。この癖のせいで、一部の侍女に私は侍女嫌いだと誤解されている。

「ごめんなさい。つい。」

素直に謝ると少し年上の私の侍女は微笑んでから、ゆったりとした動作で頭を下げた。

「殿下から、お花が届いております。」

「あら、今日は何の花かしら。」

「今日は黄色と赤のマーブルのチューリップです。」

「そう。まず着替えてからお返事するわ。」

殿下はマメだ。お忙しい身だろうに…3日とあけずに花やお菓子などちょっとしたプレゼントを贈ってくれる。時々だが、午後のティータイムに呼ばれる事もある。

――本当ならば片時も離したくはないのに。――

お褥の上で囁かれる甘いセリフが嘘ではないと証明してくれる。


愛されているなぁと頬をゆるめる。束縛?そんな風には思わない。大好きな人の側で、その人の事だけ考えていられる幸せに感謝している。

私の日々は殿下一色だ。何かするべき仕事は無いのかと聞いたら、殿下の為に日々をお過ごし下さいと、それが私の仕事だと教えられたから。

朝、日が高くなってから起きだす。身支度を整えて、殿下から頂いた花を愛でながら、ゆっくりと朝食兼昼食をいただく。食事が終われば殿下にお礼の手紙を書く。その後は昨夜の疲れを取るべくマッサージを全身に施してもらいそのまま少し昼寝をする。起きて午後のティータイムを楽しんでから、その日の気分で庭を散歩したり、本を読んだり、刺繍をして過ごす。夕方から2時間程時間をかけて湯浴みをし、髪や肌の調子を整える。夕食は殿下と共にとることが多い。食事中は昼間読んだ本のことや花壇の花の様子を話す。その後、殿下が湯あみをされている間に私も身支度を整えて、お褥に侍る。お褥での出来事は内緒だ。……むしろ、余裕が無くてあまりはっきりとした記憶が無い。そして、気づかないうちに眠って、遅い朝を迎える。この繰り返し。

幸せすぎて怖い。

そんなことを考える隙間もないくらいに、私は殿下に溺れていた。

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