〜Side story〜 パスタを食べながら
〜Side story〜
先程行ったお店に再び向かう。
お昼の時間帯からズレていたのか、直ぐに座席に座る事が出来た。
お腹すいたぁ……。
勿論、僕の隣にはちひろが座っている。
通路側から僕、ちひろ、向かいには峯岸と神野が着席している。
峯岸と神野はちひろの友達で、何時も三人で行動しているようだ。
本名は峯岸 里沙と神野 美鈴
峯岸は元バスケ部のキャプテンでバリバリ体育会系だし、神野は吹部でSaxを吹いてて、まぁ、文化系だ。
因みに、ちひろの本名は櫻井 ちひろ(さくらいちひろ)だったりする。
僕は白鷺 春香
何の変哲もない名前だと思う。
白鷺の“鷺”って字、書くの大変だけどね………………。
「このお店はね、パスタが美味しいんだよ」
ちひろが僕の方を向きながら話しかけて来た。
「オススメは、バジルかな…………あ、でもでも、パフェも美味しんだよ?」
「オススメは……」
「はいはい。チョコバナナだろ。それより〜〜なんか報告があるんじゃないすか?」
店員さんが置いてったコップ一杯の水を飲み横を見れば、ちひろが大変困惑していた。
どうやら、峯岸の言葉に反応しているらしい。
……僕も返答に困るけど。
彼女が友人に相談する程、僕を好きでいてくれたコトが嬉しく感じた。
「あーっ、それ私も聞きたーい」
神野も知りたいようだ。
「え、えと……えっとぉ……あれがああしてこうして………」
「あれがああしてこうして………ふむふむ……」
峯岸が腕を組み、何度も頷く。
「……って分かるかい!!!!」
神野がツッコミを入れる。
ふむ、どうやら、相当仲が睦まじいらしい。
「んでー、正直なトコロ?」
「トコロ?」
峯岸に神野が合わせる。
「と、とりあえず、注文しないと……注文」
ちひろはわざとらしくメニュー表を広げ
「何にしよっかな〜」
等と呟いている。
僕は……二人のテンションについて行けてない。
「んじゃ〜〜春香ちんに聞いちゃおっかなーーーっと……」
峯岸の言葉を聞いて、メニュー表から少し頭を出して、僕をチラチラ見つめてくるちひろ。
チラチラ所じゃなくガン見で見てくる峯岸と神野。
「春香ちん、最近どーなの?」
「付き合いたてホヤホヤでしやわせ〜って感じかな?」
「………と、りあえず、注文したら……教えますから……」
俯きながら言った。
ピンポーン
「はい、ご注文がお決まりでしょうか?」
告げた途端、神野が即座にベルを鳴らした。
ああっ、もぅ……店員さんが来ちゃったじゃないか………
「苺パフェ下さい」
「んー、じゃ私もソレ食べるーっ」
峯岸と神野はパフェを注文している。
「僕はバジルパスタと、チョコバナナパフェの特大サイズお願いします」
小声で隣のちひろに
「一緒に食べよっ?」と囁いてみる。
ちぃは「うん」と照れながら言ってくれた。
「私もバジルパスタお願いします」
ちひろも注文する。
「畏まりました。バジルパスタ2点と苺パフェが2点、チョコバナナパフェの特大サイズが1点で宜しいですね?」
全員が意識表示に頷く。
店員さんは厨房へ戻って行った。
「ちひろが何も言わないから、春香ちんにちひろがどれだけベタ惚れだったか教えてあげよっか?」
不意の質問に、僕の心臓がドキリとした。
「や……止めてよ里沙っ…………」
「嘘うそ、冗談。そんな顔しないでよ…」
ちひろは、形容しがたい表情をしていた。
暫くして、店員さんが近づいて来た。
「苺パフェをご注文の方」
お盆に苺パフェを二つ載せている。
「あっ、はいはーい」
パフェが来た事で喜んでいるのは神野だ。
「私も」
