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プリンセス☆ボーイ  作者: 川口大介
第五章 プリンセスなボーイは伝説の戦士!
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「僕がこうして出て来る時、すれ違いざま感じました。シンクリさんは何だかんだいって僕を信じ、僕に託してくれた。だから、僕だけのものじゃない。これは二人の体、二人の力です」

 と語るクリーティアの顔が、何だか紅潮している。口調も熱っぽい。

「僕と、シンクリさんとが一つになって得たこの力。そう、今の僕はクリーティアでもシンクリでもない。スーパークリーティア、略してスパクリっ!」

 びっ、と無敵ロッドを構えつつクリーティア、自称スパクリが言う。

 クリートが、ぽつりと呟いた。

「一つになった、つーか混じってるみたいだなどうやら。どうだヘルプ機能」

《精神スキャンをやり直しまぁす……あっ、微かに異物も残ってますね。けど肉体のコントロールはもう渡しません。一度こうなった以上、もうワタシが抑えていられまぁす》

「おぉ、本当か! じゃあクリーティアはもうずっと、このままで」

 とクリートが事態を弁えず狂喜したと同時に、轟音と共に光の破片が辺りに舞い散った。

 その向こうに、息を切らして憤怒の形相を浮かべているバイオスがいる。

「はあっ、はあっ、ま、待たせたな……今すぐ、全員切り刻んで叩き壊して磨り潰して……」

「そうはさせませんっ!」

 バイオスの前に、黄金の武装天使となった美少女クリーティア(自称スパクリ)が進み出た。

「仰る通り、お待たせしましたね。けど、これで終わりです。あなたは今すぐ僕が倒します」

「ほざくな! まず、その口から引き裂いてくれる!」

 クリーティアの言葉に激昂したバイオスが、魔力吸収で硬質化した爪を振り上げて襲いかかってきた。怒りが筋力を後押しし、バイオスにとって限界速度といえる踏み込みを実現させる。もはやクリートやエイユンの瞳には、バイオスの移動する姿は映らなかった。

 が、その一撃をクリーティアは完全に見切り、かわしながら、無敵ロッドを水平に振ってバイオスの胸に叩き込んだ。

 完全なカウンターとなったその一撃を、力任せにクリーティアは振り抜く。たまらずバイオスは、真後ろに吹っ飛んだ。

「がは……っ? バ、バカな!」

 何とか空中で体勢を整えて着地、したと思ったらそこにもうクリーティアが来ており、無敵ロッドで地を掃くような足払い。バイオスは見事に転倒した。

 背中から着地してしまったバイオスに、すかさず無敵ロッドが上から振り下ろされる。切断してやる! とバイオスは立ち上がりざま爪を突き出したが、火花が散ってそれまで。爪の先端とロッドがぶつかったままピタリと止まっている。

