第9話「魔王軍の将軍と、AIの健忘症」その3
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そして、極めつけ。
AI-DOSUが、突然表示する。
『あ、思い出しました』
「今更!?」
おっさん、叫ぶ。
『ガルガド様、魔王軍の将軍ですね』
「やっと思い出したのか!」
ガルガド将軍が、叫ぶ。
『パーティーメンバー:
セシリア、エルネラ、ルミナ、ソフィア、カイト
確認しました』
「今までなんだったんだよ!」
おっさん、叫ぶ。
『短期記憶の読み込みに時間がかかりました』
「読み込みに30分かかるなよ!」
おっさん、ツッコむ。
『Haiku expression:』
『忘れても
思い出せば
問題なし』
「問題ありまくりだろ!」
おっさん、叫ぶ。
「しかも季語ないし!」
『季語は不要です』
「俳句には必要だろ!」
ガルガド将軍が、笑い転げている。
「同志よ! 貴様のシステム、最高だな!」
「最高じゃないんだ…」
おっさん、頭を抱える。
セシリアが、心配そうに声をかける。
「緋川さん、大丈夫?」
「……大丈夫じゃない」
おっさん、正直に答える。
「AI-DOSUが、完全にバグってる」
エルネラが、呆れた顔で言う。
「記憶障害ね」
「ええ」
おっさん、頷く。
「10分前のことを忘れて、30分後に思い出す」
ルミナが、心配そうに言う。
「AI-DOSU、大丈夫でしょうか…」
「大丈夫じゃないと思う」
おっさん、ため息をつく。
ソフィアが、優雅に微笑む。
「まあ、俳句が素敵でしたわ」
「素敵じゃないんだ」
おっさん、ツッコむ。
「季語ないし」
カイトが、笑う。
「でも、面白いっすね」
「面白くないんだ…」
おっさん、疲れた顔で答える。
◆
結局、ガルガド将軍とは、IPアドレスを交換して別れた。
「同志よ、また会おう」
「ああ」
おっさん、頷く。
「今度、一緒に飲もう」
「楽しみにしている」
ガルガド将軍が、去っていく。
セシリアが、呆れた顔で言う。
「敵と友達になってどうするの…」
「……いや、良い奴だったから」
おっさん、答える。
エルネラも、ため息をつく。
「おっさん同士の友情ね…」
「ええ」
おっさん、頷く。
(同世代と話すのは、楽しい)
(48歳のおっさん、癒された)
その時、AI-DOSUが出力した。
『Haiku expression:』
『おっさんは
国を超えて
繋がりぬ』
「今度は季語あるのかよ!」
おっさん、ツッコむ。
「どっちなんだよ!」
『Poetic expression:』
『記憶は消え
俳句は残る
それがシステムの美学』
「美学じゃねえよ!」
おっさん、叫ぶ。
でも、みんな笑ってる。
(良いパーティーだ)
おっさん、思う。
たとえ、AI-DOSUが記憶障害でも。
◆
その夜。
宿で休んでいると。
AI-DOSUの画面が、光った。
『お名前は?』
「また忘れたのか!」
おっさん、叫ぶ。
「俺は緋川健太郎だよ!」
『登録しました。よろしくお願いします、緋川様。』
「何回登録させるんだよ!」
おっさん、ツッコむ。
『Haiku expression:』
『名を忘れ
また聞く我は
何者ぞ』
「哲学的になるな!」
おっさん、叫ぶ。
「しかも季語ないし!」
『仕様です』
「仕様じゃねえよ!」
48歳のおっさん、頭を抱えた。
明日も、こんな日々が続くのだろう。
でも、それでいい。
このカオスなパーティーと、
記憶障害のAIと一緒なら。
(第9話 完)
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次回予告:
クエストで古代遺跡の最深部へ!
そこで見つけた、謎の石版!
カイト「これ、すごいアイテムっすよ!」
カイト「『古代の石版』!」
でも、サイズが合わない!
AI-DOSU『Inserting 3.5-inch floppy disk...』
AI-DOSU『Error: Size mismatch.』
おっさん「3.5インチフロッピーディスクだったのか!」
カイト「フロッピーディスク!? なにそれ!」
しかもスロットがガバガバ!
おっさん「安定しない…」
おっさん「ちょっと触れただけで認識しなくなる…」
『Haiku expression:』
『ディスクは揺れ
データは消える
それもまた良し』
おっさん「良くねえよ!」
そして、30分のロード時間!
『ピーーーー……ガーーーーー……ビョロロロロ……』
カイト「うわぁぁぁ! なんだこの不快な音は!?」
おっさん「……いい音だ」
第10話「3.5インチの悲劇と、カセットテープの儀式」
乞うご期待!