峯岸が控えめに告げる。
パフェよりも話が気になる、という表情を浮かべながら。
店員さんは再び、厨房へ戻って行く。
次は僕らのバジルパスタを持ってきてくれるだろう。
案の定、数分後には同じ店員さんがお盆にパスタを載せてやって来た。
「パスタのお客様はーーー」
「あーっ、はい」
まずは僕が皿を受け取り、ちひろの前に置く。
続いて僕の分を貰うと店員さんは料金が書かれた紙をくるっと丸め、スタンドに立てた。
「ごゆっくりどうぞ」
優しげな声と共に店員さんが去って行く。
パスタの良い匂いに急に食欲が湧いて来た。
「いただきます」
パクッ…………
バジルの独特の香りが鼻を刺激する。けど、しつこくなくて…麺も食べやすかった。
「美味しい」
「やっぱ、そーだよね」
峯岸が満遍の笑みで笑いかけてくれた。
「とりあえず、良かったよ無事、二人が付き合えて」
神野がコメントを述べる。
「ほんと。ちひろのこんな照れた表情、初めて見たし」
峯岸も続けた。
「照れ……てる…かな?」
ちひろが思いっきり照れながら言う。
「照れてるよ。ちひろ可愛いーーー」
「か、可愛いってゆーなー!!!!!!!」
「可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い……」
「二人共っ!!」
目前で繰り広げられる光景を眺めながら、僕は本当に仲が良いんだなと感じた。
「つか、春香ちんの私服、……まじでカッコいんだけど…」
「へっ……?」
予想だにしていなかった事を言われ………驚いてしまう。
「惚れんなよ〜っ?」
神野がわざとらしく告げた。
「バーカ。うちは、彼氏いるしぃ」
峯岸が言った言葉に神野が表情を曇らせたように見えたのは気のせいだろうか?
その後も談笑を重ね、パスタを食べ終えた僕らの前にはチョコバナナパフェが現れた。
「おおっ、なんか威厳ある……実物初めて見たわ…………」
「でかくね?」
目を見開かせてる峯岸と神野。
別の意味で目が見入らいてるちひろ。
「ほら、あ〜んってしてもらいなよちぃ〜」
「あ〜んって………」
峯岸の言葉に押されてか、僕はスプーンを手に取る。
そしてパフェをすくいちひろの前まで持っていく。
「あ〜ん」
ちひろは嫌々という感じだったけど、しっかりと食べてくれた。
ほんっと、可愛いなぁ。
その後は巨大パフェを何とか4人で食べ終えた。
ただひたすらと………溶けだす前にって黙々と食べ続けた。
僕は峯岸と神野の二人とアド交換を済ませたりもした。再び談笑を重ねて、お開きとなった。
会計を済ませ、外に出る。
ちひろと神野は食べ過ぎでほぼ動けない状態だった。
僕と峯岸、ちひろと神野という微妙なペアで道を歩く。
「ねぇ、はるかちん?」
「ん?」
「一つだけ確認しときたい事があるんだけど………」
何だろう?
「何?」
峯岸が真面目な表情をしていたから、僕も自然とそんな表情になる。
彼女の横顔を見つめる。
「ちひろと付き合ったの、同情とかじゃないんだよね?」
低く、重い声だった。
そんな訳があるハズないじゃないか。
「違うよ」
ただ一言だけ返した。
彼女にはそれで充分なのか、「そっか」と述べると何時も通りの峯岸に戻っていた。
ちひろが本当に好き、だから僕らは付き合ってるんだ。
そうだよね?ちひろ……
後ろで歩くちひろを見やった。
ほら、やっぱり、胸がドキドキする。
“好き”という気持ちに心が一杯になる。
「春香ちん、ちひろを宜しくね?」
「勿論。必ず幸せにしてみせるから」
誓いの日は、突然に……
〜Side story〜 パスタを食べながら
終