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〜Side story〜 好きになった理由※ちひろ視点


〜Side story〜



時刻は8:45


まだ集合時刻の9時にはかなり早いので、春香は来ていない。


図書館の前のベンチに私と里沙と美鈴の三人で座りながら話しをしていた。


「ふと、思ったんだけどさ」


「んー?何ー?」


里沙がこちら側を見て話す。


「ちぃにまだ聞いてないよね……」


「えっ?何を……?」


私には分からなかった。


「あーそういえば聞いてないよねーー。私も聞きたいなーーー」


「だ……だから何を?」


「「ちぃ(ちひろ)が春香ちん(ちゃん)を好きになった理由きっかけだよ(だけど)」」


見事に二人の声が重なる。


二人にどこと無く熱い視線を送られた。


……そ…そんなに気になるんだ………




そういえば、何時から彼女を好きになったのだろう?


確かあれは……中2の春だったっけ…………










今日から新学期、面倒臭いな…………


学校なんて行きたくないよ


もう少しだれていたい。


別に友達が居ないとかそうゆう訳じゃない。


春休みがとても短く感じただけだ。


久しぶりに制服に手を通し学校へ向かう。


「……クラス何組〜?」


「お前は〜?」


男子生徒の声が聞こえた。


あぁ。そっか。忘れてた


今日から2年生でクラスも変わるんだ………。


昇降口に貼ってある紙を眠い眼を擦りながら捜す


えーっと……櫻井 ちひろは……?


2年3組


38番 紺野 香澄


39番 櫻井 ちひろ


40番 白鷺 春香



あっーーあった。


えと前の子が紺野さんで後ろの子が白鷺さんかぁ


うん。二人とも知らない。


ん?紺野 香澄?聞いたことあるな……。確か……


不登校の子?


じゃあ前の人居ないじゃん。


嫌だなぁ………。


後ろの子と仲良く出来るかな?


不安を抱えながらも教室へ向かう。


今までは一年生だったから教室も一階だったけれど、二年生の教室は三階にある。


はぁ……。めんどくさ……


億劫だけれど、ゆっくりと階段を上る。


ダダダダ………


ん?凄い勢いで後ろから接近してくる。


「おはよう。ちぃ釣れない顔してんね」


「んーっ、そう?」


まぁ、実際そうなんだけど。


「ちぃとはクラス離れちゃったけど、三年ん時に期待する!!!!元気でやれよ」


「それじゃ」と言い残し里沙は駆けて行ってしまった。


何であんなに走ってんだろ?何か良いことでもあんのあれ?


あれこれ考えてる内に教室に着いた。


ガラガラと音をたてて扉を開ける。


自分の席を見つけ出して足早に座った。


ん……はぁ〜……暇……


ボーッと外の景色を眺めてたりしていると後ろからチョンチョンと軽く肩を叩かれた。


!?


勢いよく振り返る。


「僕、白鷺 春香しらさきはるか今日から宜しくね。君は?」


「え……ぁ櫻井 ちひろ(さくらいちひろ)宜しく」


不意打ちに色んな意味で驚いた。


彼女の笑顔に何故か目が離せなかったし。


「櫻井さんは何か部活入ってるの?」


ふと投げかけられた問い。けどーーーそれよりも


「“ちひろ”ちひろでいいから。私も春香って呼ぶ。……それと、部活は入ってない」


「奇遇だね。僕も入ってないんだ。ちひろと同じ」


やはりそこでもニコニコと笑う彼女。


てか………僕?


今時流行りの僕っ娘?


だが当の本人は全く気付かずに何のこと?といった表情だ。


「あ、もしかして、僕って一人称嫌だった?」


彼女はこう言ったことに慣れているのだろうか?


ちひろはまだ何も言ってはなかったが、ちひろの言いたいことを理解したようだ。


「嫌じゃないよ。個性だし。良いと思う」


「え……そうかな?有り難う…」


予想外の返答に顔を赤らめる春香


よほど褒められたのが嬉しかったのだろう。


「………つかさ…」


ちひろが言葉を濁していく。


「ん?」


「怖く……ないの?」


「え?何が何が?」


………気付いてない?


「や、やっぱ何でもない………」


前髪を伸ばして分けていたら遺伝で眉毛が薄いのもあって、皆に少し怖がられていた。


だから……彼女も怖いと思ってるんじゃないかって。


けど、違った。


そんな事を考えてたら、綺麗な真っ黒の髪が目の前に見えて……私の色とは違うその髪に強く惹かれた。


「ねぇ、髪……綺麗な色だね私とは違う真っ黒で」


彼女の髪を触ってみた。


指がさらさらと流れてく。


純日本人って感じがする。


私が髪を触っていると彼女は小さく「恥ずかしいよ」と告げた。


何故か耳が赤かった。


「ちひろの髪の色、僕は好きだよ。柔らかそうな栗色…………それに…」


私の手を彼女が包んだ。


「凄く手が冷たい。………大丈夫?」


温かい手に驚いた。私の手は冷たかったんだと初めて気付いた。


「だっ……大丈夫」


温かいその手にずっと触れていたいなんて言えなくて、彼女の手を振り払う。


けれど、温もりが恋しく思えた。


キーンコーンカーン


お馴染みのチャイムの音


新しい担任が入って来る。


眼鏡をかけた男の先生。


興味ないなぁ。


「では、始業式が始まるので体育館へ移動して下さい」


………怠っ………


廊下に整列して体育館へ向かう。


体育館に着いて………


当然、私が校長の話を聞く訳がない。


ボーっとしてたら終わってた。


ダラダラと教室へ戻って帰宅の準備をする。


今日は荷物無いから軽いななんて思いながら。


HRも終わったし……帰るか。


………気軽に話しかけられる相手が居なくて


何か物悲しかった。


二人が居たから……毎日があんなに楽しく思えたんだ。


胸が苦しくなる。


本当はこうなることを予想してた。


……だからこそ、学校へ行きたくなかった。


はぁ……………


HRが終わった後の教室にはあまり人が残っていなかった。


皆、楽しそうに誰かと談笑してるけど………


一人ぼっちは私だけ。か


春香は?


