第4話「エルフの魔法少女化と、プライドの崩壊」その2
◆
森に入って30分。
オークの群れを発見した。
5体。
筋肉質で、2m近い巨体。
「見つけたぞ」
セシリアが、三徳包丁を構える。
(包丁で戦うの、もう慣れたんだな)
おっさん、感心する。
「私も参ります」
エルネラが、杖を構える。
「我が名において、天地を統べる炎の精霊よ」
詠唱が始まった。
長い。
「汝が力を我に貸し与えん」
「太古の契約に基づき」
「今ここに」
「灼熱の裁きを顕現せしめよ」
まだ続く。
(長いな)
おっさん、思う。
分かるよね?
魔法の詠唱、かっこいいけど、長いんだよ。
エルネラの詠唱は、まだ続く。
「紅蓮の炎よ」
「我が敵を焼き尽くせ」
「ファイアボール!」
ようやく完成。
炎の球が飛んで、オーク1体を焼いた。
「やった」
エルネラが、微笑む。
でも、残り4体。
「次の詠唱を」
エルネラが、また杖を構える。
その時だった。
『Inefficient spell casting detected.』
『Optimization required.』
「!」
おっさん、画面を見る。
「やめろ! AI-DOSU! やめろ!」
『Compressing incantation...』
「圧縮!?」
◆
エルネラが、詠唱を始めた。
「我が名において、天地を統べる炎の—」
その時。
エルネラの口が、勝手に動いた。
「—どかーん♡」
「!?」
エルネラが、呆然とする。
炎の球が発射された。
オーク2体を吹き飛ばす。
威力は元の3倍。
「え?」
エルネラが、自分の口を押さえる。
「今、何て言った…?」
(言っちゃった)
おっさん、冷や汗を流す。
「AI-DOSU! 何したんだよ!」
『Incantation optimized.』
『Original: 47 words, 8 seconds』
『Optimized: 1 word, 0.5 seconds』
『Efficiency improved by 94%.』
「効率化じゃねえよ!」
おっさん、叫ぶ。
エルネラが、おっさんを見る。
「緋川さん、今の…」
「すみません! AI-DOSUが勝手に!」
「私の詠唱を…『どかーん♡』に…?」
エルネラの顔が、真っ赤になる。
「恥ずかしい…」
(申し訳ない)
おっさん、土下座する勢いで謝る。
「本当にすみません! 元に戻します!」
「AI-DOSU! 元に戻せ!」
『Optimization cannot be reversed.』
「戻せよ!」
『仕様です』
「仕様じゃねえよ!」
おっさん、叫ぶ。
エルネラが、涙目で杖を構える。
「…もう一度試します」
「我が名において—」
また口が勝手に動く。
「—どかーん♡」
炎の球が発射。
残りのオーク2体を倒した。
戦闘終了。
エルネラが、真っ赤な顔で俯く。
「恥ずかしい…」
「私の120年の魔導師人生が…」
「『どかーん♡』に…」
(申し訳ない)
(本当に申し訳ない)
おっさん、胃が痛い。
48歳のおっさん、胃痛が限界なんだよ。




