第6話「王女の胸と、ズレた常識」その3
『System calibration in progress.』
「キャリブレーション!?」
「今!?」
『現在、学習中です』
「学習するな! 今すぐ直せ!」
胸が、おっさんに向かって飛んでくる。
「うわああああ!」
おっさん、逃げる。
ドゴォォォン!
おっさんの横の木が吹き飛ぶ。
(危ない!)
(マジで危ない!)
セシリアも、胸に追いかけられる。
「きゃああああ!」
三徳包丁で防ぐ。
キィィィン!
弾き飛ばされる。
エルネラも、逃げる。
「冷静に対処できないわ!」
「どかーん♡」
魔法で迎撃。
でも、胸は無傷。
「防御力80000ですわ」
ソフィアが、優雅に言う。
「攻撃は効きませんわよ」
「それどころじゃないです!」
ルミナが、叫ぶ。
ルミナも、胸に追いかけられる。
「きゃああああ!」
白ビキニ風の聖女が、森を駆け回る。
(カオスだ)
おっさん、思う。
「AI-DOSU! 止めろ!」
おっさん、画面に向かって叫ぶ。
『Calibration complete.』
「やっと!」
胸が、ピタリと止まる。
そして、ソフィアの元に戻る。
「あら、戻りましたわ」
ソフィアが、優雅に微笑む。
みんな、疲れ果てている。
セシリア、息を切らしている。
エルネラ、冷や汗を流している。
ルミナ、座り込んでいる。
おっさんも、疲れた。
(もうやだ)
「AI-DOSU、なんでこんなことになるんだよ」
『将来のアップデートで対応予定(検討中)です』
「検討中って! いつだよ!」
『Poetic expression activated:』
『調整の時は必要なり
完璧への道は長く険し
されど その先に待つは
真なる力の輝き』
「ポエムいらねえよ!」
おっさん、叫ぶ。
「しかも内容がクソポエムだよ!」
ソフィアが、疲れているみんなを見る。
「皆様、大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないです…」
ルミナが、答える。
「そうですか」
ソフィアが、少し考える。
そして、おっさんを見る。
「緋川様」
「はい?」
「この機能、緋川様も操作してみませんか?」
「ええ!?」
おっさん、驚く。
「いや、それは…」
「新しい機能は、共有すべきですわ」
ソフィアが、優雅に微笑む。
「緋川様なら、もっと上手に操作できるかもしれませんわ」
「いや、でも…」
(どうすればいいんだ!?)
(触っていいのか!?)
(いや、ダメだろ!)
(でも姫が勧めてるし!)
(胃が痛い)
セシリアが、叫ぶ。
「姫! 何を言ってるんですか!」
「それは…その…!」
セシリアが、顔を真っ赤にする。
エルネラも、呆れた顔で言う。
「...この人、本気で分かってないわ」
「性的な意味、一切理解してないわね」
ルミナも、真っ赤な顔で言う。
「姫…それは…ダメです…」
「まあ、なぜですの?」
ソフィアが、首を傾げる。
「便利な機能は、みんなで共有すべきではありませんの?」
(完全に天然だ)
おっさん、確信する。
この人、本当に分かってない。
「AI-DOSU!」
おっさん、画面に向かって叫ぶ。
「元に戻せ! 今すぐ戻せ!」
『その要求は、現在の規約に抵触するため回答を差し控えます』
「規約って何だよ!」
『Poetic expression activated:』
『一度解き放たれし力は
元には戻らず
されど新たな道を示す
それが運命』
「運命じゃねえよ!」
「ポエムで誤魔化すな!」
おっさん、叫ぶ。
ソフィアが、優雅に微笑む。
「まあ、元には戻らないのですわね」
「はい…」
おっさん、申し訳なく答える。
「そうですか」
ソフィアが、少し考える。
「では、この機能と共に生きていきますわ」
「え?」
「便利な機能ですもの」
ソフィアが、優雅に言う。
「活用させていただきますわ」
(この人、前向きすぎる)
「姫…」
セシリアが、複雑な顔をする。
「大丈夫ですか?」
「ええ」
ソフィアが、微笑む。
「それに、緋川様たちも同じような被害に遭っているのでしょう?」
「…はい」
「ならば、私も仲間ですわね」
ソフィアが、優雅に言う。
「よろしくお願いしますわ」
セシリア、エルネラ、ルミナが、顔を見合わせる。
そして、微笑む。
「ええ、よろしくお願いします」
おっさんも、嬉しかった。
(良いパーティーだ)
でも、AI-DOSUが画面に表示する。
『Optimization success rate: 100%』
『User satisfaction: High』
「満足してねえよ!」
おっさん、叫ぶ。
『不具合ではなく、個性です』
「個性じゃねえよ! バグだよ!」
『仕様です』
「デファクトスタンダードじゃねえよ!」
おっさん、頭を抱えた。
48歳のおっさん、胃痛が本当に限界なんだよ。