後ろを振り返る。


けれど、宙を切ったようにそこに居たハズの彼女は居なかった。


机に頬杖をついて、またため息を吐く


「ため息ばかりつくと幸せが逃げちゃうよ?」


後ろから突然声がして、けれど、彼女は春香は居るハズなくて………居なかったし。


だから、私の造りだした幻聴だろうと解釈した。


はぁ……………


幻聴が聞こえるなんてどうかしてる。


益々自分に嫌気が差した。


「ほら、またため息……ドアの前を見て、君を待っててくれてるんじゃないの?」


ドア?教室の扉の奥を見た。


廊下には美鈴と里沙が二人で何やら楽しそうに会話している。


けれど、二人はその場を後にしようとはしない。


誰かを………私を待っててくれてる?


幻聴にしては変だと感じた。


後ろを見ると……反対側の教室のドア付近に春香は居て


「じゃあね」とこちらに手を振りながら何処かへ行ってしまった。


ため息ばかりついてたら、美鈴と里沙に悪いよね。


教室から出た。


すると、「遅いよ〜」とか「ブルーだな…」とか二人が声をかけて来た。


やっぱり、待っててくれてた。


ブワッと一気に涙腺が緩みそうになる。


ヤバい……泣きそうだ。


心細かったから。


本当はずっと、寂しかったから。


「ちひろだけ、クラス離れちゃったなぁ……」


うん。本当、残念だわ


うちの学校、3クラスしか無いのに………


「また次があるさ」


美鈴が慰めてくれた。


でもやっぱ、二人は仲良いなぁ。なんて思う。


さっき、里沙が勢いよく&元気そうに笑顔で階段を上っていったのも、二人が同じクラスだったから?


「うちら、1組だからちっと遠くなるけど、休み時間とか遊びに行くから」


里沙がちょっと嬉しい事を言ってくれた。


「遊びに行く?そんなの当たり前じゃん」


美鈴もだ。


良い友達をもったな。


二人に出会うことが出来て本当に良かった。


なんて思った。里沙が勢いよく&元気そうに笑顔で階段を上っていったのも、二人が同じクラスだったから?


「うちら、友達じゃんよ。当たり前だからね。………体育祭とか合唱コンとか敵だけどね」


嬉しい言葉。の後に余計な一言。


美鈴らしいな。なんて思う。


変わらないで居てくれる事、クラスが離れても何時も通りに接してくれるそんな当たり前の事が嬉しかった。


「敵は一言余計だよ?美鈴」


「んっ?ごめんごめん。半分冗談、半分本気」


軽く笑いながら美鈴が答える。……敵なんだ…。


「ちひろ、敵になっちゃうの〜?美鈴らし〜」


隣で里沙が爆笑している。


「……その前に友達。大切な」


それを横目で見た美鈴が不機嫌そうにすると、何気なく告げた。


「うん。そうだね」


美鈴と里沙は普段、おちゃらけてる癖にこういう時だけ妙に真剣になるからタチが悪い。



本心は誰にもわからない










始業式の日のことを淡々と二人に告げた。


「……ちひろ、それ理由になってない」


「うん。同感だね〜」


………確かにそうだ。


けどこの日の後は何時もの日常が長ーく続いてただけだ。


だから、一つ、思うことがあった。


「長く語った後に悪いんだけど、理由とかきっかけ無いかも知れない。気が付いたら……惹かれてた」


「ふむふむ。ちひろは春香ちんにマジでベタ惚れだったって訳だね」


「惹かれてたって何か運命的だね〜」


「……るっさい。……好きなんだから仕方ないじゃんよ………」


……好き。なんだから


「ねぇ、ちひろ?話してる間にもぅ待ち合わせ時間とっくに過ぎちゃってるよ?」


「確かに。もう9時10分だし変だね」


携帯の画面を見てみる


時刻は9:10を表示していた。


「春香ちんって遅刻するような子じゃないよね?」


春香は普段、遅刻をするような人じゃない。


待ち合わせの5分前には必ず居る感じの人だ。


それに、遅刻するにしても連絡くらい入れるはず


電話もメールも無いのは変だと思った。


まさか………事故にでも遭ったとか?


「ちひろ、顔が険しくなってるよ。取り敢えず、落ち着いて」


美鈴の声が頭に消え入る。私だって落ち着きたい。


けど、それ以上に不安で心配だから。


即座に電話をかけてみる。



白鷺 春香


090-****-****



お願いっ。電話に出て……春香………


プルルルルル


プルルルルル


コール音が響く。


けれど、繋がらない。




少女の不安は更に募っていく。





〜Side story〜 好きになった理由※ちひろ視点


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