最強だけど出勤したくない
朝の光が、魔術塔の最上階にさしこむ。
丸いテーブルの上には、カリカリに焼いた食パン。食パンの上にはハムがありその上にとろとろのチーズがかかっている。そして入れたての珈琲が芳醇な香りが漂っている。
デザートにはヨーグルト。
小さな女の子――リリィは、椅子に座って足をぶらぶらさせながら、ゆっくりとパンにかじりつく。
「……おいしい」
優雅な朝の光景、これこそが私の求めていたこと。ビバ、私の人生。
床の上では使い魔の柴犬がおりこうにすわっている。ふさふさのしっぽが触り心地が良さそうだ。
そのとき、テーブルの端に置いてあった通信石の電話が、ジリリリーと音を立てた。
「……やだなあ」
リリィは見なかったことにして、もう一口パンを口に運ぶ。
通信石は遠慮なく、もう一度鳴った。今度は音量が大きくなった。
「シバ。無視しよ」
柴犬はため息のように鼻を鳴らした。
「出ないと。緊急連絡です」
シバはしゃべれる。しかも真面目である。
「お願い。このご飯食べるまでまって。あとで肉あげるから」
「そんなこと言って、次はお腹いっぱいで眠くなったからとか言って出ないんでしょ」
立派な使い魔である。
くそっ。真面目すぎる、もっとだらけきった使い魔がよかった。なんで出来杉出来すぎ魔が私の使い魔に。もう少し、持ち主に似る努力をしてほしい。
リリィは恨めしそうにシバを見たが、シバは無視し受話器を器用に前足でとった。
「はいはい。でますよー」
通信石に触れると、すぐにくぐもった男の声が流れ出す。筆頭補佐官、通称サブだ。
『筆頭魔術師様。失礼を承知でご連絡を。最近、北方の貿易が滞っておりまして——』
「会議に顔出せ、でしょ」
『……はい』
リリィは顔を盛大にしかめ、深く息を吐いた。
「原因は?」
『山道が使えません。山賊が出ていると』
「ふうん……それで」
『その山賊に、例のお尋ね者が力を貸しているという情報が』
リリィはパンを食べ終えて、ヨーグルトを食べようとしてジャムがかかっていないことに気がついた。
「あれ?ジャムは?」
『貿易が滞ってるので木苺のジャムは品薄で、またハチミツも滞っています』
な,なんだって。我が甘味が。
リリィはすくりとたちあがった。
「わかった。片づける」
『助かります!報告書の方は——』
「あとでまとめるから。説明用もよろしくね」
通信が切れると、リリィはマントを引き寄せた。
「シバ、行くよ」
柴犬は立ち上がり散歩に誘われたみたいに尻尾をぶんぶんとふる。
リリィはマントを引き寄せた。
「シバ、道は一時間もかからないよね」
「はい。通常なら半日ですが」
「じゃあ昼までには戻れるね」
「早く終わらせて、昼のデザートにはいちごジャムのヨーグルト食べるようにしよう」
リリィはにこりと笑った。
短編です。書くの楽しかったので続きかくかもです。




