35兆1,843億7,208万8,832個のスライム
朝起きるとスライムだった。
目も鼻も口もない。手足もない。半透明の青い身体が、ベッドの上でぷるぷると震えている。
「私は何だろう?」
そう疑問を持った瞬間、身体が二つに分かれた。
どうやら疑問を持つと分裂するらしい。
「どうして分裂するんだろう?」
四匹になった。
「元に戻る方法はあるのかな?」
八匹になった。
疑問を持つたびに倍々に増えていく。しかし、不思議なことに全体の大きさは変わらない。一匹一匹が小さくなっているのだ。
「このまま増え続けたらどうなるんだろう?」
十六匹。
「そもそも、私は何のために存在しているんだろう?」
三十二匹。
疑問を持つことをやめようと思った。しかし、疑問を持たないというのも難しい。
そして、ついに四十四回目。
そのとき、私の数は約17兆匹になっていた。
最後の疑問が頭に浮かぶ。
「私は、何になりたいんだろう?」
私は約35兆匹になった。
その瞬間、すべてのスライムが一つにまとまった。
手ができた。足ができた。目ができた。口ができた。
私は人間になっていた。
鏡を見る。そこには、見慣れた私の顔が映っていた。
私はしばらく自分の姿を眺めていた。
そして、ふと思った。
「次の疑問を持つとどうなるんだろう?」
◇
◇
続編:『続:35兆1,843億7,208万8,832個のスライム』




