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「めでたし、めでたし。」じゃ終れないっ!  作者: 律子
第2章:物語が終わったら
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閑話:後宮の日常―5年目―

ちょっと短いですが、きりの良い所で切ります。

早いもので後宮に来てから5年がたった。


昨年、殿下は陛下になった。先の国王様が隣国との戦争による忙しさに体調を崩され、それを理由にその戦争の終結時に王位を譲られたのだ。28歳と言う若さながら、殿下は自ら戦場に立ち、戦争の終結をする事で内外に王としての力量を認めさせた。英雄色を好むというが、あの甘い顔立ちのロマンチストな殿下(今は陛下)に、英雄の資質があったというのだから人は見かけによらない。


即位のすぐ後に、正妃様に男の子が生まれた。それを期に陛下の好色も落ち着きをみせている。今は第2子を身籠っている正妃様と紅方様(あかのかたさま)翠方様(みどりのかたさま)の3人の姫以外にはお渡りが無い。自主的に後宮入りしていたお手つきの無いお嬢様方は、お暇を願い出て実家に帰る者も少なくない。一度でもお手がついていたり、まだ寵姫の願望をすてられなかったり、帰る場所が無い姫達は残っているが、あの異常に多かった後宮の住人も一つの宮に3〜5人程度まで減った。


人の少なくなった、蒼玉宮の片隅での暮しは快適だ。私は以前より風通しの良くなったこの場所でのんびり暮らしている。貴族令嬢とも何人か交流を持ち、友人と言えるような関係の人もできた。


私の周りはエレノア様を筆頭に暢気なタイプの側妃が多い。陛下の寵愛や贅沢に興味が無く、かといって殿方との出会いを夢見るでも無く、穏やかに好きな事をして日々を過ごせれば満足…という後宮の住人らしからぬ思考の持ち主達だ。彼女達とは蒼玉宮のサロンでよくお茶会をする。


「白雪姫って好きじゃないの。だって普通のお姫様じゃないわ。」

「えぇ、どうして?リンゴ食べちゃう下りなんか世間知らずっぽくていいじゃない。」

「だからよ。毒味もさせないで食べるなんて王族にはあり得ないでしょ。しかも、小人の家で家事するのよ?できるはずないわ?」

「いや、だからそれは出来ないなりに頑張って…ということよ。ねぇ?」

「ねぇって言われても…」

「またそのお話なの?」

「だってマリエッタが強情なのよ。」

「だってエレノアが頑固なのよ。」

「ほらほら、二人ともふくれないで。」

言い合うエレノア様とマリエッタ様の間に挟まれて右往左往するマーガレット。呆れてたしなめるリシャーナ様と面白がる私。私たちはいつもこんな風で、どうでも良いことを話しては笑ったり拗ねたりを繰り返す。陛下からも表社会からも忘れ去られたようにひっそりと。


それでも、お母様が亡くなってからというものここまで凪いだ気持ちでいられた事はない。だから、私はどんなに下らなくてもこの時間を愛していた。


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