第10話「3.5インチの悲劇と、カセットテープの儀式」その3
◆
気を取り直して。
ディスクの読み込みに戻る。
『Loading data... 5%』
「遅い…」
カイトが、呟く。
「フロッピーディスクだからな」
おっさん、答える。
「昔はこれが普通だったんだ」
そして、30分後。
『Loading data... 98%』
「やっと98%か」
おっさん、画面を見る。
でも、その時。
カイトが、少し動いた。
「あ」
石版が、ズレた。
『Read error.』
『Disk position changed.』
「ああああああ!」
おっさん、叫ぶ。
「98%だったのに!」
「すみません!」
カイトが、謝る。
「また最初からっすか!?」
『Haiku expression:』
『九十八
されど百には
遠き道』
「遠いけど近いだろ!」
おっさん、ツッコむ。
「あと2%だったんだぞ!」
『Poetic expression:』
『完成の一歩手前
それは最も遠い場所
永遠に届かぬ夢』
「届いてたんだよ!」
おっさん、叫ぶ。
「2%だったんだよ!」
セシリアが、カイトに言う。
「カイト、動かないで」
「はい…」
カイトが、固まる。
再び読み込み。
今度は、誰も動かない。
息も止める。
30分間。
じっと待つ。
そして。
『Loading data... 99%』
「あと1%!」
おっさん、緊張する。
「誰も動くな!」
みんな、固まる。
ウィーン、ウィーン。
読み込み音。
そして。
『Loading complete.』
「やった!」
おっさん、叫ぶ。
扉が開く。
「成功したっす!」
カイトが、喜ぶ。
でも、AI-DOSUが出力する。
『Haiku expression:』
『待つ時間
それが最高の
スパイスなり』
「スパイスじゃねえよ!」
おっさん、ツッコむ。
「ただの苦行だよ!」
『Poetic expression:』
『便利になりすぎた世界では
分からないだろう
『待つ時間』こそが
最高のご褒美なのだと』
「ご褒美じゃねえよ!」
おっさん、叫ぶ。
カイトが、おっさんを見る。
「おっさん、昔は本当にこんな感じだったんすか?」
「……ああ」
おっさん、頷く。
「フロッピーディスクは、こんな感じだった」
「大変っすね…」
「ああ」
おっさん、遠い目をする。
(48歳のおっさん、懐かしいんだよ)
(でも、もう二度とやりたくないんだよ)
◆
扉の先に進む。
さらに奥の部屋。
そこには、巨大な機械があった。
「なんだあれ」
セシリアが、機械を見る。
近づくと。
巨大なカセットテープが置いてある。
「カセットテープ…!」
おっさん、驚く。
機械に、文字が刻まれている。
『最終防壁を解除するには、伝説の修正パッチをロードせよ』
「修正パッチ…?」
おっさん、カセットテープを見る。
(これをロードするのか)
「どうするんすか?」
カイトが、聞く。
「……これを、機械にセットする」
おっさん、カセットテープを手に取る。
重い。
すごく重い。
そして、機械にセットする。
ガチャリ。
カセットテープが、機械に収まる。
AI-DOSUの画面に、表示される。
『Ancient Data Recorder detected.』
『Load cassette tape?』
「ああ」
おっさん、頷く。
「ロードしてくれ」
『Loading...』
その瞬間。
戦場全体に、音が響き渡った。




