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「めでたし、めでたし。」じゃ終れないっ!  作者: 律子
第1章:物語ができるまで
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3.要は考えようってこと。

姉様達にいじめられ続けて5年。父は仕事の為、継母はトーマスの教育の為という名目で王都の中心にある別邸から帰って来ない。私と姉様達は別邸には6人で暮らす十分な広さが無いからと、郊外に有る屋敷に残されていた。3年ほど前に両親が住まいを別邸に移し、本格的に帰ってこないとなると、姉様達はここぞとばかりに私の物を全て取り上げ、屋根裏へと追いやった。それ以来私の普段着は使用人の制服になった。ショックで涙に暮れた事もあったけれど、私が悲しめば悲しむだけ彼女らは喜ぶと気付いてからは、みじめだとか寂しいだとか考え無いようにした。幸い母の遺品や思い出の品はサーラに預けていて無事だったし、メイド服は動きやすいし、使用人の皆は私の味方だし、掃除や料理なんかは案外面白いし、合間を見つけて淑女教育は受けられたし、姉様達の悪口や嘲笑を気にしなければそんなに悪い生活でも無いと悟った。悟って慣れると、意地悪が酷くならないように適度に悲しんでいるフリをして、やり過ごすことを覚えられた。5年も毎日同じような嫌がらせをし続けられる彼女らにある種の尊敬の念すら抱く。


私は15歳になり成人を迎えた。

本来なら社交界にデビューするはずだが、父は屋敷に一度も帰って来ることは無く、夜会に誘ってくれるでも無い。時々社交界に出る時に使えるからと送られてくるプレゼントも姉様達に取り上げられてしまって、私はドレスどころか普段着にも事欠く有様だった。継母も5歳になったトーマスに良い家庭教師をつけることに躍起になっていて、私の社交界デビューなど気にも止めていなかった。むしろ、3人目の娘が居ることを覚えていたかどうかも怪しいと私はにらんでいる。


そんなある日お城の舞踏会の招待状が届いた。成人しているので私にも招待状は届くのだ。例によって例の如く、姉様達は私の招待状を燃やしてしまったけれど、その時は御者のチャールズが手紙を受け取り、気を効かせて封筒の中身をすり替えておいてくれて、本物の招待状が無事に私の手元に届いた。舞踏会に行く準備はとてもじゃないけど出来ないだろうが、チャールズの気持ちが嬉しくて私は招待状を大事に保管した。自分で持っていてはいつ姉様達に見つかってダメにされるか分からない。


だから彼女達には思いもよらない所へ。



ルビー姉様は私に下女の真似事をさせるのが好きだ。掃除や水汲み、料理の下拵えなど様々な事をさせられるが、彼女達の一番の楽しみは私に買い物させることだった。庶民と同じ様な姿でたくさんの人の前に出ることで私のプライドが傷つくのだと信じて疑わない様だった。


本当に、お馬鹿さん。…っと失礼。つい本音が出てしまった。


私は町娘の格好をして市に行こうが、村娘の格好をして畑を耕そうが、貴族としてのプライドが傷つくとは考えてないので、彼女の嫌がらせは完全に失敗している。むしろ、気分転換ができるから、買い物を言い付けられるのは大好きだった。気付かれては困るので姉様達の前ではいつも泣きそうな顔で肩を落として扉を出ていくようにしているけれど。

そして5年の間にたびたび市井に出て街の人々と交流できたおかげで、友と呼べる存在が出来た。これまで、あっけらかんとした友人達に随分励まされたものだ。


はじめて無事だった招待状は友達の一人に託した。

投稿初日だけで600アクセスいただきました。

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