第1話「出会いは全裸(モザイク)から」その3
◆
シュインッ。
セシリアの体が光に包まれる。
光が収まると、そこにあったのは。
「……これ、どう見ても『白い肌着』よね?」
セシリアが、顔を赤くしながら言う。
確かに、白い肌着だった。
薄い。
透けそう。
でも、なぜか高級感がある。
素材が良いのか、シルクみたいに滑らかそうだ。
(あかん)
「ふざけないで!」
セシリアが、顔を真っ赤にして怒鳴る。
「こんな恥ずかしい格好で戦えるわけないでしょ!」
「すみません!」
(怒らせた)
(完全に怒らせた)
おっさん、慌ててAI-DOSUの画面を確認する。
『Developer_Skin_v1.0』
『防御力:99999』
『重量:50g』
『全属性無効・自動回復付き』
「……」
おっさん、ため息をつく。
「AI-DOSU」
『Yes?』
「なんで防御力99999なんだよ」
『最適化しました』
「肌着に防御力99999は最適化じゃないだろ」
『軽量で高防御は最適です』
「そういう問題じゃねえよ!」
『仕様です』
「仕様じゃねえよ!」
おっさん、叫ぶ。
(やれやれ)
でも、セシリアに見せないわけにはいかない。
「……セシリアさん」
「何よ」
セシリアの声が、ツンとしてる。
(そりゃそうだよね)
おっさん、画面を見せる。
セシリアの目が見開かれた。
「防御力…99999?」
「はい」
「私のミスリル鎧は、250だったわ」
「それの400倍ですね」
「……」
「……」
セシリア、複雑な表情になる。
「つまり、この…『Developer_Skin』とやらは、私の鎧より遥かに強いと?」
「そういうことになりますね」
「…名前からして開発者用のデバッグアイテムっぽいけど」
「おっしゃる通りです」
(この人、理解が早い)
セシリアが、自分の体を見下ろす。
白い肌着。
薄い生地。
透けそうな質感。
でも、防御力99999。
「…着るしかないのね、これ」
「申し訳ありません」
おっさん、土下座する勢いで謝る。
分かるよね?
これ、完全におっさんの責任なんだよ。
「着てください、セシリアさん。それを着ないと死にます。数値を見てください、防御力99999です」
セシリア、苦悩の表情。
「くっ……」
「別に…」
セシリアが、小さく呟く。
「別に、貴方のために着るわけじゃないわよ」
「え?」
「これは…私自身の生存のため。それだけよ」
セシリアが、ツンとした顔で言う。
「だから、勘違いしないで」
「はい」
(ツンデレ?)
おっさん、思う。
「ただし」
セシリアが、おっさんの目を見る。
「責任は取ってもらうわよ」
「責任?」
「こんな恥ずかしい格好にしたのは貴方のシステムでしょう。貴方が責任を取るのは当然よ」
「いや、俺も被害者なんですけど…」
「知らないわ」
セシリア、きっぱり言い切った。
(強い)
「私を元に戻す方法を見つけるまで、貴方が私の面倒を見なさい」
「…はい」
おっさん、観念した。
(やれやれ)
こうして、おっさんは白い肌着姿の女騎士を引き連れることになった。
まさか、これが伝説のパーティーの始まりになるとは。
この時は思ってもいなかったんだよ。
◆
その日の夜。
宿の部屋で、おっさんは一人で反省会をしていた。
「やばいな」
本当にやばい。
AI-DOSUが暴走する。
ヒロインの装備を勝手に改造する。
しかも、結果的には最強になってしまう。
「これ、今後もこんな感じなのか?」
不安になる。
『ご心配なく。最適化は順調です』
「全然心配だよ!」
おっさん、画面に向かって叫ぶ。
「っていうか、お前の最適化、おかしいだろ!」
『効率的です』
「効率的じゃねえよ! セシリアさん、肌着姿だぞ!」
『防御力99999です』
「性能の問題じゃねえよ! 見た目の問題だよ!」
『仕様です』
「仕様で片付けるな!」
おっさん、頭を抱える。
(このAI、本当にうざい)
でも、これしか頼れるものがない。
おっさん、深いため息をついた。
隣の部屋から、セシリアの気配がする。
白い肌着姿で寝ているのだろうか。
(いや、考えるな)
(変態と思われる)
おっさん、頭を振って雑念を払う。
「明日から、どうなることやら」
不安を抱えたまま、眠りについた。
こうして、おっさんとAI-DOSUの珍道中が始まった。
果たして、おっさんは無事に生き延びることができるのか。
それは、また次の話である。
(第1話 完)
---
次回予告:
セシリアの剣が壊れた!?
AI-DOSUが生成したのは…『三徳包丁』!?
「騎士に料理をしろと言うのか!?」
主人公「AI-DOSU! 剣って言っただろ!」
AI-DOSU『Kitchen Knifeは刃物の一種です』
主人公「嘘つけ!」
でも、ドラゴンを一刀両断。
第2話「最強の包丁と、ママチャリと、絶望の女騎士」
乞うご期待!




