第2話「最強の包丁と、ママチャリと、絶望の女騎士」その1
街道を歩いて半日。
おっさんとセシリアは、ギルドへ向かっていた。
セシリアは相変わらず白い肌着姿だ。
(申し訳ない)
(本当に申し訳ない)
(でも、どうしようもないんだよ)
おっさん、心の中で謝り続けている。
分かるよね?
AIが勝手にやったことなんだよ。
でも、責任は俺にあるわけで。
(胃が痛い)
48歳のおっさん、胃痛持ちなんだよ。
前世から。
「ところで、緋川さん」
セシリアが話しかけてくる。
「はい」
「この『Developer_Skin』、確かに性能は申し分ないわね」
「そうですか」
「昨夜、試しに自分で殴ってみたが、全くダメージがなかった」
「自分で殴ったんですか」
(それ、試し方おかしくない?)
でも、セシリアは妙に前向きだった。
「防御力99999、伊達ではないわ」
「そうですね」
(強い)
精神的な意味でね。
おっさん、感心する。
この人、メンタル最強なんじゃないかな。
白い肌着姿で歩いてるのに、堂々としてるもん。
分かる?
普通、恥ずかしくて歩けないよね。
◆
その時だった。
「ギャアアアア!」
前方から、悲鳴が聞こえた。
「!」
おっさんとセシリア、顔を見合わせる。
「行くぞ!」
セシリアが駆け出した。
おっさんも慌てて後を追う。
(この人、本当に騎士なんだな)
肌着姿だけど。
◆
悲鳴の元には、商人の馬車があった。
ゴブリンの群れ(5体)が、馬車を囲んでいる。
商人が震えながら、馬車の後ろに隠れていた。
「助けて…!」
セシリアが剣を抜く。
「心配するな! 騎士が来た!」
(かっこいい)
おっさん、素直に思う。
白い肌着姿だけど。
いや、肌着姿だからこそ、かっこよさが際立つというか。
(違うか)
セシリア、ゴブリンに突撃した。
「せいっ!」
剣を振るう。
ズバッ。
ゴブリン1体が真っ二つになった。
「よし、次!」
セシリア、2体目に斬りかかる。
その時。
ガキィィィン!
嫌な音がした。
セシリアの剣が、ゴブリンの棍棒と激突。
そして。
パキィィィン!
剣が折れた。
「!?」
セシリア、呆然とする。
剣の刃が、根元から真っ二つになっていた。
「嘘…私の剣が…」
(やばい)
(やばいやばいやばい)
おっさん、状況を理解する。
ゴブリンが4体、セシリアに襲いかかる。
「セシリアさん!」
おっさん、叫ぶ。
「AI-DOSU! セシリアさんに武器を! 剣! 普通の剣でいいから!」
『Command received.』
「よし!」
安心したのも束の間。
『Analyzing combat data...』
(嫌な予感がする)
いや、マジで。
このAI、信用できないんだよ。
『User: Cecilia』
『Weapon broken: Sword』
「そう、剣が壊れたんだよ。だから剣を頼む。普通の剣」
『Optimal replacement...』
「だから剣って言ってるだろ! 剣! ソード! ブレード!」
『Kitchen Knife (Santoku)』
「包丁!?」
おっさん、叫ぶ。
「なんで包丁なんだよ! 剣って言っただろ!」
『Kitchen Knifeは刃物の一種です』
「嘘つけ! 全然違うだろ! 包丁と剣は別物だろ!」
『仕様です』
「仕様で片付けるな!」
おっさん、本気で怒る。
(このAI、本当にうざい)
(DOSUの名は伊達じゃない)




