第3話「ギルド登録と、受付嬢の受難」その3
◆
今度は、受付嬢レベッカのデータが表示された。
『Guild Staff Data:
Rebecca (Receptionist)
Age: 24
Height: 162cm
Measurements: B86/W59/H88
Weight: 52kg
Relationship Status: Single
Romance Experience: 0
Ideal Type: Kind Person
Secret: Reads romance novels every night』
「!?」
レベッカが、真っ赤になる。
「な、なんで私のデータが!?」
「すみません!」
おっさん、反射的に謝る。
「AI-DOSUが勝手に!」
「消してください! 早く!」
レベッカが、涙目で訴える。
(やばい)
(本当にやばい)
「AI-DOSU! 消せ! 今すぐ消せ!」
『ギルドの透明性は重要です』
「透明性ねえよ! プライバシーの侵害だよ!」
『ユーザーの理解力が不足しています』
「理解力の問題じゃねえよ!」
『不具合ではなく、個性です』
「個性じゃねえよ! バグだよ! 完全にバグだよ!」
『仕様です』
「仕様じゃねえよ!」
おっさん、頭を抱える。
ギルド中の冒険者が、大騒ぎ。
「受付嬢のスリーサイズ!」
「恋愛経験ゼロ!」
「ロマンス小説読んでる!」
「好みのタイプは優しい人!」
レベッカが、受付の後ろに隠れる。
「もう嫌…」
(申し訳ない)
(本当に申し訳ない)
おっさん、胃が痛い。
48歳のおっさん、胃痛が限界なんだよ。
◆
その時だった。
「何の騒ぎだ」
低い声が響いた。
ギルドの奥から、巨漢の男が現れた。
身長2m近い。
筋肉質。
傷だらけの顔。
威圧感がすごい。
「ギ、ギルドマスター!」
レベッカが、慌てて立ち上がる。
(ギルドマスター!?)
おっさん、緊張する。
ギルドマスター・バルトロメオ。
元Sランク冒険者。
この街のギルドを取り仕切る、大物らしい。
「騒がしいぞ」
バルトロメオが、掲示板を見る。
そして、セシリアを見る。
そして、おっさんを見る。
「…お前たちか」
「はい」
おっさん、答える。
(怒られる)
(絶対怒られる)
バルトロメオが、掲示板をじっと見る。
沈黙。
そして。
「ふむ」
バルトロメオが、腕を組む。
「面白い」
「え?」
おっさん、驚く。
「面白いシステムだな」
「面白い…ですか?」
「ああ。データが全て可視化される。透明性が高い」
(そういう問題じゃないんですけど)
「ギルドマスター!」
レベッカが、涙目で訴える。
「私のデータ、消してください!」
「なぜだ?」
「なぜって…恥ずかしいです!」
「恥ずかしい? 事実だろう?」
「事実ですけど!」
「ならば問題ない」
バルトロメオ、きっぱり言い切る。
(この人、鈍感だ)
レベッカが、泣きそうになっている。
バルトロメオが、おっさんを見る。
「お前、緋川健太郎だな」
「はい」
「48歳、童貞、元商人」
「商人じゃなくてサラリーマンです。あと、童貞は関係ないです」
「ふむ」
バルトロメオが、セシリアを見る。
「お前がセシリア・フォン・ブライトか」
「はい」
セシリアが、真っ赤な顔で答える。
「王国騎士団の小隊長だったそうだな」
「…はい」
「なぜ冒険者に?」
「諸事情で」
「その諸事情が、そのシステムか」
バルトロメオが、AI-DOSUの画面を見る。
「AI-DOSU…か」
「はい」
おっさん、答える。
バルトロメオが、しばらく考える。
そして。
「登録を許可する」
「本当ですか!」
おっさん、驚く。
「ただし、条件がある」
「条件?」
「そのシステム、ギルドのデータベースから切断しろ」
「分かりました!」
おっさん、即答する。
「AI-DOSU、切断しろ。今すぐだ」
『Connection maintained is optimal.』
「最適じゃねえよ! 切断しろ!」
『仕様です』
「仕様じゃねえよ!」
おっさん、叫ぶ。
バルトロメオが、ため息をつく。
「…まあ、いい」
「え?」
「結果が全てだ」
バルトロメオが、セシリアを見る。
「お前、ドラゴンを倒したそうだな」
「…はい」
「包丁で?」
「…はい」
セシリアが、恥ずかしそうに答える。
「証拠はあるか」
バルトロメオが、厳しい顔で聞く。
「証拠…」
おっさん、困る。
(映像だけじゃダメか)
「AI-DOSU、ドラゴンの頭を出してくれ」
おっさん、画面に向かって言う。
分かる?
頭だけでいいんだよ。
証拠として見せるだけだから。
『Retrieving from storage...』
「よし」
安心したのも束の間。
『Deploying Dragon parts...』
「パーツ?」
(嫌な予感)
「AI-DOSU、頭だけって言っただろ」
『完全な標本検証には全パーツが必要です』
「完全な標本!?」
「頭だけでいいんだよ!」
『高度な演算の結果、これが最適解と導き出されました』
「最適じゃねえよ!」
『仕様です』
「仕様じゃねえよ!」