「何っ? な、なぜ切れない?」

《はぁい! 全機能開放により、ワタシの硬度も上昇したからでぇす! アナタの爪や歯も硬そうですけど、今のワタシとなら互角! そして……》

「えいっ!」

 クリーティアが無敵ロッドを回転させ、バイオスの力を流しつつバイオスの腹に一撃! 強烈に打ち込んだ。

「ぐふおぅっ!」

《ま、普通の人間でも、自分の骨と同じ硬さの棍棒で殴られたら、そりゃ痛いでぇす》

 バイオスは地面を転がってクリーティアから距離を取り、再び立ち上がった。その額には、じわりと脂汗が浮かんでいる。

 クリーティアは無敵ロッドをピタリと構えて、言い放った。

「勝負ありです。今までのことを謝罪し、皆と仲良く暮らすというのであれば、僕はもうこれ以上、あなたを攻撃しません」

 その、凛々しく優しく強く美しい姿と声に、クリーティアの後ろでは大騒ぎ。

「み、見たか聞いたかクリート。クリーティアの、眩いばかりの雄姿を」

「あぁ。さすが俺の創ったクローン。さすが俺の女神」

「ぐっ。め、女神か」

「尼さん、しっかりするにゃ。まだ元に戻らないと決まったわけじゃないにゃ」

「……ああ。そうだな」

「ねーちゃん、頷かないで欲しいんだけど。仮に何らかの障害があろうとも、俺はクリーティアの現状維持の為なら命を懸ける覚悟がある」

「あ、あの、皆さん。何だかまた、ちょっと危険っぽい感じになってますよっ」

 とナデモが言ったので、一堂がバイオスの方を見る。

 まだクリーティアに打たれた腹が痛むようだが、しかし不敵な笑みを浮かべつつある。

「……お前は、【大戦争当時にネオ・ヒューマンを倒したクローン】とやらを完全に再現したようだな。私は倒された側、ネオ・ヒューマンそのもの。となれば、どちらが強いかは明白」

「では、降伏して下さい」

「慌てるな。私の方はまだ、大戦争を再現しきっていない。そして更に、それ以上もあるとしたらどうだ?」

 バイオスが、額のバンダナに手をかけた。

 クリーティアは油断なく構えたまま訊ねる。

「どういう意味です」

「ゾレクタンが言っていただろう? ネオ・ヒューマンを再現し服従機能を植えつけたと。その機能のキーが、このバンダナでな。これを取れば、私は理性を失って暴走する。無論、ゾレクタンの存命時には外すことを禁じられていたが、今なら私自身の意思で外せるのだ」

 一拍おいて、バイオスがバンダナを握り締めながら言う。

「今、話しているこの私は消えてなくなり、ただ人類を絶滅させる為だけに荒れ狂う存在となるだろう。こうしているだけでも……感じるぞ。このバンダナの下の、魔獣の存在をな」

「理性を失って荒れ狂えば強くなる、と?」

《ナンセンスでぇす! 厳しい訓練を積んだ軍人より街のケンカ屋の方が強いとか、非現実的でぇす!》

 バイオスが、くくっと笑った。

「これもゾレクタンが言っていたことだが、私の体には大戦争以後に開発された、大戦争当時より強力な新素材も混じっている。それとネオ・ヒューマンの能力が合わさり、暴走するとどうなるか……」

 その言葉に、反応したのはクリートだった。

「焼き貫くレーザーっ!」

 クリートが右掌をバイオスに向けて、灼熱の紅い光が撃ち放った。するとバイオスも右掌を広げ、その光に向ける。バイオスの掌に口が開き、迫る熱閃を吸収しようとする。

 が、文字通り光よりも速くクリーティアが踏み込み、無敵ロッドをその口に突き込んだ。そのまま思いっきりロッドを振り抜いて、バイオスの手に開いた口を裂き潰す。

 バイオスはすかさず左手を上げた。その掌にも口が出現する。クリーティアはもう一度無敵ロッドを突き込もうとした。しかし、

「っ?」

 クリートのレーザーはバイオスの額に吸い込まれて消えた。いつの間にやらバンダナが毟り取られており、額に口が開いているのだ。

 いや、額だけではない。頬にも、手の甲にも。

「クククク……今こそ見せてやる! 地上最強、いや、大戦争時のネオ・ヒューマンを越えた、史上最強の存在を!」

とバイオスが叫んだのと同時に、バイオスに向かって強い突風……違う、バイオスが吸い込んでいるのだ。

 その吸い込みのせいであろうか、バイオスの体がどんどん肥大化していく。武闘着が弾け飛び、中から現れた異様なまでの筋肉は傷だらけ……いや口だらけ。首、胸、腹、肩、腕、脇、体中を埋め尽くすように口が並び、開いて吸い込んでいる。

あの口が吸い込むものは魔力。掌だけの時とは比べものにならないこの吸引力は……と思い至ってクリーティアが振り向くと、

「……なるほど、確かに。こりゃ大戦争当時には無理だっただろうな」


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