第9話「魔王軍の将軍と、AIの健忘症」その2
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しばらく話していると。
AI-DOSUの画面に、表示される。
『お名前は?』
「え?」
おっさん、画面を見る。
「今、ガルガド将軍と話してるんだが」
『初めまして。お名前をお聞かせください。』
「さっきから一緒にいるだろ!」
おっさん、ツッコむ。
ガルガド将軍が、画面を見る。
「俺はガルガド。魔王軍の将軍だ」
『登録しました。よろしくお願いします、ガルガド様。』
「よし」
ガルガド将軍が、頷く。
そして、5分後。
『お名前は?』
「さっき言ったぞ!」
ガルガド将軍が、叫ぶ。
「5分前だぞ!」
『申し訳ございません。記録が見つかりません。』
「忘れるの早すぎるだろ!」
おっさん、ツッコむ。
ガルガド将軍が、もう一度言う。
「ガルガドだ」
『登録しました。よろしくお願いします、ガルガド様。』
「またかよ!」
おっさん、叫ぶ。
そして、さらに5分後。
『お名前は?』
「もういい!」
ガルガド将軍が、諦める。
おっさんも、頭を抱える。
「AI-DOSU、なんで忘れるんだよ」
『短期記憶の保存に失敗しました』
「失敗するなよ!」
おっさん、叫ぶ。
『Haiku expression:』
『記憶とは
砂のごとくに
こぼれゆく』
「俳句で誤魔化すな!」
おっさん、ツッコむ。
「しかも季語ないし!」
◆
さらに、AIの記憶バグは悪化した。
「ところで」
おっさん、AI-DOSUに聞く。
「俺のパーティー情報は?」
『データが保管されていません』
「毎日一緒に戦ってるだろ!」
おっさん、絶句する。
「セシリア、エルネラ、ルミナ、ソフィア、カイト!」
「5人いるだろ!」
『新規パーティーとして登録しますか?』
「新規じゃねえよ!」
おっさん、叫ぶ。
「何ヶ月も一緒にいるんだよ!」
『申し訳ございません。会話履歴が見つかりません。』
「会話履歴!?」
おっさん、画面を見る。
「10分前に将軍と話してただろ!」
『10分前のデータは保存されていません』
「10分前だぞ!」
おっさん、叫ぶ。
「さっきまで話してたんだぞ!」
『Haiku expression:』
『十分は
永遠よりも
遠きかな』
「遠くねえよ!」
おっさん、ツッコむ。
「10分前だよ!」
ガルガド将軍が、笑う。
「同志よ、貴様のシステム、本当に面白いな」
「面白くないんだ…」
おっさん、疲れた顔で言う。
(48歳のおっさん、もう限界なんだよ)
そして、AI-DOSUが、さらに出力する。
『Analyzing conversation...』
『Topic: MS-DOS』
『Participants: 不明』
「参加者不明!?」
おっさん、絶句する。
「俺と将軍だろ!」
「さっき登録しただろ!」
『登録記録が見つかりません』
「3分前だぞ!」
おっさん、叫ぶ。
ガルガド将軍が、ため息をつく。
「同志よ、このシステム…大丈夫か?」
「……大丈夫じゃない」
おっさん、正直に答える。
「毎日こんな感じなんだ」
「大変だな…」
ガルガド将軍が、おっさんの肩を叩く。
「同志よ、貴様は強い」
「強くないんだ…」
おっさん、泣きそうになる。




