第1話「出会いは全裸(モザイク)から」その2
で、現在。
白い肌着姿の女騎士と、気まずく対峙している。
「説明してもらおうか」
女騎士が、低い声で言った。
(怖い)
(マジで怖い)
おっさん、冷や汗を流しながら説明する。
「えっと、その…俺、異世界から来た、緋川健太郎と申します」
「異世界…?」
「はい。それで、さっきのは本当に事故で…」
「事故で女性の鎧を剥ぎ取る?」
(そう言われると、完全に犯罪者だな)
おっさん、必死に弁解する。
分かるよね?
スライムが襲ってきた。
助けようとした。
AI-DOSUに「スライムを消去しろ」と命令した。
そしたら、スライムと鎧のデータが混ざってるとか言い出して。
鎧を削除した。
「本当に、意図的な脱衣じゃないんです! コマンドプロンプトの記述ミスです!」
(いや、コマンドプロンプトとか言っても通じないか)
『Warning: Slime acid has merged with Armor data.』
『Deleting Armor to ensure safety.』
AI-DOSUの画面に、そう表示される。
女騎士が、画面を見て目を細めた。
「これが…AI-DOSU?」
「はい」
「システムとしては、正しい判断のように見えるが」
「え?」
(この人、理解が早い)
「スライムの酸が鎧のデータと混ざっていた。だから安全のために削除した。論理的には正しい」
「でも結果的に…」
「私は全裸になった」
「…はい」
沈黙。
(あかん、胃が痛い)
女騎士が、ため息をついた。
「まあ、いい。貴方に悪意がなかったことは分かった」
「本当ですか!」
(助かった)
「ただし」
女騎士が、俺の目を見る。
「見たな? 私のあられもない姿を」
「いや、俺は見てません」
おっさん、反射的に嘘をつく。
分かるよね?
こういう時は否定するしかないんだよ。
「解像度が低すぎてワイヤーフレームにしか見えなかったので」
(嘘だけど)
『Playback recorded in 4K resolution.』
『Saving to folder "Hidden".』
「余計なことすんな! フォルダ消せ!」
おっさん、絶叫する。
「AI-DOSU! 消せ! 今すぐ消せ!」
『削除権限がありません』
「俺のAIだろ!?」
『仕様です』
「仕様じゃねえよ!」
(このAI、本当にうざい)
女騎士が、冷たい目で見ている。
「…ふん」
「え?」
「貴方のせいで、私はこんな目に遭ったのよ」
「すみません…」
(怒ってる)
(当たり前だけど)
◆
とりあえず、街に向かうことになった。
女騎士の名前は、セシリア・フォン・ブライト。
王国騎士団の小隊長らしい。
「それで…鎧がないと困りますよね」
おっさん、恐る恐る話しかける。
「当然でしょう」
セシリアが、ツンと言う。
「私は騎士なのよ。武装なしで街には行けないわ」
「ですよね」
(怒ってるな)
(でも、仕方ない)
「AI-DOSU、セシリアさんに鎧を生成してくれ」
おっさん、画面に向かって言う。
「普通の鎧でいいから。頼む」
『Command received.』
「よし」
安心したのも束の間。
『Generating optimal armor.』
(嫌な予感)
このパターン、もう分かるよね。
「AI-DOSU」
『Yes?』
「最適化とか、しなくていいから」
『最適化は必須です』
「必須じゃねえよ! 普通の鎧を普通に出せよ!」
『仕様です』
「また仕様か!」
おっさん、叫ぶ。
『Developer_Skin_v1.0 (High Defense, Lightweight)』
「は?」
(何それ)




