*三章*
「「いってきまーす!」」
「いってらっしゃーい!」
空と仕事しているお母さんを家に残して、私とお姉ちゃんは外に出た。
物置小屋に行ったお姉ちゃんは、しばらくすると自転車を押してきた。
「よし、行くか」
「うん」
バス停まで、お姉ちゃんと一緒に登校する。
はぁ、今日の放課後は暇だから楽しみっ。
最近の芸能界の情報をお姉ちゃんに話してると、あっという間にバス停についてしまった。
バス停では、真央が暇そうに立っている。
「真央ちゃーん!」
「あ、舞!」
声をかけると、真央ちゃんも私に気付いて明るい声を出す。
「じゃあ、私は行くね」
「うんっ」
「いってらっしゃーい!」
お姉ちゃんは自転車に乗って、爽快に行ってしまった。
後は、バスが来るのを待つだけ。
「今日、凛先輩からメールきてるの見た?」
「見た見た!放課後、いつものカフェでお茶しよっ」
「うんっ。私も賛成したいんだけど、その前に本屋に寄りたいな…」
「いいよ!舞の頼みはなんでも聞いてあげる!」
「ありがとぉ、真央ちゃん!」
そうこうしているうちに、いつものバスが目の前で静かに停車した。
春といっても、朝はまだまだ肌寒いからバスの中があったかくて嬉しい。
「それよりもさぁ、新曲なかなか売れないよねぇ」
「今に始まったことじゃないけど、私達自身人気ないし…」
「ぐっ…。舞、その言葉重い…」
「あ、ああ!ごめん!」
でも、アイドルチーム『ココロ』にスカウトされて1年経ったけど、見事に売れない。
最近は、やめようかな、って考えてたりして…。
でも、それでもやめられないのはやっぱり歌が好きだからなんだろうな…。
いっそのこと、歌自身諦めてしまおうか…。
「…い、舞っ……舞!」
「え!?」
「もうっ、勝手に自分の世界に入るなって!」
「ご、ごめん…」
しょぼんと足元を見る。
昔からの癖だ。怒られたり失敗すると、すぐに足元を見てしまう。
「大丈夫だよ!こうやって売れなかった人たちはいっぱいいるもん!私達もいつかは売れるよ!」
「真央ちゃん…」
「アイドルがそんな悲しそうな顔したらダメだって!私達は私達のペースで頑張ろう!」
「…うんっ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
いつものバス停で降りて、5分くらい歩くとすぐに私達が通っている中学校にたどり着く。
桜並木を歩いていくと、大きい中学校がすぐに目の前に現れる。
いつみても、この威圧感はすごい…。
「舞、今日の一限目は何だっけ」
「確か、社会だったと思う」
「ゲッ!あの先生マジ怖いんだよなー!」
真央ちゃんが心底嫌そうな顔をする。
そういえば、真央ちゃんはスポーツ万能だけど勉強はできないって言ってたっけ…。
私は勉強嫌いじゃないけど、スポーツは全然できないよぉ…。
今日、三限目は体育でバレーだっけ…。
ううっ…。憂鬱…。
「舞!早く行こうぜ!」
「う、うんっ」
真央ちゃんに腕を掴まれ、できるだけ足手まといにならないように走る。
それでも、真央ちゃんの足のスピードにはすぐに疲れてしまうよ…。
教室についただけで、私はすでに虫の息。
真央ちゃんは全然息が上がってない。すごいなぁ…。
「舞ー。今日も社会と数学分からないとこ教えてくれ!」
「うん、いいよ」
「やったー!持つべきものは天才の親友だっ!」
「真央ちゃんったら…」
でも、嫌な気はしないんだよね…。
トロイ私を、親友っていってくれる真央ちゃんが大好きだよ。
「あーら、舞さんおはよう」
「虫の息だけど大丈夫ー?アイドルは本当に大変なのねー」
私と真央ちゃんの隣を通った女子たちは、それだけ言うと笑って言ってしまった。
よくあるんだよなぁ、今みたいなこと…。
「気にすることないよ舞。あいつら、舞が可愛いからって妬いてんだ!」
「うん、ありがとう、真央ちゃん…」
心配かけちゃ悪いよ。
しっかりしなきゃ…。