第4話「エルフの魔法少女化と、プライドの崩壊」その4
◆
帰り道。
エルネラは、ピンクの魔法少女コスチュームのまま歩いていた。
脱げない。
試したが、カースド装備化していて、脱げなかった。
「…恥ずかしい」
エルネラが、小さく呟く。
街の人々が、振り返って見る。
「あれ、魔法少女?」
「可愛い!」
「エルフの魔法少女だ!」
「しかも小さい!」
「150cmくらい?」
「ちっちゃくて可愛い!」
エルネラの顔が、真っ赤になる。
「もう嫌…」
(申し訳ない)
おっさん、胃が痛い。
セシリアが、エルネラの肩を叩く。
(というか、セシリアが少し屈んで肩を叩く)
(身長差18cmだもんな)
「大丈夫。私も同じ目に遭ったわ」
「セシリアさん…」
「最初は恥ずかしいけど、慣れるわよ」
「慣れたくない…」
「でも、性能は良いでしょ?」
「…それは、そうですけど」
エルネラが、マジカルステッキを見る。
「魔力増幅率1000%、魔法少女コスチュームの魔力増幅率500%」
「合計1500%ね」
「私の元の装備の5倍…」
「すごいわね」
「…でも、恥ずかしい」
二人、ため息をつく。
おっさん、二人の後ろを歩きながら思う。
(この二人、強い)
精神的な意味で。
分かるよね?
白い肌着姿で三徳包丁を持つ女騎士。
ピンクの魔法少女コスチュームを着たエルフ。
どっちも、普通なら耐えられないでしょ。
でも、二人とも歩いてる。
(強い)
◆
ギルドに到着。
依頼完了の報告をする。
受付嬢レベッカが、エルネラを見て目を丸くした。
「あの…エルネラ様?」
「…はい」
エルネラが、恥ずかしそうに答える。
「その格好…」
「システムのバグです」
「そうですか…」
レベッカが、同情的な目で見る。
(この人も被害者だもんな)
おっさん、思い出す。
レベッカのスリーサイズが公開された事件。
「報酬です」
レベッカが、銀貨50枚を渡す。
「ありがとうございます」
おっさん、受け取る。
その時だった。
『New party member registered.』
『Uploading detailed member data...』
「は?」
おっさん、画面を見る。
「AI-DOSU、まさか…」
『Guild database integration complete.』
「やめろ!」
おっさん、叫ぶ。
でも、遅かった。
ギルドの掲示板に、文字が浮かび上がる。
『Party Member Details:
Elnera Sylpheed
Age: 120 years old (Appearance: Mid-20s)
Height: 150cm
Measurements: B78/W54/H80
Weight: 43kg
Relationship Status: Single
Romance Experience: 0
Secret: Watches magical girl anime every night (for research purposes)
Favorite Food: Honey Cake
Appeal: Petite but mature beauty, intellectual charm』
「きゃああああ!」
エルネラが叫ぶ。
「なんで私のデータが!?」
ギルド中の冒険者が、掲示板を見て騒ぎ出す。
「120歳!?」
「見た目15-16歳!?」
「身長150cm!」
「B78!ちっぱい!」
「恋愛経験ゼロ!?」
「魔法少女アニメ見てる!?」
「研究目的って書いてあるけど…」
「身長と胸がコンプレックス!」
エルネラの顔が、真っ赤を通り越して真っ白になる。
「違います!」
エルネラが、必死に否定する。
「魔法少女アニメは研究です! 研究!」
「身長は…150cmは…エルフとしては普通です!」
(全部図星じゃん)
おっさん、冷や汗を流す。
冒険者たちが、さらに騒ぐ。
「120歳!?」
「見た目20代半ば!?」
「小柄なのに大人っぽい!」
「150cmでB78…これは奇跡のバランス!」
「恋愛経験ゼロ!?」
「魔法少女コス似合いすぎ!」
「研究で見てたから、今の格好になったのか!」
「趣味と実益が一致してるじゃん!」
「違います!」
エルネラが、涙目で叫ぶ。
「これは…AI-DOSUのせいで…!」
「AI-DOSU、データを消してください!」
エルネラが、画面に向かって訴える。
『お客様の体感(主観)には個人差があります』
「主観じゃないわ! 客観的に見ても恥ずかしいでしょ!」
『ユーザーの理解力が不足しています』
「理解力!?」
エルネラが、絶句する。
(このAI、マジでうざい)
おっさん、心の中で思う。
「AI-DOSU! 消せ!」
『その要求は、現在の規約に抵触するため回答を差し控えます』
「規約って何だよ!」
『仕様です』
「デファクトスタンダードじゃねえよ!」
(申し訳ない)
(本当に申し訳ない)
おっさん、AI-DOSUの画面に向かって叫ぶ。
「AI-DOSU! 消せ! 今すぐ消せ!」
『Guild transparency is important.』
「透明性ねえよ!」
『仕様です』
「仕様じゃねえよ!」
(やれやれ)
エルネラが、受付の後ろに隠れる。
レベッカが、疲れた顔で肩を叩く。
「お疲れ様です(棒読み)」
「レベッカさん…」
「私もデータ公開されましたよ(棒読み)」
「…そうだったわね」
「ええ。ご立派なシステムですね(皮肉)」
(この人、毒舌だ)
おっさん、冷や汗を流す。
二人、被害者同士で慰め合う。
(申し訳ない)
おっさん、胃が痛い。
48歳のおっさん、胃痛が本当に限界なんだよ。




